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ヒマラヤ迷宮




 アデラール・シエリは目隠し、猿轡さるぐつわ、で椅子に座らされ両手は後ろに縛られた状態で意識を取り戻す。すべての感覚を覚醒させるが情報は一切入ってこない。意識が戻ったことを悟られぬよう身動きはせず、これまでの出来事まとめていく。


 ヒマラヤダンジョンに潜りテルハ砂漠へムトリのオアシスへ向かっていた。ムトリは異世界との境界線の街でオールテット鋼を産出する唯一の場所だ。今年の取引の契約と族長であるマゼルノ・パオワ、古い友の引退の儀式に参加するため旧スタイルのキャラバンを組んでゆったりと砂漠を渡るつもりでいた。自身も最後のダンジョン入りだと考えている。S機関の代表を辞して義理の息子であるアシュール アヴァンダン・シエリを影から支える為の準備も最終段階に入っていた。


 ニ日目の夜のことだ魔物が活動を始めるギリギリの時間まで移動を続けラクダを休ませるタイミングでその日の行程を終了する。荷を下ろし結界を張り、食事の用意を始めた時地震が起こった。ヒマラヤは活発な地震地帯だ。


 そして、人間のそれとはベクトルが異なるが今も成長を続けている。古い大陸がめり込んで隆起し続けているのだ。震源地が近かったのだろう、もろに被害を被ってしまった。足元が崩れ落ち空洞になっていた地下へと引きずり込まれたようだ。大量の砂と共に流れ落ちたため、ダメージは少なかったが月明かりの中、確認できたのはそこが人工的なムトリの地下旧市街のような造りの場所だった事だけで記憶はそこで途切れる。


 突然だが目隠しが取られ猿轡が外され後ろ手に縛られたロープのようなものからも解放された。僅かに月明かりが入る部屋は不確かだが地震で崩落した場所ではないようだ。


 「さすがだなシエリ卿、聞きしに勝る胆力だ。目覚めているのだろう?」


 背後の闇の中から声が聞こえてきた 。アデラール・シエリはそう言われたが全く気配の感知できなかった相手に内心戸惑っていた。さらに、かなり遠く離れた場所からだが、人の断末魔のような悲鳴がいくつも聞こえて来る。背後の男が舌打ちをした。


「心配いらない、貴方に危害を加えるつもりはないので安心してくれ。」


「仲間たちはどこだ?」


 「彼らも心配ない俺は身分が低いので最低限の事しか教えられていないがこの身を引き換えにしても安全を保障しよう。」


 身分が低い?まさかとアデラールはいぶかしむ、これほどの威厳と言葉に説得力を持つ男が身分が低いとは到底思えない。


「先ほどの悲鳴は何だ?」


「アクシデントだシエリ卿、もちろんあの悲鳴は貴方の仲間ではない。」


「説明してくれ。」


「その前にシエリ卿、言った通り俺は下賤の出だお偉いさんとの会話に慣れてないんだ。」


「気遣いは無用だ。」


「ふう、助かったぜ。さっきの悲鳴はあれだ、別の奴らだ。貢物だって話だったんだ。あんた達が転がり込んできたから、あの馬鹿どもが興奮したらしい。」


「君は何者だ、目的は何だ?」


「そうだった、すまねえ、俺の名前はゴリン元々"価値のないもの"という意味らしいがそれじゃああんまりだって言うんでヤマダノオヤジがその名に違う意味を与えてくれた。まあ、そっから俺の人生はツキまくりってやつでヤマダノオヤジには感謝しかねぇって言うわけさ。」


 ようやく相手の名前を知ることができた。なかなかのタフネゴシエーターだとアデラールはちょっと楽しい気分になる。背後の暗闇の中から未だに姿を現さない彼がとびきり危険な奴だとは承知しているが。


「おいゴリン下がれ、こいつの事は俺達に任せておけ。」


 月明かりの中を血の匂いをプンプンさせた三人の男達がやって来た。こちらは明らかに相手にしてしたくないタイプの奴らだった。己のレベルの低さを隠すこともできない愚か者だ、アデルアールは即座に男たちを殺す決意をする。優位な立場にいると思い込みアデラールが武装解除されていない事にすら気付いていない。


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