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プロローグ 森の墓標、町の運命

「2017年に公開した小説をAIを使って加筆修正しました」

 山深い森の中を、一人の男がゆっくりと歩いていた。足取りは慎重で、まるで転ばないよう気を配っているように見えた。しかし、よく目を凝らすと、そうではないことが分かる。男は木の枝や石を踏まないよう足元を注意深く見つめ、音を立てないように歩いていたのだ。さらに、周囲を警戒するように視線を巡らせ、その手には猟銃がしっかりと握られていた。


 男の名は田中良造、57歳。猟友会に所属するベテランハンターだ。最近、近隣の町で熊による被害が相次ぎ、良造はその害獣駆除を依頼されていた。音を立てずに進むのは、熊に気付かれないための工夫だった。長年の経験を持つ彼だが、年齢による衰えを感じるようになり、普段は若いハンターを連れて山に入ることが多かった。だが今回は違った。人手不足のため、若手の同行者はいない。たった一人でこの危険な任務に挑んでいたのだ。


 内心、良造はその状況に不満を抱いていた。猟友会のハンターは近年、深刻な人手不足に悩まされていた。その原因の一つは、動物愛護団体からの激しい抗議だ。害獣駆除という危険な仕事に従事しても、批判の的になることが増えていた。「命がけで町を守っても、わざわざ悪者扱いされるなんて馬鹿らしい」と考える若者が増え、ハンターの数は減る一方だった。時代は変わるものだと良造は理解していたが、「嫌な方向に変わっちまったな」と嘆かずにはいられなかった。

 若い頃、良造にとってハンターは英雄だった。人間に危害を加える害獣を仕留める者は、町の人々から感謝され、尊敬されたものだ。だが今は違う。それでも彼がハンターを辞めなかったのは、幼い頃からの憧れと、「人の役に立ちたい」という純粋な気持ちが、57歳になった今も胸に宿っていたからだ。


 森の中を進む良造は、周囲に目を光らせながら歩を進めていた。その時、遠くに何かが見えた。距離がありすぎて何だか分からないが、山の緑の中で異様な肌色の物体が目に入った。不思議に思いながら近づくと、その正体が徐々に明らかになってきた。

 裸の人間だった。

「何だこりゃ……こんな山奥で、裸でうろついてる奴がいるのか?」

 良造は訝しげに眉を寄せつつ、慎重にその人物に近づいた。だが、次の瞬間、彼は凍りついた。その「人間」はかすかに唸り声を上げていた。獣のような、低く不気味な声だ。危険を察した良造は咄嗟に近くの太い木の陰に身を隠し、息を殺して様子をうかがった。

 やがて、その「人間」がこちらを向いた。良造はその顔を見て、思わず声を上げそうになった。そこにあったのは、決して普通の人間の顔ではなかった。まず、目が異様だった。黒目が真っ赤に染まり、焦点が定まっていない。半開きの口からは小さな牙が覗き、まるで化け物のようだった。

「夢でも見てるのか……?」

 現実感が薄れる中、良造は呆然と立ち尽くした。だが、これは紛れもない現実だった。幸い、その化け物はまだこちらに気付いていないようだ。

 恐怖に震えながらも、良造は何とかその場から逃げ出そうと考えを巡らせた。体が硬直し、思うように動かない。それでも勇気を振り絞り、後ずさりを始めた。化け物が別の方向を向いた瞬間を見計らい、彼は一歩退いた。だがその時、バキッと乾いた音が森に響いた。足元の枝を踏み折ってしまったのだ。

 化け物が振り返り、唸り声を上げながらこちらへ向かって走り出した。

「まずい!」

 良造は恐怖に駆られ、必死に逃げ出した。だが、化け物の速度は異常だった。みるみる距離が縮まり、肩に手が伸びてくる。とっさに振り返った良造は、猟銃を構え、引き金を引いた。


 ドン!


 銃声が山に響き渡り、化け物は「く」の字に折れ曲がって吹き飛んだ。

「ハァ、ハァ……死んだか?」

 息を切らしながら近づくと、弾丸は化け物の胸に命中していた。

「心臓を撃ち抜いたか……」

 安堵の息をつき、良造はポケットからスマートフォンを取り出した。猟の最中に鳴らないよう電源を切っていたが、今は助けが必要だ。電波が不安定な山中だったが、電源を入れ、警察に連絡しようとした。震える手でボタンを押すと、起動に時間がかかる。苛立ちながら画面を見つめ、やっと電源が入った瞬間、手が震えてスマホを落としてしまった。

「ちっ!」

 舌打ちしながらスマホを拾い、立ち上がったその時、信じられない光景が目に飛び込んできた。目の前に、あの化け物が立っていたのだ。

「何!?」

 心臓が喉から飛び出しそうなほどの衝撃。死んだはずの化け物が、なぜ生きているのか。混乱する良造の顔面に、化け物の拳が振り下ろされた。


 バキッ!


 今度は良造が吹き飛び、地面に叩きつけられた。

「ううっ……」

 立ち上がろうとするが、足に力が入らない。化け物が近づいてくる。

「やめろ……助け……」

 掠れた声で助けを求めるが、化け物は無慈悲だった。馬乗りになり、容赦なく拳を振り下ろす。意識が薄れゆく中でも殴打は続き、最後に鋭い牙が良造の首に突き刺さった。

 やがて化け物は立ち上がり、良造にはもう興味を示さなかった。低く唸りながら歩き出し、森の木々の隙間から漏れる明かりを見つけた。それは、遠くの町の明かりだった。

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