表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/97

第57話「買い物デート」

 六月の土曜、梅雨前のカラッとした陽気が気持ちいい昼下がり。


 大学の座道部は今日はお休みで、ひかりんと二人で街に買い物に出かけた。なんか、ひかりんと二人きりで出かけるの、初めてかもって思うと、胸がちょっとドキドキする。


 駅前のショッピングモールは人で賑わってて、ガラス張りのお店やカラフルなディスプレイがキラキラしてる。風がそよそよ吹いて気持ちいい!


「しおりん、買い物デートいいね!」


 ひかりんが、イケイケな笑顔で言う。彼女のショートデニムの裾から伸びる足がめっちゃ健康的で、ドキッとする。


「うん、なんか新鮮! ひかりんと二人、どんな感じになるかな?」


 わたしが、ポニーテールを揺らしながらニコッと笑う。白いシャツの袖をまくって、今日はちょっと軽やかな気分。


「ふふ、きっと楽しいよ!最後までいっちゃう?」


 ひかりんが拳を握って気合入れ、太陽みたいに眩しく笑ってる。


「最後?世界が滅亡しちゃうってこと?」


「違う違う、あはは」



 最初に雑貨屋に突撃。カラフルな文房具やキラキラしたアクセサリーが並んでて、なんか目移りしちゃう。ひかりんが、棚からキラキラのヘアピンを手に取る。


「しおりん、これ似合いそう! ポニーテールにつけたら、めっちゃ映えるぜ!」


 ひかりんが、わたしの髪にヘアピンをそっと当ててみる。彼女の指が髪に触れる瞬間、ちょっと顔が熱くなった。


「ひ、ひかりん、似合うかな?」


 わたしが、照れながら言うと、ひかりんが


「めっちゃカワイイ! しおりん、モデルみたい!」


 ってニヤッと笑う。なんか、褒められると胸がくすぐったい。


 次は服屋へ。ひかりんが、派手な色のTシャツを手に取って、鏡の前で合わせてみる。タンクトップの肩がチラリとずれて、彼女の鎖骨がキラッと光る。


「しおりん、ここの服は落ち着いたのもあるよ! これ、どう?」


 ひかりんが、シンプルな白いブラウスを手に持って、わたしに差し出す。


「うわ、いい感じ! ひかりん、センスいいね!」


 わたしが、ブラウスを受け取って試着室のカーテンを引く。


「しおりん、めっちゃ大人っぽい! 座道の極意その九:服も心も、シンプルに美しく!」


着替えて出てくると、ひかりんが大げさに言うから、二人でケラケラ笑ってしまった。



 買い物の後は、フードコートでタピオカミルクティーを買って、ベンチに座って一休み。モールのガラス屋根から差し込む陽光が、テーブルの上にキラキラした模様を描いてる。


「しおりん、タピオカ美味しいね! 座道式で飲むなら、正座でストロー?」


 ひかりんがストローをくわえる姿、なんかカッコいい。


「ハハ、正座でタピオカはキツいって! でも、ひかりんとこうやって飲むの、楽しいよ!」


 わたしが、ミルクティーをちびちび飲みながら言う。


「ちょっと味見いい?」


 っと言って、わたしのタピオカにストローを差し込む。


「あっ!」


「こっちも美味しいね。2人で飲も」


「う、うん……」


 ――2人で同じの飲むなんて、恋人みたいじゃん……やばい。


 2人で同じタピオカを飲みながら目が合う。ひかりんの目は、いたずらっぽく笑ってる。


「ねえ、ひかりん、次どこ行く? アクセサリー見る? それとも、本屋?」


 わたしが、ドキドキを隠して言う。


 ――最後どうなっちゃうの?


