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旅の姉妹 4



 早急に対処しなくてはならない案件があると聞いてここまでやって来た。歴史模様は彼らに命のやり取りのステージおも用意し取り込もうとしたが、少しだけマシな方に枝分かれしてくれた。

 

 シエリはエブリン・エクスローズの面影を記憶の中に探そうとするが、やはりそこには何もない。突然蘇る小さな記憶の断片に少しの期待を寄せるが、幼い頃渡された一枚の写真以外に彼女の手掛かりになる物は無かった。

 

 それは遠くから撮影されたエブリンと言われる十歳ほどの少女の後ろ姿で豊かな赤毛の髪が写真の中でもふわふわと揺れているように見えた。

 

 第二次世界大戦の戦時下の雰囲気が写真から伝わってくる。彼が生まれる以前のものだが、シエリは少女が写った古いパリの街角を、その場所がどこだか知っていた。

 

 シエリも早急に対応する必要のある案件を抱えていた。出来る事なら、たった今この場から走って行きたいほどだが、心を乱してはならないと自分に言い聞かせる。迷っているダーダートーサを見てシエリは珍しいなと思った。 


 「今も昔もあなたという存在は私たちの想像を絶します。何事にも興味を持たないはずの私たちが心揺らされているのです。久しぶりに出会ったアシュールを舐めていたとしか言いようがありません。」


 「日本の古い諺だったか快刀乱麻を断つというイメージが君にはあったのだが、余程悩ましいことなのだな。」

 

 自分の発した言葉が謝罪だった、のにも驚いたが、すでにこの男は天命の用意したステージを抜け出している事にダートーサは感動すら覚える。

 

 エブリン・エクスローズの存在を少しでも危うくする男ならば処断するつもりで居た自分達の狭量に怒りも感じる。だがけじめは、つけてもらわなくてはならない。男は過去に一度彼女を裏切っている。



 「サルクマーナフと思われる遺跡が発見されました。あなたが先ほど見たワッセナーが届けた夢の始まりの場所です。」

 

 なるほど、そういうことだったのかと。シエリは新しい旅の始まりが、自分が犯した決して許される事の無い罪の贖罪から始まるのかと絶望に近い感情に打ちのめされる。それを見た四人の魔女たちは男の心の劇的な変化に心痛める。だがそれを癒す事の出来るのは彼女達ではない。


 「カリーシン冷たいと思われるでしょうが私達には興味のないことです。そんな大昔のことなど。」


 「カリーシン私達の興味は一つだと、ご理解していただいたはずです。」


 「カリーシン我々は貴方の口からお聞きしたいのだ。」


 「カリーシン私達は貴方が恐ろしいの、分かっているでしょ。」

 

 ダートーサがグーネリがマイコがワッセンナーが圧を掛けてゆく。だが、それはシエリをエブリンの一部として守りたいという気持ちと彼女たちが絶対に譲れない一線を明確にしたものだと彼は考え至る。そして誓約の言葉を唱える。


 「今も昔も君達の興味は一つだ、エブリン・エクスローズの安全こそが全てだ。俺は"嘘偽りなく己の持てる全てを尽くして"彼女を守ると誓おう。」

 

 張り詰めていた緊張の糸が音を立てて弾けた。長い静寂が始まる、ここにいる五人の人間の望んでいる心の風景は異なって居ようとも思いは一つだと信じよう。そう考えながらダートーサは瞳を閉じて75年前の悲劇は回避できたと、ひとまずピリオドを打つ。


 だが問題が解決したわけではない、山積みの至急対処しなくてはならない案件を前に笑顔はない。

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