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第41話「うつされた」

 5月も中旬、大学の講義やサークルで忙しい日々が戻ってきた。キャンパスの新緑が眩しく、夜には涼しい風が吹くこの季節、なんだか心が弾む。


 かおりんは高校生で、部活に夢中。最近ちょっと忙しそうで、ゆっくり話す時間が減ったけど、あの子の無邪気な笑顔を思い出すだけで、元気になれる。


 でも、今日に限っては、そんな気分も吹き飛ぶ大事件。朝、かおりんが「しおりん、風邪うつっちゃった……」って、鼻すすりながらベッドでグズグズ。熱を測ったら、38.3度。


 やっちゃった、絶対私のせい! 先週、私が風邪ひいて、かおりんに看病してもらったのに、うつしちゃった……。かおりん、昨日まで部活でシャトル追いかけて元気だったのに、絶対私の咳が原因だ。ママりんは仕事、パパりんは出張で、家は私とかおりんの二人きり。かおりんの部活は今日は休みで、ベッドで寝てるから、私が看病する番。


「かおりん、ゼリー買ってくるから、安静にしてて!」


 って言って、コンビニ行く準備してたら、インターホンがピンポーンと鳴った。え、誰? 宅配? 何も頼んでないよ。


 モニター覗くと、知らない女の子二人。ショートカットの元気そうな子と、ロングヘアの落ち着いた小柄な子。高校生っぽい。


「かおりーん! 大丈夫!?」


 ショートカットの子が叫んでる。え、かおりんの友達!?


「え、誰!? かおりん、知り合い!?」


 喉ガラガラで声出すと、ちょっと痛い。ドア開けると、ショートカットの子がニコニコで突進。


「しおりんさん! かおりんの友達、奈々りんだよ! こっちはゆはりん! かおりんから、風邪ひいたって●INEきて、飛んできた!」


「うそ、奈々りん? ゆはりん? かおりん、いつ連絡したの!?」


 頭、ちょっと混乱。かおりん、熱でボーッとしてるはずなのに、友達に連絡!? ロングヘアのゆはりんが、穏やかにフォロー。


「かおりん、朝、部活のグループ●INEで『しおりんに風邪うつされてダウン』って。奈々りんが『看病行く!』って即決して、私もついてきたの。迷惑だったら、ごめんね」


「迷惑じゃないよ! ありがと、来てくれて! でも、うつっちゃうかも……」


「ダメ! かおりん、寝てなきゃ! ナース奈々りん、看病開始!」


 奈々りんが、エコバッグ振り回してキッチンに突進。バッグには、ゼリー、バナナ、スポーツドリンク、なんか色々詰まってる。ゆはりんは、申し訳なさそうに微笑む。


「奈々りん、ほんと突っ走るから。しおりんさん、かおりん大丈夫? 熱、高そう?」


「うん、38度ちょっと。朝からグズグズしてる。ほんと、ごめん、うつしちゃって……」


 ゆはりんの優しい声に、ホッとする。かおりんの友達、めっちゃいい子たちだ。



 かおりんの部屋覗くと、布団かぶってモゾモゾ。扇風機の風が、かおりんの前髪を揺らしてる。額に手当てると、熱い。うー、ほんと私のせい。あんな元気な子が、風邪で弱ってるなんて、胸がキュッとなる。


「かおりん、奈々りんとゆはりん、来てくれたよ。めっちゃいい子たちね」


「うぅ……しおりん、ありがと……。ゼリー、買ってきてくれるって言ってたのに、友達呼んじゃった……」


「いいよ、かおりんが元気になるなら、なんでもいい。ほら、水飲んで」


 スポーツドリンク渡すと、かおりん、ゆっくり起き上がってゴクゴク。顔、赤いけど、目はちょっとキラッ。友達の名前聞いたら、元気出たのかな。そしたら、突然、かおりんが布団の中でモゾモゾ動き出して、Tシャツの裾がズルッとめくれちゃった。お腹、チラッと見えて、なんか、ドキッ。かおりん、最近ちょっと大人っぽくなったな、なんて思ったら、慌てて布団引き戻す。


