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垣間見える世界線




 グルガン族、テンジン•シェルバの運転する四駆の後部座席からブツブツと小言を言い続ける、

 

 夏目(ジョブ-アシュール、ステータス-不機嫌な JK、適正-剣師、スキル-斬撃、特徴-思ったよりも頭よし、口悪し)。


 「あなた、彼氏のいる女の体乗っとるなんて最低ね。」


 「いえ、その、これはエブリンお姉様との契約と言うか、ご厚情に甘えてと言うか、、、」


 「ほら甘えてるんじゃない、パオア一族のやり口よ。ちょっと隙を見せたらべったり甘えてくる。いつまでも被害者ぶってるんじゃないわよ。」


 「でも、ほら、境界線に住むものとして無力な私たちが生き残るためには、そのなんて言うか…」


 「無力?無気力の間違いでしょ。


…ああっ、ダメね、うまく伝えられない。 

 

 シエリやエブリンに援助を乞うことができない貴方の一族を見捨てなかったのはユキだけよ。」


 「………。」


 「地下流水を制御して巨大な地底湖を作ったのはユキよ。」

 「サンドワームを小型家畜化してファームを作ったのもユキよ。」

 「地下農場のために採光システムを構築したのも彼よ。貴方はそれを知っているの?」


 「いいえ、そんなことがあったとは。」


 「そんなことも知らない貴方が救世主面して最大戦力であるエブリン•エクスローズの体を乗っ取って何をしようとしてるのかしら?」


 「ざわめく一族の御霊の導きとしか言いようがないわ。」


 全く曖昧な理由だ。裏の事情を勘繰ってくださいと言っているとしか思えない。腑抜けたシエリにあのダートーサ達草原の魔女が無防備なエクスローズの身体を預けるとはどう考えてもありえない。 


 何時もの事と片付けることは出来るが緊張感の割には何かが足らない。


 そのことを突き詰めていく夏目の脳裡にはいくつかの答えが浮かび上がる。


 ローズ財団が本気でオールテッド鋼を求めている。ムトリのオアシスまでのルートを解明して直接取引きを望んでいるのかもしれない。そして彼女たちにはその権利がある。


 かの時代、大商人バイロン•グレイとアシュール•アヴァンダン•シエリとの関係性により、現在パオア一族との取引きはS機関がその主導権を持つ。だが、予言により直接ムトリを陥落させたのはダートーサ率いるグルガン族の女戦士集団ルグラン•トリエだ。


 今更その権利を主張しようとしても時間が空きすぎた。父親との確執によりパオアのルーゼはオアシスを追放された。しかし、今は英霊として祀られている。その英霊を宿したエクスローズとシエリがオアシスに帰還するとなると話しは別だろう。 


 まあ、どうでもいいことだ、と夏目は思う。限られていた資源を独占していたS機関がローズ財団と“話し合い”によって分配することになる。要するにそれだけのことだ。


 オールテッド鋼はただのレアメタルではない。その存在自体が魔導器で魔導具だ。作り手の技術次第で便利な道具にもなれば究極の破壊兵器にもなる。大量の魔力を保管できるエネルギーコアでもある。


 ユキは前世で新たな鉱脈を発見しその後、敵の待ち伏せを受け命を落とした。仲間のために不眠不休で武具を制作した直後のことだ。


 彼女の不在を狙った僅かな時間の出来事だった。千年前のことだが今もその喪失感が彼女の心を凍りつかせる。


 だが、それも一つの物語の結末に過ぎない。問題はなぜローズ財団が今オールテッド鋼をそこまで欲しているということだ。


 「何が起ころうとしてるの?情報を共有しなさい、手助けできると思うわ。」


 ルーゼに対して批判的であった夏目の口調が一変する。短い思考の中で彼女が一体。何にたどり着いたのか、シエリには理解できない。


 助手席から驚き顔で振り返るシエリに夏目は語りかける。


 「シエリ、私は貴方の能力も人柄も信用してるわ。でも記憶を失った貴方には昔のように物事を看破する力はないと思っているの。どうかしら?」


 「その通りだ。俺は答えのない記憶の断片の森を彷徨うしているにすぎない。だが、エブリンの選んだ道がとてつもなく危険だということ、その道以外未来に続く希望がないということは理解している。」


 シエリの潔い言葉に夏目はやはりと納得する。百万単位の戦士を縦横無尽に操り将軍と呼ばれた男が自分の今の立ち位置を奢る事なく把握している。やはり恐ろしい男だと思わずざるを得ない。未来へのマッピングができてるのだろう。だが、彼女も強かに彼に恩を売ることを忘れない。


 「多分あなたは感づいてると思うけど、シエリ卿やS機関の幹部の方たちは無事よ、我々が保護しているわ。」

 

 「不安から解放されたのは、そういうことだったのだな。」


 シエリには、焦りはあったが不安は無かった。シカゴ、ローズ財団のヘッドクォーターの預言者の椅子。別名死に戻りの椅子の上で見た未来への道筋はどれも悲惨なものだった。


 エブリン•エクスローズがパオアのルーゼに自身を委ねたのは、それが唯一の希望ある未来への道筋だということだ。


 シエリも見た苦痛に耐えながら、しかし、それを解き明かす経験値が彼にはなかった。


 曖昧なルーゼの自信はエブリンとの情報共有にある。と、ようやく納得することができた。この幼さの残る美しい少女の登場によって、僅かではあるがアシュール•アヴァンダン•シエリの能力が機能し始めた。


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