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旅の姉妹 3



 心の中の息を呑む音が聞こえそうなほど静まり返った部屋の中でダートーサは意を決したように言葉を発する。


 「拝見します。」

 

 "軽い" ダートーサは先ずその剣の軽さに驚いた。西洋風の両刃の剣だが、おそらくこれは西洋のものではない。鯉口を切り鍔元を確認するとハバキが、さらに剣を抜くと美しい刃文が見える。地金は玉鋼と言われる日本の刀に使われるもの、そこにオールテット鋼と金属ではない素材が練り込まれている。だが、その知識はこれを作った人物のみが知るものだろう。

 

 ダートーサは剣の目利きと同時に男を考えるアシュール アヴァンダン・シエリ、かってのエブリンの愛するパートナーであり、アシュール最高の戦士と呼ばれた男だ。"かっての"と前置きを敢えてつけたが、エブリンが今もこの男を深く愛し引かれていることを知っている。千年もの別離が彼女の胸の炎をさらに激しく燃え滾らせている事を知っている。

 

 今も昔も、とてつもなく危険な男だ。そして今も昔も心から血を流している可哀想な男だ。柔らかく優しい、それはアシュールの特徴だと言っても良い。人間の進化に必要不可欠なものなのかも知れない。それ故の苦悩も少なく無い。だが、それは今の彼女達には必要のないものだ。できればこの男を滅することはしたくない。姫様の悲しむ顔は見たくない、だが彼女達に与えられた使命は一つだ。エブリン・エクスローズの安全こそが彼女たちの興味のすべてだ。


 「この剣の出所はグレイー族だが千年前この剣を鍛えたと言われているアシュールの転生も確認されているらしい。」


 「日本のアシュール チョウセツ・ゲンヤですね。私たちも一度接触を試みましたが、すんでのところで逃げられてしまいました。」


 「魔女と名の付く女なら、皆欲しがる男だ。」


 「私も仲良くしたい。」


 「私はお顔次第ですね。」

 

「しかし、なぜ今この剣を私たちに預けたのです?ご自分の立場はご理解してるはずですが。」

 

 ダートーサは首をかしげ理解できないという素振りで問いかけてきた。


 「そうだな、自分の過ちを改めるためということか。」


 「どういうことです?」


 「俺はここにある種の対決をするために来たと思っていたが間違っていた。さすがに命のやり取りをするとは思っていなかった。」


 「それこそ勘違いではありませんか?」


 「そのようだな、だが俺は戦いをシミュレートしてみた。二人なら道連れに出来るなと思っていたが、その剣をお前が手にした時点で一番困難なお前の首を刎ねる事が出来る。三人もしかしたら四人共殺れるかもしれないと確率を上げている。」

 

 ダートーサは手にした剣を見つめる、確かにこの剣を握っている以上自分の初手は一瞬遅れる。それにこの剣に何か仕掛けがあればもうこの時点で自分は終わっている。


 「冗談だ、ダートーサ納めてくれ。」

 

 ダートーサは上目でシエリを睨み付ける。


「40時間以上飛行機に揺られ、心を夢で折られ、車中では記憶にない思い出話に揺さぶられ、追い詰められて俺はクタクタだ精一杯の意地悪だ許してくれ。」

 

 そう言うとシエリはダートーサから剣を受け取り一番間合いの遠いグーネリへと剣を投げて寄越した。

 

「グーネリ後でお前の新しい剣を見せてくれ。」

 

 そして再びシエリはダートーサに向き直り言葉を続ける。


 「さっきも言ったが俺は旅を続けなくてはいけない。」


 

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