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第40話「看病で」

 5月も半ばになった。


 GW明けはキツイけど、高校生活は楽しいので苦にはならない。今年は少し暑いけど、夜は涼しい風が吹くようになった。


 水遊びやら、隣町でのしおりんとの……。あの日のしおりんとの時間は、全部キラキラした宝物みたいに心に残ってる。


 でも、GWも終わって、しおりんとゆっくり話す時間が減っちゃった。いろいろしおりんが気にしてるの、気づいてるけど、なんか、タイミングが掴めないんだよね。私はまだ高校生、部活は大したことないけど、毎日ヘトヘト。しおりんは大学生で、なんか大人っぽくなってるから、ちょっと置いてかれた気分になる時もある。


 と思っていたら、しおりんから●INEが来た。


「風邪ひいたっぽい。部活終わったら、ゼリー買ってきて~」


「え、しおりん!? ゼリー買うけど、ちゃんと寝ててよ!」


 って返した。しおりん、絶対カラオケとかで冷房ガンガンの部屋で騒ぎすぎたんだ。ほんと、無理するんだから。


 部活の後、友達とちょっと話してたら、しおりんの風邪が頭から離れない。熱、大丈夫かな。ママりんは仕事、パパりんは出張で、家にはしおりん一人。そうだ、こっそり友達になったひかりんさんにお願いしちゃおう。ひかりんさん、しおりんの大学のサークルの友達で、しおりんに内緒で何度か会ったことある。めっちゃ明るくて、姉貴の友達って感じ。


 ●INEで


「ひかりんさん、しおりん、また風邪引いたっぽい! 今日、部活で夕方まで帰れないから、ちょっと様子見ててくれる?」


 って送ったら、すぐ


「オッケー! ナースひかりん、参上! しおりん、任せて!」


 って返ってきた。ひかりんさん、ほんと頼もしい!



 部活は夕方まで。しおりんの風邪、気になって、時計ばっかり見ちゃう。熱、高くなってないかな。ひかりんさん、ちゃんと看病してくれてるかな。やっと練習終わって、急いで着替えて、コンビニでしおりんの好きなマンゴーゼリーとスポーツドリンク買った。


 家に帰る途中、夕陽がオレンジに染まってて、なんか、しおりんと公園でブランコ乗った日のこと思い出した。あの時、ついキスしちゃって、しおりんの真っ赤な顔、めっちゃ可愛かったな。高校生の私が、大学生の姉貴にキスって、なんか変だけど、あの瞬間、しおりんがすっごく近く感じたんだ。



 家に着くと、玄関でひかりんさんのスニーカー。やっぱり来てくれてる! リビングに入ると、ひかりんさんがキッチンで洗い物してる。テーブルの上には、空になったスープのボウルとりんごの皮。ひかりんさん、今回も本格的!


「ひかりんさん、ありがと! しおりん、どう?」


「かおりん、おかえり! しおりん、ちゃんとスープとゼリー食べたよ! 薬も飲んで、今寝てる!」


 ひかりんさんが、ニコニコしながらスポンジ持ってる。めっちゃ頼りになるな。


「スープ、また作ってくれたんだ! ひかりんさん、ほんとナースみたい!」


「ふふ、ナースひかりん、緊急出動! 冷蔵庫に玉ねぎと人参あったから、コンソメスープ作ったよ。しおりん、熱あるけど、食欲はあった!」


「よかった! ひかりんさん、ほんとありがと。助かった!」


「かおりんの大事な姉貴だもん! 任せてよ!」


 ひかりんさんが、ウインクしてくる。なんか、ひかりんさんと話してると、ホッとする。ひかりんさん、しおりんの友達だけど、私とも気さくに話してくれる。しおりんのこと、めっちゃ大事にしてくれるから、ほんと感謝。


「じゃ、ひかりんさん、私、しおりんの様子見てくるね」


「うん! 私、洗い物終わったら帰るから! かおりん、看病頑張って!」


 ひかりんさんが、キッチンで鼻歌歌いながら洗い物続けてる。ひかりんさんの明るさ、しおりんが風邪でも、なんか安心できるな。



 しおりんの部屋のドアをそっと開けると、ベッドで布団かぶって寝てる。扇風機が、弱い風送ってる。そっと近づいて、額に手当てると、ちょっと熱い。うー、しおりん、ほんと風邪弱いな。水遊びの時、しおりんがタオルで私の髪拭いてくれたこと、急に思い出した。あの時、しおりんの優しい手、めっちゃ安心したんだよね。


