第68話「海②」
弾けていた――そう、さっきまで、わたし――しおりんは、弾けていたはずだった。でも今は、手も震えて緊張でいっぱい――――。
何故なら――ゆはりん――彼女がわたしの腕を枕にして眠っているのだ。
う――腕がしびれる……でも……はあ……いい匂い。
でも、腕がしびれる……はあ……いい匂い。
ちっちゃいけれど、りっぱなお胸と、丸みを帯びてふくよかなお尻がわたしに引っついて来る。もう理性が吹き飛びそう……
困った――どうしよう。
たすけて、かおりん。
*
夕方、ビーチでアイスを舐めながら夕陽を眺めていたら、ひかりんがドヤ顔で一言。
「今日は宿取ってあるからね!」
さすがお金持ち(?)のひかりん。よっしゃ、座道部の「弾けろ!」精神で、夜もキラキラいくぞ! わたし、かおりん、ひかりん、奈々りん、ゆはりんと一緒に海辺の宿にチェックインすることになった。
*
宿の女将さんに案内されて、わたしたち5人は二階の和室へ。砂と汗でベタベタの体、でも木の香りがする廊下を歩きながら、なんかいい感じだ。
部屋につき、スーッと障子を開けると、畳の匂いがふわっと広がる。広々した部屋には、窓からオレンジの夕陽が差し込んで、海がキラキラ光ってるのが見える。畳の上に座布団が並び、壁には波の絵が描かれた掛け軸がある。
……なんか、座道部の本拠地みたい!
仲居さんが、入室を薦めると、かおりんが一番乗りで部屋に飛び込み、バッグをドサッと置く。
「うわ、落ち着く!」
「窓からの景色、いいね」
「わ、畳ふかふか!」
ゆはりんはちっちゃい体で畳の上にゴロン、ピンクのTシャツがふわっと広がって可愛い。
「ここ、キラキラの基地ね!」
ひかりんはカバーアップを脱ぎ、白いビキニがチラリ。…ひかりん、色気出すの早すぎ! わたしは、畳に寝そべりながら「かおりん、座道部として部屋の極意は?」とニヤリとすると、かおりんは「正しい姿勢で…くつろぐ!」と返す。
…それ、ただのダラダラじゃん! でも、この部屋、なんか落ち着く。
じゃあみんな、荷物を置いて、さっそく夕飯へGO!
*
海風の香る宿の食堂に集まると、大きな木のテーブルを囲んだ。部屋には潮の香りと、厨房から漂う魚介のうま味たっぷりの匂いが充満していた。
「うわっ、この匂い!もうお腹すいた!」
「ふふ、この宿の海鮮は新鮮さが命らしいわ。楽しみね」
食いしん坊のかおりんが目をキラキラさせる。ひかりんはグルメを気取り、箸を持つ手つきすら優雅だ。
「この『活イカの刺身』、絶対ヤバいって!」
奈々りんはメニューを熟読し興奮気味。
ゆはりんは食にこだわりがないようで、「早く出てこないかな」と窓の外の波をぼんやり眺めていた。そんなゆはりんのお胸を眺めながら、わたしはクールにつぶやいた。
「ふーん、なんでもいいけど、量多いかもね」
*
最初に運ばれてきたのは、透き通った活イカの刺身。皿の上でまだピクピク動くイカは、まるで海そのもののよう!
奈々りんは「イカ、うまそう」と箸を手に、でも口元がニヤリ。
ひかりんがまず一枚手に取り、ソムリエのような仕草でイカを光にかざす。
「この透明感…まるで海の結晶ね。醤油は控えめにして、素材の味を堪能するわ」
と、芸術鑑賞のようなコメント。
かおりんはそんなみんなを横目で見て、「そんなことより、食べよ!」と箸でイカをガバッと掴み、わさびを山盛りにして口に放り込む。「んんっ!甘い!コリコリ!」と叫びながら、幸せそうに目を閉じた。
奈々りんが「A、ちょっと!それ私の分!」と箸で応戦し、イカの奪い合いに発展する。
ゆはりんはニコニコながら、こっそり自分の皿にイカを確保していた。
かくいう、わたしは「動いてるの食べるの、ちょっと…」と及び腰だったが、かおりんに「ほら、食べてみなよ!」と強引にイカを口に運ばれ……。
「うわ、意外と美味しい!」
*
次に出てきたのは、炭火で焼かれた大ぶりの牡蠣。ジュージューと音を立て、磯の香りがテーブルを包む。
「この焼き加減、完璧ね。表面はカリッと、中はジューシー」
と、わたしはナイフとフォークで切り分けるように味わう。
かおりんはそんな言葉を無視して、「待てない!」と牡蠣を一口でパクリ。
「熱っ!でも、うまい!海のミルクってこれか!」
と叫び、すでに二個目に手を伸ばす。
奈々りんは「レモンかけて食べるとさっぱりするよ」と、珍しく食に意見を出しつつ、マイペースに牡蠣を堪能。
ゆはりんは「牡蠣って、こんな濃厚なの!?」と感動しながら、スマホで写真を撮りまくる。
ひかりんは「これ、めっちゃ熱いね……しおりんのみたい」と慎重に食べ進める。
ん……?
*
その後も海鮮鍋、塩アイスを食べて、みんなお腹パンパン。
ひかりんが「次は温泉! 汗流そうよ!」とグラスを掲げる。わたし、心臓がドキッ。…座道部の温泉、どんな?




