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再生からの死




 「、、、、、時系列の変動システムが解明できない事があの場所を隠匿してきた大きな理由だ。」

 

 ラコーヤの街、探究者ギルドの一室で導師山田光刹とアデラール・シエリ達、ヒマラヤダンジョンからの迷い人は対面を果たしていた。

 

 ラコーヤの街は湖の中心部に浮かぶように作られた石造りの街でイギリスのケント州リーズ城を要塞化したような街だとアデラールは思った。ただ異なるのは霧に埋もれた深い谷の向こう側はヨーロッパでは無く日本だということだ。


 そこでアデラール達は死刑宣告に等しい事実を知らされていた。薄暗い白夜の森では気づかなかったが自分たちの肉体の変化を。明らかに十年いや十五年から二十年の時が巻き戻った。そしてそれが公になればどれほどの混乱を巻き起こすかも想像できる。


 「若返りもあれば急激な老化もあるということですか?」


 うなずく光刹、その答えに一同ため息をつく。アデラールと共にムトリに向かっていたのはS機関の幹部、彼と共にこの旅の後引退する予定になっていた者達だ。数々の死線を超えてきた彼らは自分たちが難しい立場にいることをすでに理解している。


 これは絶対に秘密にしておくべき案件だ。人知を超えた異世界戦争の傷跡と負の遺産から人類を守るため様々な隠蔽が行われてきた 、S 機関の存在理由の一つでもある。敵味方だけでなく秘密の周りには敏感に金の匂いを嗅ぎ取る奴らがいる。アデラールは自分達の与えられる選択肢の危うさに考え至る。


 ヒマラヤダンジョンで行方不明になった彼らが急激に若返り日本に現れた。事後処理には全体からすれば一部かもしれないが多くの人間が秘密を共有することになる。やがてその秘密の全貌にたどり着く者が現れることは必至だ。アデラール達には一晩の出来事だったが下界ではすでに五日経過しているらしい。難を逃れたラクダがダンジョン入口まで戻りすでに大騒ぎになっていると聞きを及んだ。


 不老不死という言葉の前に権力者達はなりふり構わないだろう。


「俺はいいぜ覚悟はできてる。痛いのは嫌だから毒でも煽って来世の夢を見ながら逝くとしよう。」


 そう口を開いたのはグルガン族傭兵部隊司令官クオール・ランガ、波多野爽波の師でもある男だった。


「やはりそうなりますよね、せっかく若返って未練はありますが私の命など些細なものです。」


 大商人バイロン・グレイを先祖にもつマルティム・モストルクーニはS機関の商務部を統括する男で数字をこよなく愛する錬金術師でもある。


「俺自身がヒマラヤダンジョン内での事故死になるとは思わなかったぜ。」


 ミトウ・ドゥゲナはヒマラヤダンジョンマスターで世界的アルペニストの冒険者だ。唯一の妻帯者の彼曰く、妻は彼がいずれ何処かで野垂れ死ぬと信じて疑っていないと笑って言う。


 そしてもう一人紅一点、ドクターでありヒーラーのマリア・ソドムは魔女だ。


 「アシュール チョウセツ・ゲンヤに殺されたいわ。」


 彼女の過激な発言に一度笑い声を上げる。しかし、慌てたのは光刹だった。


 「いや待ってくれ、儂はお前たちに死んてくれとは言っておらんぞ。死のイメージを与えてしまったがあくまでそれは比喩の話だ。しばらくはこの地に留まり街の為に力を貸してくれ。まあ、とりあえずほとぼりの冷めるまで様子を見ることにしよう。」


 「えっ!」


 死地を求める元老人達だったが生きる場所を与えられ戸惑い顔をする。そこで無言を貫いていたアデラール・シエリが満を持して口を開いた。


「先代アシュール アヴァンダン・シエリの幼い死の後、彼のサテライトであった我等は糸の切れた状態だった。幸運にも新たに転生された彼と関わりを持つことになったが途切れた糸がつながることはなかった。」


 鬼気迫る独白は続く



「ところがどうだ、死せずして再生し、我々にとって三人目のアシュール、 チョウセツ ゲンヤの歴史模様に飲み込まれ与えられた復讐の機会と淡い希望に身体の震えが止まらない。こんな私だが受け入れてもらえるかな。」



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