 ひかりんがタピオカのストローを離し、ちょっと企むような笑顔でわたしの顔を覗き込む。


「本屋、いいね! しおりん、読書好きだし、なんか面白い本見つけようよ! 座道部流の極意その十:知識は心の筋肉!」


「ハハ、ひかりん、座道の極意、どんどん増えてくね! よし、じゃあ本屋行っちゃおう!」


 わたしはミルクティーのカップを手に、ひかりんと一緒にフードコートを後にする。モールのエスカレーターを登りながら、ひかりんが急にわたしの肩をポンと叩く。


「しおりん、今日さ、なんかいつもよりキラキラしてるよ。デート効果?」


「え、ひかりん、急に何!? キラキラって…ただの汗じゃない?」


 わたしは照れ隠しに笑いながら、頬を軽く手で押さえる。ひかりんは「ふふ、汗でもキラキラだよ!」とウインクしてくる。――もう、ひかりんのペースに完全に巻き込まれてる!



 本屋に到着すると、紙とインクの匂いがふわっと鼻をくすぐる。広い店内には、色とりどりの本が棚にぎっしり。ひかりんは早速、漫画コーナーに突進。


「しおりん、こっちこっち! この漫画、めっちゃ熱いんだから!」


 ひかりんが手に持ってるのは、ド派手な表紙のアクション漫画。わたしはちょっと笑いながら、隣の棚で文芸書の背表紙を眺める。


「ひかりん、漫画もいいけど、わたしこっちの小説気になってるんだよね…」


 わたしが手に取ったのは、淡い水色の表紙の恋愛小説。タイトルが「君と過ごす六月の空」で、なんか今日の気分にぴったり。ひかりんがわたしの肩越しに覗き込んでくる。


「お、しおりん、ロマンチックな気分? ふふ、どんな話か読んでみなよ! 恋愛小説読むしおりん、想像するだけでカワイイ!」


「もう、ひかりん、からかわないでよ!」


 わたしは顔を赤くしながら、そそくさと本を棚に戻す。でも、ひかりんが「いや、買っちゃえよ! 絶対面白いって!」と煽ってくるから、結局その小説をカゴに入れちゃった。


 ひかりんも漫画を一冊選んで、二人でレジへ。店員さんが本を袋に入れてくれる間、ひかりんがわたしの耳元で囁く。


「しおりん、その小説読んだら、感想教えてね。もしかして、恋愛の極意も学べるかも?」


「ひかりん、極意って座道だけにして!」


 二人でケラケラ笑いながら、本屋を後にする。



 本屋を出た後、モールの屋上にある小さなガーデンスペースに移動。そこは人工芝が敷いてあって、木製のベンチが点在する、ちょっとしたオアシスみたいな場所。六月の風がそよそよ吹いて、遠くで子供たちの笑い声が聞こえる。


「しおりん、ここ気持ちいいね! ちょっと座ろっか!」


 ひかりんがベンチにドカッと座り、買った漫画をバッグから取り出す。わたしは隣にちょこんと座って、さっき買った小説を手に持つ。


「ひかりん、漫画すぐ読むの?」


「そ! 熱いうちに読みたいじゃん! しおりんも小説読む? 二人で並んで読書デート、めっちゃいい感じじゃね?」


「読書デートか…なんか、ほんとデートっぽいね」


 わたしがちょっとドキッとしながら言うと、ひかりんがわたしの肩に軽く頭を乗せてくる。


「だろ? しおりんとこうやってるの、なんか落ち着くんだよね」


 ――え、ひかりん、急にどうしたの!?