「かおりん、動かないで! 風邪悪化するよ!」


「う、うぅ、ごめん……なんか、暑くて……」


「暑いなら、薄着でいいけど、ちゃんと布団かけてて!」


 顔、ちょっと熱くなっちゃう。姉貴なのに、なんでドキドキしてるんだ、私。話題をそらさなきゃ。


「薬飲まなくちゃね……」


 台所にあったパパりん……父親の買ってた薬を持ってきたので、開けると……。


「あっ……これ座薬だ」


「へっ……?」


「あはは……姉妹だからいいよねえ……やってあげるよ」


「……しおりんなら……いいよ」


 かおりんも赤くなってる。いやこれは風邪のせいでしょう。

かおりんがうつ伏せになると、寝巻のズボンに手をかける。すると出てきた、出てきた、大きな桃が……


 プールの更衣室やお風呂場ではチラっと見たことあるけど、ここまでじっくりと他人のお尻を見るのは初めてだ。ましてかおりんの……すべすべしてる… …


「……ひゃっ、なんで撫でてるの?」


「う、うん、つい……じゃあ……」


 そこへ、奈々りんがドタドタ入ってきた。


「しおりんさん! かおりん、元気!? スープ、ゆはりんの得意技! 絶対復活するよ!って……あっ!」


 ──見られた。


 ──かおりんの丸出しのお尻と撫でてる私。見られちゃった。


「あっ、ああ……お取込み中、ごめんなさい。続けて」


 奈々りんは静かにドアを閉め出て行った。


 あああああああああああああ、見られたあああ



 薬が終わって、二人を呼ぶ。


「え、ゆはりん、料理できるの? すごい!」


「そんな、大したことないです。冷蔵庫にトマトと玉ねぎあったから、ミネストローネにしました。かおりん、温かいもの食べた方がいいかなって」


 ゆはりんが、トレー持って入ってくる。スープのいい匂いが部屋に広がる。奈々りんが、バナナ持ってってニコニコ。


「これも食べて! 栄養!」


 そしたら、奈々りん、トレー置こうとして、つまずいてバナナ落としちゃった。バナナ、コロコロ転がって、かおりんの布団の上にポトン。布団、ちょっとずれて、かおりんのTシャツがまたズルッ。お腹どころか、ブラの端っこまでチラッ!


「奈々りん! やっちゃった! ごめん、かおりん!」


「うわっ、奈々りん、ドジ! しおりん、布団直して!」


 かおりん、顔真っ赤で布団引っ張る。私は慌てて布団かぶせて、


「ちょっと、気をつけてよ!」


 奈々りんに笑う。


ゆはりん、クスクス笑いながら


「奈々りん、ほんとドタバタね」


って。なんか、めっちゃカオス!


