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ヒマラヤダンジョン

 



 カトマンズからさらに空路でインドダージリンへ。ここから先は陸路でダンジョンへと向かう。 


 この世界にはいくつものダンジョンが存在する。その多くは異世界戦争の舞台になったと思われる古代遺跡。激しい戦闘の後、時空の歪みに発生した異世界との境界地帯がそう呼ばれていている。


 アシュールと彼らをサポートする組織が文化財保護を目的と建前に厳重な管理下に置いている。危険な場所だ、魔物が生息し、今でも残酷に機能する罠、制御の困難な武具。もし明るみになれば現在認知されている人類の歴史を根底から覆す事実が露見するだろう。


 だが、金の匂いがする遺跡に群がる鼻が利く奴らがいる。危険を顧みない冒険者やトレジャーハンター、そして彼らに投資する利権を求める様々な国や多国籍企業。更にはその彼らに潜り込み不穏を煽る異世界からの工作員達。


 S機関の幹部達がヒマラヤで活動中大規模な地震が発生した。組織内に慌ただしい動きがあったことは知られている。次期組織のトップに就任が決まっているアヴァンダン•シエリがアメリカのローズ財団と秘密裏の会談を行いヒマラヤ入りをしたとなれば彼らの反応は言うに及ばない。


 ヒマラヤダンジョンは遺跡のない特殊なダンジョンだ。例え、内部に侵入できても広大なテルハ砂漠のオアシス ムトリに案内者なしにたどり着くのは不可能だ。彼らの後を追うしかない。しばらくの間、執拗な追跡者から逃れながら目的地へ向かうことになるだろう。


 「カリーシン、おおよそ三時間のアドバンテージはあると思うがどうする?」


 ドライバーであるグルガン族テ厶ジン•シェルバが問いかける。ネパールに入国した後、すぐさま乗り継ぎインド、ダージリンの空港に降り立ったことが察知されるまでの時間のことだ。


 「一番難しいコースで行こう。」

 

 「いや、しかし」


 一番難しいと言われるコースは、ある意味最短のコースだ。つつが無く困難を乗り越えれば、という前提で。


  ヒマラヤダンジョンへ向かう道には二つの関門が用意されている。過去には安全弁という捉え方もされていたが。今はどちらの陣営にとっても厄介な存在だ。


 広大な荘園を所有するカルト寺院の指導者、導師オシカーク。


 毒花咲き乱れるミショーの丘の住人モストルクー二夫妻。


 どちらも、こちら側の人間だが強烈な個性を持ち、いつのまにか必要悪的存在になってしまった者達だ。


 「カリーシン。夫妻は収穫の時期で機嫌が良く、オシカーク殿はとても不機嫌だそうだ。」


 いにしえの大商人バイロン•グレイの血族モストルクー二人の夫妻は武器商人だ。彼らの構築した情報網で世界中の紛争地帯を監視し武器や食料、物資を供給するバランサーを担っている。国と国との戦争とは異なり、民族間の争いの最終目標は敵対民族の淘汰にある。武器はそうさせないための抑止力だと彼らは考えている。


 そして金になる。


 モストルクー二人である以上そこは外せない部分だ。


 さらには世界最大級の外人部隊を組織し、航空機から軍用艦まで彼らの思いのままに操ることができる。


 導師オシカークに於いてはカルトな教団を世界的に展開する宗教指導者で暗殺教団という裏の面を否定できない。彼らのターゲットはもちろん異世界からの侵入者なのだが、こちら側の人間でも加担する者達には容赦ないと言われている。


 オリジンは日本の鬼狩りでヒマラヤダンジョンへと続く秘密の通路も管理してるという噂もある。


 何れにしろ、味方であっても一筋縄では行かない相手だ。


 「うまく協力してもらえたらいいけど、力不足だと分かれば一度死んで出直して来いって平気で実行する奴らよ。」


 後部座席で寝ていた筈のパオアのルーゼが後ろから両腕をシエリの両端に絡ませ、耳元で囁いてきた。


 このエブリン•エクスローズの身体に憑依する異世界の魂は秘密の塊の様な存在でシエリを悩ませ続けている。

だが、今回のクエストを達成させるためには彼女のガイドが無ければ成し得ないことも確かなようだ。


 遠くに8,586mの高さを誇る世界第三位峰カンチェンジュンガを望み車は緩やかな山の傾斜に張り付くようなダージリンの街をゆっくりと走る。


 「あそこに泊まりましょ。」


 彼女が指差したのはマハラジャの夏の離宮を改装されて造られた、歴史あるコロニアル風ホテルだった。


 「遊びに来たのではないぞ。」


 「そんなこと分かってるわよ。貴方の急ぐ気持ちもわかるけど。こちらから乗り込むのは悪手よ。」


 ここ数日間けだるそうな雰囲気で怠惰に過ごしていた彼女とは思えぬほどしっかりした口調でそう言った。


 「すぐに向こうから接触してくるわ、それまで優雅に過ごしましょう。」


 テムジンもそれがいいと頷いている。パリを離れペースを乱され続けている。ガイドは彼女だ、シエリは深い溜息を飲み込み、遠くの山々を見つめながら、そうだな、と受け入れた。

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