第56話「けんけんぱ」
六月の昼下がり、大学の映画研究会にある座道部の部室は、梅雨前のカラッとした陽気で、窓から差し込む陽光が畳にキラキラした模様を投げかけてた。
今日は部活の予定がゆるっとした感じで、部室にはわたしとしおりんだけ。なんか、二人きりってのも珍しくて、部室の空気がいつもよりちょっとドキドキしてる気がする。
「しおりん、今日は二人だけかー。なんか、いつもと違う感じで遊ばない?」
ひかりんが、いつものイケイケな笑顔で言う。彼女は畳に胡座をかいて、Tシャツの袖をまくり上げてる。
「うん、いいね! 座道っぽい遊びで、なんか懐かしいやつがいいかな?」
わたしが、ポニーテールを揺らしながら言う。ふと、部室の隅にチョークが転がってるのを見つけて、ひらめいた。
「ねえ、けんけんぱはどう?」
「けんけんぱ!? こんなとこでどうやるの?」
ひかりんが、目をギラッとさせて身を乗り出す。
「ルールは簡単! 正座の姿勢で、畳にチョークでけんけんぱのマスを描くの。膝でジャンプして進んで、姿勢崩したり、線踏んだりしたらアウト! 一番遠くまで行った人が勝ち! 座道の集中力とバランスの勝負だよ!」
わたしがニコッと笑うと、ひかりんが拳を握って、
「いいね、ハジけそう!」
*
二人で畳にチョークでマスを描き始める。
――後で消すの大変だけど
座道部の心得その一:どんな遊びでも、心を整えて、姿勢は美しく。
ひかりんが、畳に膝をついてガシガシ線を引く姿は真剣で、なんかカッコいいね。
「しおりん、これでいい? マス、しっかり描いたよ!」
ひかりんが、ニヤッと笑いながら言う。
「うん、バッチリ!」
「よーし、じゃ、最初はわたしから!」
わたしが、正座でマスの前に構える。背筋をピンと伸ばして、座道の心で集中。膝で小さくジャンプして、最初のマスに着地。畳の感触が膝に心地よくて、なんか懐かしい感じ。
「いいね、しおりん軽やかだよ!」
ひかりんが、拍手しながら言う。彼女の笑顔がキラキラしてて、なんか無性に気合入っちゃう。
わたしは4マス目まで進んで、5マス目で膝がちょっとグラッとなって、畳にペタンと座っちゃった。
「うっ、アウト!」
「5マス、すごいよ!」
ひかりんが笑いながら言う。
「次、ひかりん!」
わたしがチョークを渡すと、ひかりんが正座で構える。彼女の動きは、とてもキビキビしてて、膝でピョンとジャンプするたび、タンクトップがパタッと揺れる。でも、3マス目でちょっとバランス崩して、畳にドスンと座っちゃった。
「ぐっ、3マス! しおりん、超えられなかった!」
ひかりんが、悔しそうに笑いながら畳に寝転ぶ。
*
二回目はチーム戦っぽくアレンジ。交互にジャンプして、合計10マス進んだら勝ちってルール。畳の上で正座して、二人で「せーの!」って同時にスタート。
わたしが3マス進んで、ひかりんにバトンタッチ。彼女が4マス進んで、めっちゃいいリズム! ひかりんがジャンプするたび、髪がパタパタ揺れて、夕陽に照らされた笑顔がキラキラしてる。なんか、二人でやってるこの感じ、とっても青春っぽい。
「しおりん、息ピッタリだよ! あと3マス!」
ひかりんが、笑いながら言う。わたしは気合入れてジャンプするけど、4マス目で膝がグラッとなって、畳にペタン。
「うわ、しおりん、アウト!」
ひかりんが、大笑いしながらわたしの肩をポンと叩く。
「ひかりん、次で決めよう!」
わたしが言うと、ひかりんが「任せて!」って気合入れる。彼女が3マス進んで、なんとか10マス達成! 畳の上で、二人でハイタッチして、ギャーギャー騒ぐ。
「しおりん、ナイスパートナー!」
ひかりんが、わたしの頭をくしゃっと撫でる。その手が温かくて、なんか顔がニヤけちゃう。
「ひかりんも、キレッキレだったよ!」
わたしが、ひかりんの肩をポンと叩き返す。彼女の笑顔、夕陽に照らされて、なんかいつもより眩しい。
窓の外では、六月の夜風がそっとカーテンを揺らしてた。わたしは、今日の楽しさを胸に、明日もまたひかりんとバカ騒ぎするんだって、ワクワクしながら思った。