「しおりん、起きてる?」


 そっと声かけたら、しおりんがモゾモゾ動いて、布団から顔出す。目、ちょっとぼーっとしてる。


「かおりん、帰ってきた……。ゼリー、買ってきてくれた?」


「うん! マンゴーゼリーと、スポーツドリンク! でも、熱あるみたいだから、まず水飲んで」


 コンビニの袋からペットボトル出して、キャップ開けて渡す。しおりん、ゆっくり起き上がって、ゴクゴク飲む。顔、ちょっと赤いけど、元気そう。


「ひかりん、めっちゃ看病してくれて、びっくりした。スープ、美味しかったよ」


「でしょ! ひかりんさん、ほんとすごいよね。私、連絡してよかった!」


「かおりん、なんで私の風邪、バレたの? ●INEする前から、ひかりんに連絡してたでしょ?」


 しおりんが、ジトーっとした目でこっち見る。う、鋭い! でも、ほんと、姉貴の風邪、バレバレなんだから。


「え、だって、昨日帰ってきた時、しおりん、ちょっと咳してたじゃん。絶対風邪だなって思ったの!」


「うそ、かおりん、テレパシー? 怖いんだけど!」


 しおりんが、笑いながら布団に潜り込む。なんか、しおりんのこういう顔見ると、ホッとする。高校生の私には、大学生のしおりん、なんか遠く感じる時もあるけど、こうやって風邪で弱ってるしおりん、昔と変わらない。


「ねえ、かおりん、ありがと。ひかりん呼んでくれて」


「ふふ、だって、しおりん、ほっとけないじゃん。ひかりんさん、めっちゃ頼りになるでしょ?」


「うん。ナースひかりん、最高だった。かおりんも、ナースかおりん、頑張ってよ」


「え、私!? 料理とか無理だって!」


「ふふ、ゼリー買ってきてくれるだけで、十分ナースだよ」


 しおりんが、ニコッと笑う。その笑顔、キラキラした光がある。しおりん、風邪でも、なんか、めっちゃ可愛いな。



 しおりんに布団かけ直して、ゼリーを冷蔵庫に入れにリビングに戻る。ひかりんさん、洗い物終わって、ソファでスマホいじってる。


「ひかりんさん、ほんとありがと! しおりん、ちょっと元気そうだった!」


「よかった! かおりん、めっちゃいい妹だね。しおりん、幸せ者!」


「え、うそ、恥ずかしいって!」


 ひかりんさんが、からかうみたいに笑う。


「じゃ、ひかりんさん、帰る? 暗くなってきたよ」


「うん、帰る! かおりん、しおりんの看病、よろしくね! またサークルで、しおりんと恋バナするから!」


「え、恋バナ!? ひかりんさん、しおりんに好きな人いるの!?」


「ふふ、秘密! かおりんも、好きな人できたら、教えてね!」


 ひかりんさんが、ウインクして、玄関向かう。好きな人、か。しおりんに「好きな人できた?」って聞かれた時、チラッと浮かんだけど、まだ、ただの先輩だし! 高校生の私、恋バナとか、なんかドキドキするな。



 ひかりんさんが帰って、キッチン片付けて、しおりんの部屋に戻る。しおりん、目を閉じて、静かに寝息立ててる。扇風機の風が、しおりんの前髪をそっと揺らしてる。ベッドの横に座って、しおりんの寝顔見ながら、なんか、胸が温かくなる。しおりん、大学生で、なんか大人っぽいけど、こうやって風邪で寝てる時、昔のしおりんと変わらない。


「ねえ、しおりん」


そっと声かけてみるけど、しおりん、寝てる。まあ、いいや。


「好きな人の話、いつか教えてね。私も、しおりんに、話したいことあるかも」


 小声で呟いて、布団をそっと直す。しおりん、早く治ってよ。じゃないと、恋バナ、聞けないじゃん。


「約束ね」


 しおりんの手に、そっと小指絡めてみる。ひんやりした指先、なんか、安心する。窓から入ってくる夕方の風が、蝉の声と一緒に、部屋をそっと包んでる。しおりんの風邪でバタバタした一日だったけど、ひかりんさんと看病できたから、なんか、キラキラした一日になった。しおりんの恋バナ、絶対聞き出すんだから。

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