財政難な世界線の桃太郎
むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。
しかし、おじいさんは出稼ぎに行っているのでいません。
おばあさんはしぶしぶ芝刈りをして、その帰りに川で洗濯をしていました。
すると川上から、大きな桃がどんぶらこどんぶらこと流れてきました。
おばあさんは、5日分の食費が浮くぞ、と思って桃を家に持って帰りました。
包丁が無かったので、手刀で桃を割ると中から元気な男の子が出てきました。
おばあさんは、桃がスカスカで可食部が少ないことに落胆しました。しかし、男の子は労働力になるのでは、と思いました。
おばあさんは、桃から生まれた男の子を桃太郎と名付けました。
桃太郎はすくすくと育ち、いい労働力になりました。
ある日、桃太郎はいいました。
「鬼を退治して、財宝を手に入れてきます」
桃太郎は特に何も持たずに出発しました。桃太郎家は食費を切り詰めているところなのです。
鬼ヶ島に向かう途中で犬と出会いました。
「桃太郎さん。今から何をしに行くんだい」
「鬼退治に行くんだ。犬さんもお供してくれないかい?」
「給料がなかったらお供できないよ」
桃太郎は特に何も持っていなかったので犬とは別れました。
その後、桃太郎は猿やキジと出会いましたが、無賃労働をしてくれる心優しい動物はいませんでした。
桃太郎は鬼ヶ島が対岸に見える浜辺まで来ました。
しかし、船を借りるお金なんてありません。
仕方ないので、桃太郎は泳いで渡りました。
鬼ヶ島に着いた桃太郎はすでにへとへとです。
でも、そんな日は今日で終わりだと思うと力が湧いてきました。
鬼と出会いました。
刀を持っていればよかったのですが、もちろん刀なんて高級品は持っていません。
桃太郎はおそろしく早い手刀で鬼を攻撃しました。
鬼は桃太郎の手刀を見逃したので、やられました。
桃太郎は鬼のアジトで財宝を探しました。
しかし、財宝はどこにもありませんでした。鬼も同じく財政難なのです。
桃太郎は鬼と和解し、共に頑張ることを誓い、おばあさんの元に帰りました。
めでたしめでたし。