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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

誰か私に正解を教えて!!

この物語はノンフィクション風のフィクションです。


実在人物、団体、その他すべてがたぶんフィクションです。



マルミより皆様にご報告があります。


このたび、お付き合いしている彼君を袋叩きにすることに決めました♡


SNSの私の日記にも返事をくれないしー、デートのお誘いもしてくれないしー、他の男の子と仲良くしてるところを見せても嫉妬もしてくれません!

私のSNSの日記を見て、彼君がコメントをくれるのを健気に待ってるのに、あまりにも無反応で冷た過ぎるので、彼君に内緒で付き合ってる彼君2号にお願いして、彼君に私の前で土下座してもらい、反省を強く促してもらうなどしましたー♡


は?バイトより彼女優先だよね?

バイトと言いつつ、浮気してるんでしょ。絶対に。許せない。


反省したように見えた彼君ですが、やっぱり私よりバイトが大事みたいで、浮気確定みたいなので、土下座させた翌々日ですが、ネットのみんなにお願いしてネットで穏便に袋叩きにしてもらうことを決めました♡



証拠はありませんよ?

でも、彼君が他の彼君達のように私の日記にコメントをくれなくなったのは明らかにおかしいよね♡

明らかに他の女がいるのでなければ、彼女の私にコメントしないなんておかしいんだから♡


度胸試しと、彼君のバイト先に突撃した子が彼君のお仕事をいかに邪魔したか自慢していてー、アドレス交換した彼君の家族情報をにちゃんねるってとこにあげたりしたりー、彼君の実家宛にみんなでふざけ半分で脅迫状を届けたりー、彼君の携帯の電話番号やメアドを女の子の名前で出会い系に登録して出会い系攻撃をしてくれてー、彼君をたくさん懲らしめてくれました♡


その結果、彼君の一家が離散したとかー、彼君自○しかけたちゃったりとかしたみたい(てへべろ)


私にした仕打ちを思えばまだやりたりないくらいだけど、とても反省してるみたいで、彼君のメンタルが落ち着いたかなーって頃合いを見計らって話しかければいっかなって(笑)




でも、彼君がまったく口を聞いてくれなくなったの。

なんでだろう?私、なんにも悪いことしてないよ?




三之宮マルミ

獅子座 A型、職業は現役JK

彼女は自分の思い通りにならない人間にはとても無慈悲になれる鋼鉄の女だった。




キーンコーンカーンコーン


マルミは今日も彼君を追いかけていた。


「自分から話しかけるのはルール違反♡愛され女子というもの、男の子から話しかけられるのを待たないとだめ♡」


SNSの占い結果には必ず従うマルミは、周りの女友達が言っていた、意中の男を絶対に落とすというモテ行動を鵜呑みにしつつ、基本行動である彼君の尾行をしていた。



誰かと待ち合わせしているのか、立ち止まった彼君に見つからぬよう茂みに入り、彼君の背後に近づく。


「(友君……)」


彼君と待ち合わせしていたのは男友達の友君だった。

待ち合わせが女だったら殴りかかってやろうと思っていたマルミは安堵のため息をこぼす。


「……冷めた」

「おいおい。久しぶりに学校来たと思ったら、どうした」

「あいつに監視され続けて頭がおかしくなりそうだ」

「なんだ。まだ、SNS監視されてるのか?」

「ああ。律儀に毎日足跡も残すし、日記を書いた直後には必ず見ましたとコメント残してくるし、いい加減病みそうだ」

「それはまたご愁傷様。完全に頭の病気だな」

「俺も頭の病気になりそうだ」

「言っても聞く性格ならな……」

「だな……」


なぜだがわからないが、彼君も友君も声からとても疲れているような気がしたが、2人とも学校に来てるし気のせいだと思うことにした。


「いっそ、ブロックするか、SNS退会したらどうだ?」

「そうだな……それもありだな……」


「(う、嘘!?彼君がSNSやめる!?)」

マルミとしては彼君にSNSを辞められるととても困る。

それは、マルミの彼君の情報元はSNSの彼君の日記が全てで、辞められたら彼君のことがなにもわからなくなってしまうからだ。

「(辞めないで!彼君!)」

しかし、マルにはSNSを辞められる以上に焦ることがあった。

「(どうしよ!どうしよ!彼君が冷めたって!)」

一家離散という血の繋がった家族との縁を切るという代償を支払ってまで自分を選んでくれた彼君、同時に反省を示してくれた彼君が冷めた理由がまったくマルミには思い当たらない。


自分のしたことはすべて正しく、間違いなどない。

24時間365日体制で彼君を見守り、日記を書けば即レスして見ていることをアピールし、彼君の性格を知り尽くしていると自負するマルミには、彼君が自分に冷めるなど世界がひっくり返ってもあり得ないことだった。


