表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/39

25. それぞれの優先順位

※連休中に何話か書き溜めることが出来たので、ストックが無くなるまでは1日2回、更新します。

(一回目は朝か昼、二回目は夜になる予定です。読み飛ばしにご注意ください)


 騎士団の会議室に、ルーク騎士団長をはじめとした団員達が招集される。


 遅れて、近衛騎士団から応援として参加したジェイドも加わり、オークション会場での配置や逃走経路等を余念なく確認の上、捕縛に失敗した場合の潜伏先まで洗いあげていく。


「先日の差押品を鑑定したところ、指摘があったものはすべて偽物であることが分かっています」


 ()()が起こった場合、関係する物品の差押さえが必要となる。


 真贋鑑定が可能な有識者として参加した、ラーゲル公爵家次男、イグナス・ラーゲルが報告書を読み上げた。


 報告書にびっしりと記載されているのは、ミリエッタがルークに連れられ、古物商等に行った際に差押えをした品々である。


 肉眼で瞬時に判断したと聞いていたため、その真偽は良くて五割だろうと踏んでいた隊士たちが、その報告にどよめいた。


「今回オークションに参加する商会のうち、摘発対象候補となっているのはこちらです」


 物品の流通経路を精査し、洗い出しをおこなったオラロフ公爵家嫡男、キール・オラロフが、摘発候補の商会を明示する。


「オークションの結果次第では、販路の制限をおこなう必要があります。ラーゲル公爵家による真贋鑑定が終わり次第、必要事項について各拠点に通達予定です」


 オラロフ公爵家がもつ国内最大の商会は、特定航路や陸路の権益を保有する。


 商業組合の判断を待っていると時間が掛かるため、緊急を要する場合は、オラロフ公爵家の強権を発動し、販路を制限するのだ。


「ジェイド、今回名前が挙がった商会のうち、何か思い当たるところはあるか?」


 ルークの問いに、ジェイドはリストを手に取り、目を落とす。


 なお、先日のトゥーリオ公爵家での一件については、お互い意地を張ったまま、まだ仲直りが出来ていない。


「二番目に記載されている『エルドール商会』ですが、昨年、販路拡大に係る申請があがっていたと記憶しています」

「……承認はされたのか?」

「いえ、拡大の申請理由に『疑義あり』として、オラロフ公爵の名前で取下げの要請が出されました」


 ジェイドの言葉にキールが、「間違いありません」と、合の手を入れる。


「こちらの商会ですが、以前も一度疑わしい動きがあったため、我がオラロフ公爵家でマークをしてはいたのですが……なかなか尻尾を出さず、決定的な証拠が掴めておりません。今回、何か動くきっかけがあれば良いのですが」


 キールの言葉に、ルークがちらりとジェイドを見遣る。


「本商会は、エルドール伯爵家のものだが……確かその息子が、ミリエッタ嬢に執心なのではなかったか?」


 敢えてその情報を隠したジェイドに、ルークは問いかける。


「ミリエッタ嬢の帰路の警護で、お前がつぶした内の一人だったと記憶しているが」


 だんまりを決め込もうとしたところに図星を突かれ、ジェイドは眉根を僅かに上げた。


「……どうだ? ()()()()()()()()……ミリエッタ嬢の馬車を度々待ち伏せし、力ずくで手に入れようとして、お前に腕を折られた男の名だ」


 矢継ぎ早に述べていくルークに、これ以上はと溜息をつき、「その通りです」とジェイドが答える。


「ですが今回はイグナスの補助として、真贋の目利きを手伝うのみと聞いています。以前も一度お伝えしましたが、いくら有能とは言え彼女は一般人です。看過できません」


 ルーク貴様、また巻き込むつもりか?


 一触即発の状況に、居合わせた隊士たちが身構える。


 この中では唯一の十代、若干十六歳のイグナス・ラーゲルが、心配そうに二人を見た。


「巻き込むのではなく、()()なのだ。証拠不十分で立件が難しい以上、別件で拘束し、自白の足掛かりとしたい」


 いくら言葉を連ねても納得しそうにないジェイドに、やれやれと独り言ち、下のほうにあった書類を引っ張り出すと、ポンとジェイドの前に(ほう)った。


「いいか? 本件に係る被害総額は、デズモンド領が徴収する市民税の実に四割にものぼる。これ以上看過出来ないのは我々のほうだ……ここで潰しておかないと、破産する貴族も出てくるぞ?」


 拳を握りしめ、書類を睨み付けるジェイドに、これ以上は議論不要と畳み掛けた。


「事前にゴードン伯爵の許可も得ている。……今回はミリエッタ嬢にも仔細をお伝えし、協力を要請するつもりだ。それであれば、()()()()()()も異論ないだろう?」


 ミリエッタ嬢の事は気に入っているし、なるべく危険から遠ざけてあげたいと俺も思っている。


 だが、言っただろう?

 デズモンドの人間は、何よりも任務を優先すると。


「ペア交換だ。来たるオラロフ家の夜会で、ミリエッタ嬢に行動を起こしてもらい、オークション会場へは()()()()()()()()と行ってもらう。俺は……そうだな、男女ペアでの参加が必須だから、ティナでも誘うか」


 そう言うと大きく伸びをし、これ以上の反論は許さないと呟いて、ルークは席を立ちあがった。


「ああ、念のため言っておく。お前は外の警護だから、オークション中、ミリエッタ嬢の近くにはいられない。……その代わり何か起きたら、一番に駆けつけろ」








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