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鍛冶屋砦 4



  やがて宴は終わりを迎える。


 鍛冶屋薔薇樹カジヤバラキの話では、暫らくの間ラコーヤのロックダウンが戦師いくさし山田光刹から発動され、その影響で狩りを中止して予定を早め引き上げてきたこと。

 

 また、波多野爽波はたのそうはかしらとした十名の探索策定部隊インテリジェンスユニットの編成の要請があった事が伝えられた。


 「最悟は今回メンバーから外してくれるかしら、暫らくの間ユキ様の従者を任せたいの。」


 「なるほど、適役ですな。」


  猫をかぶったバラキが子煩悩な母親のふりをしてユキの出方を伺っていた。


 「従者はいらない、俺は一人が好きなんで。それに教えることなど何もないよ最悟君はもう一人前でしょう。」

 

 さすがのバラキも驚いた、こうもあっさり断れるとは思っていなかった。波多野も最悟を適任と今一度ユキに推薦しようと考えたが、確かに彼の言うとおり、最悟は戦士としてほぼ完成形で後は経験を積むこと。失敗から戦いのことわりを見出していく段階だ。それをアシュールに押し付けるのは不敬と取られてもおかしく無いと考え至り口を噤む。


 「三人で話せるかな?」

 

 冷ややかなユキの態度にバラキは自分がしくじったと悟る。男の懐に簡単に入れたことに過信してアシュールの力量を見誤ったと心の中で歯ぎしりをする。


 場所を変え平伏する二人を前に座るユキは無言のまま考えを巡らせていた。ゆったりと構えていたが自分に与えられた時間が思いのほか短いことに焦りも覚える。彼の行動にいらぬ口出しをしたこの二人に罰を与えるのは容易いがそれは彼の本意ではない。

 

 鍛冶屋薔薇樹カジヤバラキは彼の縁者では無くユキのパートナーである《《女》》のサテライトだ。


 聖獣パミオンの瞳は金色に輝き未来を垣間見た彼からは確かな道筋が示された。師光刹から持たされた記憶の断片もおそらく彼女の力によるものだろう。


 「バラキ見事な舞だった。道は示された、感謝する。この借りは何返いずれかえす、しばらく貸しておいてくれ。」


 「あれは私があなた様に貢いだものお納めください。それに十分な予算を付けていただきました。」


 「まあそれも俺の問題だ、とりあえずそのつもりでいてくれ。」


 「仰せのままに。」


  「もう畏まるのは止めてくれ、未熟な俺の責任だ、つい、迂闊に接近を許してしまう。今朝も寺の始乃に叱られたばかりだというのに。」


  砦にも噂は流れてきている。三姉妹の一人がアシュールではないかと。まだ若い彼女アシュール原野聴雪が娘をアシュールに変えるのだとバラキの古い記憶がそう伝えている。

 千年の間、幾度となく娘はその身を開花させること叶わず朽ちて行った。バラキも遠くでそれを見ながら涙を飲んだ。聴雪憎しの心が瞳を曇らせた。彼女は次はないと刻み込む。


 「申し訳ないが従者は必要ない。今更慣れないことをする余裕はないのだ。だがもし最悟が鍛冶の手伝いが出来るなら頼みたい。」

 

 それを聞き、ようやく二人はほっとしたようだ。最悟は派手さはないが粘り強く仕事をこなすタイプだと波多野はそう言って胸をなでおろす。


 「では、後で鍛冶場をを見せてもらいたい。いくつか必要な物があって、もし手持ちが有れば分けてもらいたいと思っている。聞いていると思うが国土結界の張り直しの儀式が近々行われる。それまでに鍛えておきたいものがいくつかあるんだ。」


 「なるほど、あと必要とあらば皆に手持ちがないか聞いてみましょう。」

「よろしく頼む。さて、この話はここまでにして、詳しくは光刹おやじから聞くと思うが近々ラコーヤに亡命者がやって来る動きがあるらしい。」


 「あちら側からの亡命者ですか?」


 「そうだダンジョンを越えて来るのなら大物だ、心当たりがないでもないが、それを調べるのが波多野の仕事になる。」


 「お受け入れなるおつもりですか?」


 「その判断材料を集めてもらいたい、光刹おやじはそのつもりでいるようだが一つ大きな問題がある。」

 

 バラキ、波多野は息を飲む。これがアシュールの力だと、彼らは嵐だ、台風の目と表現する者もいる。近づくものを容赦なく歴史模様へと引きずり込み、力なきものはすり潰される

 つい先ほどこの砦にやって来たばかりだというのにこの地は既に暴風圏内だと二人は手に汗を握り、穏やかだった昨日までの日々を懐かしく感じるのだった。



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