祭りの後 聴雪
祭りの後の出来れば、あまり味わいたくない。あの刹那い気分に心を支配されながら部屋に戻る。そんな陰鬱な痛みを吹き飛ばしてくれたのは部屋の中に積まれた《《例》》の素材だった。
三女が中学生の頃から狩ってきたと言う魔物の素材や集められた鉱物、植物、種子の標本は幅広にユニークでどうやって手に入れたのかも想像できない代物も多数含まれていた。
その素材をさらにバランスよく姉妹別に仕分けされて三つの山に、その知識と背後にある論理的解釈も推測するに見事なものだとユキは感嘆の声を上げた。
それが彼女達の特徴を更に深く掘り下げるきっかけになりユキはイマジネーションを拡大展開させていく。
鍛冶屋砦で手に入れてきた新たな素材を加える事でこれ以上の素材探しは不要だとユキは結論付ける。
砦のコンビニ11-7の秘密の在庫部屋は《《素材マニア》》にとって垂涎のレア物が眠る宝の部屋だった。
自らを"偽アリス"と名乗る店長はユキのプロフィールを鑑定すると、悲鳴を上げ諦めたように横たわり股を開いた(本人談)。実際は、その不思議の国を開放してくれた。
彼女は"深淵の魔女"で在りアナリスト、付き合い方は難しいが全てを受け入れる覚悟を持って付き合えば好ましい存在だ。
波多野爽波の率いる探索策定部隊に推薦すると伝えると。
「"幼馴染みから何度も何度もお医者さんごっこと称され身体の隅々まで弄られ観察され、やがて十四歳で処女を奪われ三十分で二十回くらい、立て続けに絶頂を味わえる身体に仕込まれたと思ったら、突然飽きたと言われ捨てられた気分"」
わけのわからないことを一気に捲し立てると彼女は泣きながら出て行った。ユキはやはり"深淵の魔女"は複雑で難しいなと考えていると、外で待っていた最悟君が店長代理に任命されました、と店に入って来たのでそのまま。心ゆくまで店の在庫を吟味堪能させてもらった。
もしかして、その自分勝手な幼馴染の男役が自分だったかもしれない、と自身を疑いかけるがユキは自分が飽きたからといって幼馴染の彼女を捨てるような人間ではないと思い直し、ほっとする。
持ってきた商品もちゃんと新店長代理の最悟君に伝票を切ってもらったし、多少吹っ掛けられても彼女の言い値で支払うつもりだ。
鍛冶屋砦のみんなが命がけで集めた魔物の素材、特殊な鉱物や植物はこちらの側の世界でも計り知れない価値を持っている。だが、こちら側に存在しない以上、表には出せない曰く付きの品物扱いだとも言えた。
欧米のS機関やローズ財団の様な巨大な組織では資金調達のための解析が進み一部で触媒や薬品として商品化されている。しかし特許絡みの問題で度々法廷で争われるのが現状だ。遺伝子に影響を与える副作用も今の時点確定出来ず多くの物が実用化が先送りになっている。
何を隠そう原野聴雪こそがこの分野のパイオニアなのだが残念なことにアシュールとしての記憶と共に知識も欠落していた。彼が世界中を巡り歩いているのもこういう理由が存在しているから、知識の補完だ。
現在彼が開封しているのは一部の武具と彼自身が使用する薬品に限られている。それだけでも世界中の魔女から追いかけられる原因になる。そして当然ながら彼には魔女たちを虜にする秘密がある。
「さてどうしよう。」
部屋には素材だけではなく玉鋼やオールテート鋼が鍛冶場から運び込まれている。夜も更けてきた、環境は整っている迷いもない。星の位置なども確認したいがその調整は作った後からでもできる。月は朔だ闇の深さを感じる夜に邪魔するものはない。だが危険な時間帯でもあった、ここの結界の裏側に立つ者もいる。
妖かしが聞き耳を立て風を読み暗闇の中で目を輝かせ彼を待っている。祭りのあとには次の祭りが待っている。ただそれだけのことだと鋭い牙を光らせユキに誘いをかけてくる




