表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/97

第63話「かき氷」

 7月初旬、大学の講義が終わった後、キャンパスのカフェテリアはエアコンの涼しさでほっと一息つける場所だったけど、窓の外はギラギラした夏の陽射しが容赦なく照りつけている。


 わたし――しおりんは、映画研究会内座道部の相棒、ひかりんと一緒にカフェテリアの隅の席に陣取っていた。


 扇風機の風がそよそよとテーブルを撫で、ひかりんのロングヘアが軽く揺れる。彼女の白いブラウスは汗で少し透けて、鎖骨のラインがくっきり見えてる。


「しおりん、暑すぎて頭溶けそう……。座道の心も、こんな日はぐらつくよね?」


 ひかりんが、アイスコーヒーのストローをくわえながら、いたずらっぽく笑う。彼女の唇がストローに触れるたび、ちょっと濡れて光るのがやけに目につく。わたしは慌てて視線をテーブルに落とすけど、心臓がちょっと速くなる。


「う、うん、でもさ、座道の極意その二:『暑さの中でも心は涼やかに』……とか、ね?」


 わたしが無理やり座道っぽく返すと、ひかりんはクスクス笑って、テーブルに頬杖をつく。ブラウスが少しずれて、肩のラインがチラリ。彼女の肌、めっちゃ白くて、汗でキラキラしてる。やばい、目が離せない。


「しおりん、顔赤いよ? 暑さのせい? それとも、わたしの魅力にやられた?」


 ひかりんがニヤッと笑って、わざと身を乗り出してくる。彼女の香水の甘い匂いが、扇風機の風にのってふわっと鼻をくすぐる。わたしは思わずコーヒーをゴクンと飲んで、誤魔化す。


「ち、違うよ! ほら、なんか涼しくなることしようよ! かき氷とか!」


 わたしが焦って言うと、ひかりんの目がパッと輝く。彼女、イケイケ系の美人なのに、こういう子供っぽい提案にすぐ乗ってくるのが、なんか可愛い。


「かき氷! いいね、しおりん! でも、ただ食べるだけじゃつまんないよね。何か面白いことやろっか」


 ひかりんがテーブルに身を乗り出して、目をキラキラさせる。ブラウスがまた少しずれて、胸元の谷間がほんの一瞬見える。わたしは心の中で「座道の心、座道の心」と唱えながら、なんとか冷静さを保つ。


「かき氷で面白いこと? どうやるの?」


 わたしが首をかしげると、ひかりんはニヤリと笑って、カフェテリアのカウンターを指差す。


「かき氷ドミノ! 二人でかき氷を並べて、交互に一口ずつ食べて、どっちが先に崩れるか勝負! 正座で、姿勢崩さずに、ね!」


「え、ドミノって!? かき氷倒すの!?」


 わたしが笑いながら突っ込むと、ひかりんは「違う違う!」と手を振って笑う。


「食べるスピードと姿勢の勝負! 溶けたかき氷がポロポロ崩れる前に、どれだけ優雅に食べられるか! 」


 ひかりんの声が弾んで、彼女の髪が肩に落ちる。汗で少し湿った髪が、首筋に張り付いてるの、なんか色っぽい。



 わたしたちはカウンターでかき氷を注文。いちごとメロン、どっちもシロップがたっぷりで、冷たくてキラキラしてる。わたしはいちご、ひかりんはメロン。テーブルに戻ると、二人で正座して(カフェテリアの椅子だけど、座道の心で!)、かき氷を目の前に並べる。扇風機の風が、かき氷の表面をそっと溶かし始めて、シロップがテーブルにぽたぽた落ちる。


「よーし、しおりん、準備OK? 座道式かき氷ドミノ、スタート!」


 ひかりんがスプーンを手に、目をキラッとさせて言う。わたしは「負けないよ!」と気合を入れて、スプーンを握る。


 まずわたしが一口。いちごのシロップが冷たくて、口の中でシュワっと溶ける。思わず「んっ」と声が漏れるけど、姿勢を正して、ひかりんに視線を送る。ひかりんはメロンのかき氷をスプーンですくって、ゆっくり口に運ぶ。彼女の唇がスプーンに触れる瞬間、シロップが少し垂れて、顎から首筋に一筋流れていく。白い肌に赤いシロップが映えて、なんかドキドキする。


