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闇の思い出



 「あぁ、やってしまった。」


 多分、初めてのことではないはずだ。自分が躊躇することで周りに与える影響は小さくない。と知っていたはずなのに、またやってしまった?とユキは考自分の愚かさに心震わせながら走る。


 今はとりあえず後悔やら得体の知れない胸の痛みは遠くへ追い遣り考えを巡らす。


 "彼女"に困難な決断を委ねてしまった。複雑に絡まった案件が大玉になって転がってきた。表現すればそんな感じだろう。


 亡命を希望する異世界人がムトリのパオワ一族だったこと、理由は開発中のオールテット鋼の新坑道がダンジョンと繋がり供給不能になっていること。オアシスを守る結界の魔導具をダンジョンの封印に回した事で街の守りが脆弱になっており至急支援が必要だという。


 そのパオワの交渉人達の後を付けていた他国の異世界人は事情の分からぬ闇の貴族に殺された。残されたのはサテライト・アサシンと呼ばれる潜在兵器とおぼしき三人の少女達。


 更にはサテライト・アサシンに特別な感情を持つ、ラコーヤに協力を約束してくれたシエリ卿の動向にも注意する必要がある。


 ひとつ山を乗り換えだと思えば一気に次の問題山積だ。


 それも最大の問題は最も重要な女だ。"


 自分の根底にある弱さや甘さを受け入れるかとユキは自身に問いかける。


 非情に成り切れない。シューレルを苛つかせた様に独善的な判断でしか相手を思いやれない。生と死がつきまとう戦いの中に情に塗れた優しさなど無用だと分かっている筈なのに、それを優先してしまう。致命的な欠陥だ、それも周りの迷惑も考えず繰り返してきたはずだ。


 "彼女の心は病んでいる"


 放置された長い年月と男の的外れな愛情表現。愛が憎悪に変わっていておかしくないはずだが執着心がそうさせてくれない。 


 人の心は移りやすいものだ、だがそれを許さない悲しみ苦しみもまた存在する。


 次から次へと現れる片足どっぷり闇にはまった女達に集中を乱され、優先順位を誤った。


 恐らくこれも"いつものこと"なのだろうが重すぎる。


 関われば関わるほど逃げ出したくなる。だが、逃れようにも逃れられない、それが彼の能力に起因する以上。魔女と呼ばれる者たちは彼の力に魅了され膝を折る。


 彼のタイトルを正確に表せば、付与魔導師であり錬金術師でしかない。戦場の最前線に立つ人間としてはいささか心もとない。一対の男女からなるアシュールは互いに能力を補う関係上、戦闘に特化した彼女とのバランスを取るために彼は多方面に能力を伸ばしてきた。


 その最大の特徴は魔力供給と魔力制御にある。彼は世界中の聖地、パワースポットを巡り歩き、その場所に宿る特別な力を精査分析して取り入れる。さらには繋がりを結び世界中どこにいようともその力を享受できるのだ。


 同じタイプにアシュール・アヴァンダン・シエリが存在するが、自身が戦士である彼の場合、供給先が限られる。パートナーであるエブリン・エクスローズとその眷属である旅の姉妹(サリ一)。要するに複雑な契約が必要だ。


 "誑しの聴雪、彼の背後に無数の魔女の屍。"


 彼には不本位だろうが、誰にでも、という節操のない彼の能力故、やっかみ混じりそう呼ばれる由縁だ。


 案内役として白夜の森入口で待っていた真祖マルファも例外なく。ごくりと喉を鳴らした。


 人の血を断ち、魔力枯渇状態の彼女は真祖の能力も尊厳も失いつつあった。幼女化の進んだ身体にも限度がある。


 ユキは一切の躊躇いも見せず、彼女の心臓の上に手を置いた。


 ひっ、と聞こえた彼女の声は無視をして、彼は魔力を流し込む。


 "夜の魔力だ。珍しいものではない、地球の半分は闇の中だから。闇属性の魔法は複雑でネガティブなイメージだが素材次第で微妙にニュアンスが変化する。"


 マルファのめったに打つことのない心臓が断続的に鼓動を始めた。


 エチオピアの岩窟教会群に住む魔女の輝くような黒い肌とエメラルドのような神秘的な緑色の瞳をユキは思い出す。


 "岩窟教会群は比較的新しいものだが、真に彼女が守っているのはその下に隠された数百万年前の墳墓。遥か遠い昔の戦いの記憶で、闇の思い出と呼んでいた。膨大なエネルギーが溜め込まれている場所だ。"


 本来ならば触れる必要など無いのだが、魔力共有は初めての弱ったマルファの身体が消し飛ばないよう力を制御する必要がある。繊細な魔力操作が必要だ。ユキはさらに濃密な闇の力を練り上げていく。


 鼓動が規則的なものへと変化する。


 目を閉じるユキには見えていないが、マルファの肉体は早回しのように成長を始め本来の姿へと成熟していく。それと同時に彼女を包むゴズロリのドレスが弾けるように霧散する。


 "焦ってはいけない。闇の魔力は塵のようなものだ。やがて下へと堆積していく。


 闇の思い出の魔女がそう言っていた。墳墓を守護する女だがショッピングモールとシネマコンプレックスがなければ生きていけない。と言っていた。確かに最後に出会ったのもロンドンでウエストフィールドという巨大な高級ショッピングモールのオイスターバーで生牡蠣とシャンペンを堪能していた。


 まあどうでもいい話だが。"


 やがて、休息や睡眠では補えない魔力がマルファに満たされていく。そして、彼女の経験値やスキルがユキに開示される。


 "真祖と云えども若いな。シューレルほどの闇の大魔導師にはまだまだほど遠い。だが、共に成長していくための友人としては十分だろう。"


 ユキが目を開くと、目の前には顔を赤くして涙目で彼を見つめる。美しい二十歳位の女がいた。彼は全裸の彼女の実った乳房を鷲掴みにしている状態だった。

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