「すーはーすーはー。こんな時は落ち着いて、彼君の日記を見て、と」


携帯電話のショートカットを1クリックするだけで、マルミの携帯電話の画面には彼君のSNSが表示される。


「ちっ!日記を更新して3分も経ってるじゃない!」


更新されたばかりでまだ見ましたコメントを送ってない最新の日記に舌打ちする。



彼君 15:05:18

『誰かが怒ってるとき、くすりと笑わせられる程度の機転と、機転を働かせる心の余裕が必要だと思う』



「これだ!」

確かに今の自分には心の余裕はない。

この日記は私に対して書いてくれてるもの!優しい彼君のことだから、絶対にそうに違いない!日記のテーマは『自戒』とあったが、マルミの狭い視界には『自戒』など入るはずがなかった。



口を聞いてくれないってことは、彼君は絶対に私のことを怒ってるに違いない!

そんな彼君を笑わせればいいんだ!

今の彼君は心から笑うことに飢えてるのだ!


マルミはそう確信した!


「問題はどんな笑いが最適かよね」


マルミはお姫様気質で、むしろ笑わせるのはマルミに勝手に群れてくる男達のほうだった、

マルミは人を笑わせたことがない。

彼君が好きなお笑い芸人について日記に書いた記憶はなく、どんなネタなら笑わせられるのかマルミは想像がつかなかった。



パコーン。パコーン。ポーン、コロコロコロ。


馬鹿の考え休むに似たりを不言実行していたマルミの潜む茂みの裏では、テニスボールが軽やかに弾む音が響いていた。


「これだ!」


思い立ったら即行動。

頭に浮かんだことを即行動に移すバイタリティの鬼のマルミにとって、テニスと言ったら彼しかいないとばかりに熱い魂を胸に、息を大きく吸ったまま、茂みを飛び越えて彼君と友君の会話に割り込む。


「熱くなれよオオオォォォォォォ!!」


茂みから飛び出したマルミの躊躇のない松○修○の物真似が彼君に炸裂する。


「なんでそこで諦めちゃうんだよ!!もっと頑張れよ!!」


唖然としていた彼君だが、俯き肩をわなわなと震わせているではないか。


「もっと……がんばれよ……?」

「そうそう!その調子!やればできるじゃないか!」


地面のほうを向いて震えつつも、小さな声で反応してくれる彼君に向かって、かつての情熱が戻れと暑苦しいスマイルとともにマルミはハイテンションで彼君を叱咤激励する。


「やればできる!やればできる!やればできる!」

「やれば……できる……?」

「やればできる!やらなければできない!」


とりあえず脳の引き出しにしまってあった松○修○語録を片っ端から彼君にぶつけ、全身を小刻みに震え始めさせた彼のボルテージを煽っていく


「そう!やればできる!」

「やればできるじゃねえーーー!!」


顔をあげた彼君の顔は真っ赤だった。

それはもう鬼のような形相だった。


「てめえ!ぶち殺すぞゴルァ!!」

「なんで!?なんで、ラケット持って追い回してくるの!?」


確実に怒りを笑いに変えた、最高の手応えを感じたのだが、彼君はどこから取り出したのかテニスのラケットを持ち、目を血張らせて追ってくるではないか。


「冷めさせたのは全部テメーのせいだろうがよオオオォォォ!!」


彼君の打ってくるボールを器用に避けながら、なにが悪かったのか全くわからない。


「熱くなれよじゃねえんだよオオオォォォォォォ!!」


というか、なぜいま怒られてるのかもわからない。


「よくも俺の家族をめちゃくちゃにしやがって、絶対にぶち殺すぞゴルァ!!!!」

「まだちょっと時間が早かったのかも♡」


冷めたという言葉に焦ってしまったが、私と彼君は相思相愛♡

マルミは時間を置いて、再度アプローチをすることに決めつつ、テニスコートを突っ切って遁走した。


「待てゴルァ!!逃げんなアアアァァァ!!」






追いかけ回す元気な彼君を見て、友君は呟く。


「やる夫スレの包丁持って追いかけ回すキ○ガイのアスキーアート。あれ、ネタじゃなくガチであるんだな」




致命的なまでに人の心がまったくわからないマルミに告白したがために、地獄を見ることになった彼君。

彼君の平穏を10年以上に渡って脅かし続けるマルミのストーカー人生は今日始まったばかりだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 自分が絶対正しいと信じきっていて、省みることもない人に迷惑をかけられると、どうしようもなく疲弊しますよね。 禍福は糾える縄の如し。この困難を乗り越えたらきっと幸運がまっている……はず。
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