ラコーヤ 翌朝 聴雪
翌朝、目を覚ますと上から顔を覗き込まれていた。ユキは目を細め互いに暫く観察しあう。女子高生だ、可愛い、昨日じっくり寝顔を見られたことえの仕返しなのか?ならば、もうこれでチャラでいいのか?利息みたいなものが発生していて、、などとユキは長時間揺らされ続けた動きの悪い脳で考える。
感情のない瞳が少し気になるが、それが今時の女子高生なのにだろう。黒髪を短く刈り込み精悍な雰囲気、今でもとびっきりの美少女だが、年齢を重ねるごとに美しさが増していくそんなクールな顔立ちだ。そして決してユキは口には出さないがダサいスクールジャージがとても似合っていると思った。
少女はポケットからバナナを取り出すとそれを剣に見立て踊る、ひとしきり剣舞を披露して、その靭やかさを見せつけると手にしたバナナをユキに手渡し言葉を発することなく部屋を出て行った。
「なるほど刀が欲しいのかな、、、。」
少女の所作は片刃の剣のものだった、バナナをくれたのは朝食の時間だと教えに来てくれたのだろう。
ユキに与えられたのはスタジオタイプの20畳ほどの洋室で小さなキッチンとシャワールームが完備されていた。昨晩は長旅の疲れのため夕食もとらずに床についた。久しぶりの穏やかな深い眠りだった。女子高生に寝顔をガン見されたのはショックだったが同居人とは仲良くしていたほうが良い。ユキは顔を洗い着替えを済ますと食堂に向かう。
確か朝のお勤めは五時から冬になったら六時から朝食は七時から八時なるべくその時間内に済ましてくれと言われていたような気がするが現在時刻は七時五十五分を少しを回っている、ユキには始乃の微妙な顔が想像できた。
部屋を出たとき渡り廊下の向こう側を次女の巫の娘が横切る、一瞬こちらを見て睨みつけられたような気がしたが勘違いだと思うことにした。食堂に到着するとユキの想像していた通りの顔を始乃から向けられてしまった。
「始乃さんおはよう、すまん寝坊した。片付けを手伝うから今日は見逃してくれ、腹が減った。」
「そんなアシュールの方に片付けの手伝いなど、、、」
顔を赤らめそう言いながら始乃はご飯をよそってくれ味噌汁温め直し焼き魚や香の物を出してくれた。いや、こんな美人さんの横で新婚さんのように洗い物のお手伝いができるなんて、それこそ、ご褒美ようなもんじゃないか、とユキは心の中でニヤけるが決して顔には出さない。
「アシュールの方は女の扱いもお上手なのですね。」
「いや、俺は気が小さいだけだよ。」
始乃はお茶を入れ満足そうに朝食をいただくユキの前に座るとテーブルの上に置かれたバナナに目を留める。
「あら、気に入られたようですね。」
ユキは首をかしげる。女の子が食べ物を与えてくれるのは仲間として認められたことだと説明されるが彼にはいまいちピンとこない。
「武器を作るようになってるからその前払いかと思ったよ。」
始乃の瞳が僅かに赤みを帯びて輝いたような気がしたがユキはそのまま食事を続ける。
「どんなものを作っていただけるのか楽しみですわ。」
「あー、もうできてるよ。」
えっ、始乃はまさかという顔で首をかしげる。