 わたしの心臓がバクバクするけど、ひかりんは全然気にせず、漫画をパラパラめくり始める。


「ひかりん、さっきからデートデートって…ほんとにデートみたいじゃん」


 わたしが小さな声で呟くと、ひかりんがパッと顔を上げて、ニヤッと笑う。


「ん? しおりん、照れてる? ふふ、じゃあさ、ほんとにデートっぽくしちゃう?」


「え、ど、どんな感じ!?」


 わたしが慌てて聞くと、ひかりんがベンチから立ち上がって、急にわたしの手を引く。


「ほら、しおりん、手つなぐよ! デートっぽく街歩こう!」


「え、ひかりん、待って、急に!?」


 わたしの手をギュッと握るひかりんの掌……温かい。彼女の笑顔が太陽みたいで、ついわたしも笑っちゃう。


「よし、じゃあ次はアクセサリーショップ行こう! しおりんに似合うピアス探すよ!」


 ひかりんがわたしの手を引いて、モールの階段を駆け下りる。わたしはポニーテールを揺らしながら、必死でついていく。


――ひかりんと手つないで歩くなんて、ほんと恋人みたい…!



 アクセサリーショップに着くと、キラキラしたピアスやネックレスがずらり。ひかりんは真剣な顔でショーケースを覗き込み、店員さんに「これ、試着できますか?」と聞く。


「しおりん、こっちのシルバーのピアス、めっちゃ似合いそう! つけてみなよ!」


 ひかりんが小さな星型のピアスを手に持って、わたしの耳元に近づける。彼女の指が耳に触れる瞬間、また顔が熱くなる。


「ひかりん、ほんとにセンスいいね…これ、かわいい!」


 わたしが鏡でピアスを確認すると、ひかりんが後ろから「ほら、めっちゃしおりんっぽい! 大人っぽくてさりげない感じ!」と褒めてくれる。


「じゃあ、これ買っちゃおうかな…ひかりん、ありがとう!」


 わたしがレジでお会計してる間、ひかりんも自分の分で小さなブレスレットを購入。店を出ると、彼女がブレスレットをわたしの手首にそっとつけてくれる。


「お揃いっぽくしてみた! しおりんとリンク、いい感じじゃん?」


 ひかりんのブレスレットとわたしのピアス、どことなく似たデザイン。


 ――リンクって、なんか特別な感じ!


「ひかりん、ほんと今日、楽しすぎ…!」


 わたしが笑顔で言うと、ひかりんが急に真剣な顔でわたしの目を見る。


「しおりん、さ。今日、ほんとにデートだったら、どう思う?」


「え…!? ひかりん、急に何!?」


 わたしの心臓がまたバクバク。ひかりんはちょっと照れたように笑って、髪をかき上げる。


「いや、なんかさ、しおりんとこうやってると、ほんとに楽しくて…。座道部以外でも、こうやって二人で過ごすの、いいなって」


 ――ひかりん、ストレートすぎだよ…!


 わたしが言葉に詰まってると、ひかりんがまたいつもの明るい笑顔に戻る。


「ま、考えすぎは座道の敵! ほら、しおりん、次はアイス食べて帰ろうぜ!」


「う、うん! アイス、いいね!」


 わたしはドキドキを隠しながら、ひかりんと並んでアイス屋さんに向かう。夕暮れのモールはオレンジ色に染まり始めて、二人を優しく包み込む。



 アイス屋で、ひかりんはチョコミント、わたしはストロベリーを注文。ベンチに座ってアイスを食べながら、二人で今日の買い物を振り返る。


「しおりん、今日の戦利品、いい感じだよね! あのピアス、座道の練習でもつけてきなよ!」


「ハハ、座道でピアスって、なんか新鮮かも! ひかりんのブレスレットも、めっちゃ似合ってるよ!」


 ひかりんがブレスレットをチラッと見て、ニコッと笑う。


「しおりん、今日、ほんと楽しかった。次はさ、座道部オフの日、また二人でどっか行こうよ!」


「うん、絶対! ひかりんとだったら、どこ行っても楽しいよ!」


わたしが笑顔で言うと、ひかりんがわたしの肩を軽くポンと叩く。


「よし、決まり! 座道部流デート、第二弾、乞うご期待!」


 二人で大笑いしながら、アイスを食べ終える。夕陽がモールのガラスに反射して、キラキラと輝く。


――ひかりんと過ごす六月、ほんと、最高。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