「ひかりん、シロップ垂れてるよ! 姿勢崩れるよ!」


 わたしがからかうと、ひかりんは「むっ」と唇を尖らせて、指でシロップを拭う。その指を、なぜかペロッと舐めるもんだから、わたしは思わずコーヒーをこぼしそうになる。


「しおりん、集中して! 座道の心、忘れた?」


 ひかりんが笑いながら、次のスプーンを口に。彼女の舌がシロップを舐めとる動きが、扇風機の風に揺れる髪と相まって、なんかやけに艶めかしい。わたしは顔が熱くなるのを感じながら、急いで次の一口をすくう。

かき氷はどんどん溶けて、シロップがテーブルの上に小さな水たまりを作る。わたしのタンクトップにも、うっかりシロップがぽたっと落ちて、胸元に赤いシミ。ひかりんがそれを見て、クスクス笑う。


「しおりん、食べ方セクシーすぎ! 映画研究会の男子が見たら鼻血出すよ?」


 ひかりんの声が弾むけど、彼女自身もメロンのシロップで唇がテカテカ光ってる。ブラウスにシロップが飛び散って、薄い生地が肌に張り付いて、胸のラインがほんのり浮かんでる。わたしは「座道の心!」と心の中で叫びながら、スプーンを握り直す。


「ひかりんこそ、食べ方エロいって! 山野くんとか安達さんに見られたら、座道部解散レベルだよ!」


 わたしが反撃すると、ひかりんは「ふふ、しおりん、嫉妬?」とニヤリ。彼女が身を乗り出してきて、顔が近すぎる。シロップと香水の匂いが混ざって、頭がクラクラする。


 交互に食べるたび、かき氷はどんどん崩れていく。わたしのいちごはもう半分ドロドロで、スプーンですくうたびにシロップが手に垂れる。ひかりんの手もメロンシロップでべたべたで、彼女が指を舐めるたび、わたしの心臓がドクンドクン。姿勢を正そうと背筋を伸ばすけど、汗とシロップでタンクトップが肌に貼りついて、なんだか妙に意識しちゃう。


「しおりん、負けそう? ほら、かき氷、崩壊寸前!」


 ひかりんが笑いながら言うけど、彼女のメロンも結構やばい。シロップがテーブルに流れ込んで、彼女のブラウスにまでぽたぽた。ひかりんが「うわっ」と小さく声を上げて、ブラウスを軽く持ち上げる。汗で透けた肌が、扇風機の風にキラキラ光る。わたしはスプーンを落としそうになる。


「ひ、ひかりん、服! 透けてるって!」


 わたしが慌てて言うと、ひかりんは「え、ほんと?」と笑いながら、わざと胸元を扇いでみせる。涼しげな仕草なのに、なんかめっちゃ色っぽい。わたしの顔、たぶん真っ赤。


「しおりん、顔やばいよ。暑さ? それとも、わたしのせい?」


 ひかりんが囁くように言う。彼女の声、いつもよりちょっと低くて、耳に残る。わたしは「ち、違うって!」と叫ぶけど、声が上ずってる。ひかりんはクスクス笑って、最後の一口を口に放り込む。


「はい、わたしの勝ち! しおりんのかき氷、完全にドミノ崩れちゃったね!」ひかりんが勝ち誇ったように言う。確かに、わたしのいちごはもうドロドロで、テーブルの上がシロップだらけ。わたしのタンクトップも、シロップと汗でぐしゃぐしゃ。ひかりんもそんなに変わらないけど、彼女の笑顔がやけに眩しい。


「もう、ひかりん、ズルいよ! 次はリベンジね!」


 わたしが頬を膨らませて言うと、ひかりんは「ふふ、いつでも受けて立つよ、しおりん」とウインク。彼女がスプーンを置いて、汗ばんだ手でわたしの手を握ってくる。わたしの胸が、暑さとは違う理由でドキドキする。


「ねえ、しおりん。次は一緒にシャワー浴びて、シロップ落とそっか?」


 ひかりんが、いたずらっぽく、でもちょっと真剣な目で言う。わたしは「え、シャワー!?」と叫びながら、顔がさらに熱くなる。ひかりんは笑いながら、わたしの手をぎゅっと握る。


 カフェテリアの窓の外では、蝉の声が響き、夏の陽射しがキラキラ反射してる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