「ご、ごめん! でも、かおりん、ちょっと元気そう!」


 奈々りん、悪びれずニヤニヤ。かおりん、布団の中でってモゴモゴ。


「もう、奈々りん、恥ずかしいじゃん……」


 なんか、このドタバタ、かおりんの風邪を吹き飛ばしそう。



「ゆはりん、スープ、めっちゃ美味しい……。しおりん、ありがと、看病してくれて」


「うん、かおりん、私がうつしたんだから、ちゃんと看るよ。奈々りんとゆはりん、最高のナースだね」


「でしょ! ナース奈々りん、かおりんの元気、取り戻すよ!」


 奈々りん、ドヤ顔でピース。ゆはりんは、かおりんの枕元にスポーツドリンク置いて、扇風機調整。


「かおりん、熱あるなら、汗かいて治そう!」


 奈々りんがって、突然布団めくろうとする。

 かおりん、慌てて押さえて


「奈々りん、ストップ! またズレるじゃん!」


 ゆはりんが制止するけど、奈々りん、ケラケラ笑ってる。


「奈々りん、やりすぎ!」


 私は、笑いながら


「奈々りん、かおりんが恥ずかしがるから、ほどほどにね!」


 って。なんか、このドタバタ、めっちゃ楽しい。


 かおりん、スープとバナナ食べて、また布団に潜る。


「かおりん、寝てる間に、桜ヶ丘ランドの計画立てるよ!」


 奈々りんがリビングで騒ぎ出す。


「奈々りん、静かに! かおりん、休まなきゃ!」


 ゆはりんがたしなめる。桜ヶ丘ランド、かおりんが先週「奈々りんたちが遊園地行こうって」って話してたやつだ。



 リビングに行くと、奈々りん、スマホでジェットコースターの動画見て「これ、絶対乗る!」ってはしゃぐ。ゆはりん、メモ帳に「遊園地or動物園or水族館」って書いて、真剣。奈々りんが、突然ソファに飛び乗って「ジェットコースターで、かおりんと叫ぶの、めっちゃ楽しみ!」って、勢い余ってクッション落とす。クッション、転がって、テーブルのコップに当たって、スポーツドリンクがドバーッ! 私のスカート、ビショビショ!


「奈々りん! やっちゃった! ごめん、しおりんさん!」


「うわっ、奈々りん、ほんとドタバタ! いいよ、タオル取って!」


 ゆはりん、慌ててタオル持ってくる。


「しおりんさん、濡れたスカート、脱いだ方が早く乾くよ!」


 けど、奈々りんは、冗談っぽくスカート引っ張ろうとする。

 私は「ちょ、奈々りん、ダメ!」って笑いながら逃げる。ゆはりん、クスクス笑いながら「奈々りん、セクハラだよ!」って。なんか、めっちゃカオスだけど、笑いが止まらない。


「奈々りん、桜ヶ丘ランド行く前に、ドジっ子矯正した方がいいよ!」


「えー、でも、これが奈々りんチャームじゃん! かおりん、いつも笑ってくれるよ!」


「うん、かおりん、奈々りんのドタバタ、好きそうだね」


 ゆはりんが、メモ帳閉じて微笑む。かおりんの部活、座道部って、こんな賑やかな仲間で、めっちゃ楽しそう。私のサークルも楽しいけど、かおりんの高校生活、キラキラしてるな。



 夕方、奈々りんとゆはりんが「かおりん、寝てるし、帰るね」って。玄関で見送りながら、改めてお礼。


「奈々りん、ゆはりん、ほんとありがと。かおりん、めっちゃ喜んでたよ。ドタバタも、いいスパイスだった!」


「ふふ、ナース奈々りん、任務完了! しおりんさん、かおりんの看病、よろしく!」


「うん、しおりんさん、かおりん、早く治して、桜ヶ丘ランド行こうね。奈々りん、ドジ控えてね」


 奈々りんの元気な声と、ゆはりんの柔らかい笑顔に、胸が温かくなる。かおりん、最高の友達持ったな。



 かおりんの部屋に戻ると、かおりん、静かに寝息。扇風機の風が、前髪を揺らす。ベッドの横に座ってると、さっきの座薬入れたことを思い出した。うーん、モンモンする。


 それにしてもかおりん、私にうつされた風邪で弱ってるのに、こんな穏やかな顔。姉貴として、ちゃんと守らなきゃ。


「かおりん、桜ヶ丘ランド、奈々りんとゆはりんと、めっちゃ楽しそう。私も、ちょっと行きたいな」


 そっと呟いて、布団直す。かおりんの手、ひんやりしてて、安心する。奈々りんのドタバタ、ゆはりんの優しさ、かおりんのキラキラした笑顔。5月の風邪でバタバタした一日だったけど、キラキラした一日になった。かおりん、早く治して、桜ヶ丘ランドで一緒に叫ぼう。約束ね。

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