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モストルクーニ人夫婦




 ダルセルニパの花咲くミショーの丘の上。灰色の大理石造りの邸宅が有りその美しい風景を独占している。


 そして、そこには誰も近づかない。


 山賊やゲリラの温床になっている無法地帯だが世界的大金持ちの夫婦の住む。その場所には決して近づかない。


 理由は二つある。一つはその夫婦が彼らに資金を提供していること。すなわち実質的な支配者であり雇い主だからであるため。


 そしてもう一つは、その夫婦がここに最初に訪れた時。この国境の紛争地帯に乱立する全ての山賊、ゲリラグループをたった二人で殲滅したからだ。


 要するにパワーとマネーでコントロールされた。官憲の力の及ばない無法地帯を装った彼らの王国だということなのだ。


 古の時代にバイロン・グレイと云う若い商人がいた。流通と経済でアシュールの戦いを支え、後に大商人と呼ばれた伝説の人物だ。


 決して精錬潔白な人物だったわけではない。政商としての側面を持ち荒事も厭わなかった男だ。しかし陽気な性格と先見性で周りを魅了した。


 そのバイロン・グレイを開祖とした

大きく分けて二つの流れが今も存在する。ヨーロッパを中心に世界的なネットワークを持つグレイ一族とモストルクーニ人と呼ばれ守銭奴とも必要悪とも揶揄される主に武器を取り扱う商人達だ。


 この館の主人てあるトレーン・モストルクーニとラーバラ・モストルクーニはいつもの穏やかな午後を過ごしていた。


 養蜂家の格好をした男は、集めてきた蜜を大ジョッキにな並々と注ぎ腰に手を当て一気に飲み干す。


 「ラーバラ君も飲んでみろ。今年のダルセルニバの蜜は格別だぞ。」


 中庭に張られたタープは緩やかに風に揺れ、手の込んだガーデンファニチャーの長椅子の女は読みかけの本を置いた。


 灰色の瞳の美しい白人女性だが魔女特有の年齢不詳な顔立ちを涙で濡らしている。


 「ラ、ラーバラどうしたのだ?」


 「今週の課題の一つに貴方をいかにして破滅させるか、という考察があったのですけど、その結末の悲惨さに涙していたのです。」


 「君は僕を滅ぼそうと考えているのかい?」


 「いいえ、ただのシミュレーションです。」


 「僕に不満でもあるのかな?」


 「貴方に対する不満ですか?もちろんあります。」


 「えっ、あるの?」


 「山ほどあります。」


 「どの山かな?」


 「目の前に広がる山々です。」 


 "ヒィ、ヒマラヤ山脈じゃん…"


 トレーン・モストルクーニは剛毅な素振りをしているが気の小さな男だった。魔法にも造詣が深く才もあったが方向性は防御一辺倒で万事抜かりなく立ち回ること。まさか愛する妻がそんな不満を抱えてるとは思ってもいなかった。


 「私の不満とこの度のシュミレーションは別物ですのでご安心ください。」


 「どういうことかな?」


 「お伝えしたように、これは私の課題です。三月に一度ほど更新しているものですから、お気になさらずに。」


 「いずれ我々が敵対すると想定しているのかな?」


 「いくら夫婦とはいえ、意見の異なることも、ございましょうから。」


 全てを共有している、と考えていた彼は驚きのはあまりどさりと椅子に腰を下ろす。


 「お強くなりましたね。」


 「わからん。」


 「あなたが強くなればなるほど。戦略は緻密に作戦は大掛かりになり、結果的に被害の大きい残酷なものになります。」


 「君が涙を流すほどか?」


 「今回貴方は毒を煽り自らの命を絶ちました。」


 「ラーバラ、私が悪かった。そんなことが起こらぬように努力するからどうしたらいいのか教えてくれ。この通りだ。」


 「では、まずその間抜けな養蜂家のようなコスプレはおやめください。あなたの結界に入り込める蜂などはいませんし、刺されることもありません。そして蜂蜜をかっこつけてジョッキ一気飲みなどおやめください。男らしくもありませんし、胸焼けの原因になりますよ。退屈なのでしょうが、貴方の暇つぶしに、いつまでも付き合ってはいられない状況になりつつあります。」

 

 ようやく男は自分のタブレットに届いた着信に気がついた。


 「アシュール・アヴァンダン・シエリがこちらに向かっているようだ。」


 「アデラール様達がヒマラヤダンジョンに入ったばかりだと云うのに何事でしょう。」


 「ようやく昔の女と寄りを戻すのかと思ったがどうなってるんだ。」


 送られてきたシカゴで撮られた画像では見知らぬ女と一緒だった。


 「何かありましたね。変装とも思えませんし。」


 もし陸路を取るならば、彼らの土地を横切らなくてはならない。アデラールからは律儀な連絡があった。


 危険度が跳ね上がるカトマンズから空路を取るならば余程の事と考えるべきだろう。


 「でも、なぜだかお金の匂いはしませんね。」


 「しないな。」


 二人は結局のところ仲良しだった。


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