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混沌の入口




 アデラールは近づいてくる三人の男の殺し方を考える 。S 機関のトップは武闘派だった。亡くなった先代アシュール アヴァンダン・シエリの弟として兄の隣で戦うことを夢見ていた遠い日の自分を取り戻したような気分になっていた。


 背後の男の事は気になるが彼が安全を保障してくれたと信じることにする。数千年に渡り S 機関に蓄積された魔道具と戦闘技術を駆使して目の前の危険に排除するかまえだ。真ん中の男の膝を砕き左右の男たちの内臓を傷つけその後でとどめをさす、そんなプランを練り上げた。

 

 彼が立ち上がると右耳あたりをふわっとした風が通り過ぎ濃い影が視界を遮る。そして衝撃とともに三つの頭部が胴体から離れドサリと砂の上に落ちた。


「すまねえ、本当に馬鹿は死ななきゃ治らないと言うが、ちっ、まだ死んでもないか。」


 首を切られ喉を潰された生首が目をギョロギョロさせてあがいていた。


 アデラールはその異様な光景に絶句する。


皆野ミナノ心会シンカイ怒涛ドトウ、こいつらを外に捨ててこい。溶かしちまえ!」


 さらに驚いたことに全く人の気配のなかった暗闇の中から三人の男が現れ、カチカチと怒りで歯を鳴らす首を拾い上げぴくぴくと痙攣する身体を引きずって別の暗闇の中に消えていった。


「察しの通り俺たちは闇の一族だ。」


 闇の一族?ゴリンの言うとおり脳裏によぎったことだが既に否定したことだった。砂漠で闇の一族が生きることなどできない、だが首をはねなられでも死ぬことのない肉体の特徴はまさに闇の一族だ。彼の闇の中での戦闘能力も圧倒的だった。


「座ってくれ。」


 アデラールが再び椅子に腰を下ろすとゴリンは傾き始めた月明かりの中に姿を晒し砂の上に剣を抱きかかえながら胡座をかいて座った。赤と金の混じったような輝きの瞳だが顔立ちは東洋人、体はアデラールの予想に反してまだ少年の様な華奢なものだった。


「うちのお嬢さんがあんたの息子の力を借りたがってんだ。」


「アシュールだぞ、分かっているのか?」


「うん、そうだったな、だがまずいことになった。」


「何があった?」


「あんた達と地下流砂に乗ってムトリまで送り届けるつもりだったんだが、さっきの地震で流砂の流れが変わった。このまま進むには危険すぎる。」


 なるほど、そんなものがあるとはアデラール も思っていなかった。ムトリまでの安全な未知のルートと引き換えに協力を得るつもりでいたのだろう。

 

「おまけにあんたたちの荷物もラクダも流されちまった。」


 それは深刻だった。水も食料も装備も無い状態ではムトリまでたどり着くことも出口まで戻ることも出来ない状況だということだ。


「あぁ、心配いらねい、あんた達の安全は約束通り俺が保証する。とりあえず着いて来てくれ。」


 と言いながらもゴリンは一向に立ち上がろうとはせずただぼーっと考え事をしてるようだった、そこへまた別の男が現れた。


「カシラ、」


「どうだった?」


「やばいな、何とか三人は助かりそうだが女の子ばかりだ。」


 ゴリンは頭を抱えて小さくなる。


「両方とも失敗?」


「だな、それと、、」


「まだあるのか?」


「あと二つほど、心会が首を持って逃げた糞野郎には違いないが実兄だからな。」


「そして、もう一つ、そいつが問題なんだろう?」


「そういうこと外でイライラしたアリス姉が待ってる。」


「ッ、詰んだ?」


「だな。」


 呆然として黙り込むゴリン、まったく何のことだか分からないアデラールは問いかける。


「少し私にも説明してもらえるか、そしてここはどこなんだ?」


「すまねい、俺達はあんたを安全にムトリに送り届け、ヤマダノオヤジに接触してきた異世界からの亡命者の橋渡しをするつもりだったが、まあ大失敗ってわけさ。」


 まあ、要するにカオスに放り込まれたと言うことだなとアデラールは理解する。


「ここはラコーヤだよ。さて何から片付ければいいと思う?」




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