8 仮免練習
仮免講習が始まって少しした頃だった。
小春さんの旦那さんの優斗がこう話してきたんだ。
「小春さん、今日仮免練習しない?」
「え?仮免練習?教習所の先生いないのにできないじゃん?」
「いや、できるんだよ」
「どうして?」
「運転免許を持っている人が同乗すれば練習はしてもいいことになってるんだ」
「そーなのー?」
小春さんはそれを聞いて驚いた。
そして、優斗はこう言った。
「ほら、もう作っちゃったもんね」
それは「仮免練習中」と書かれたA4サイズの紙だった。
「あら…。優斗くん早いこと」
「さぁ、行こうよ~」
こうして小春さんの路上練習が始まったんだ。
この路上練習には黒猫の僕も同乗したんだよ。
僕は小春さんからハーネスを付けてもらった。
僕は優斗の膝に抱っこされて車に乗ったんだ。
小春さんは優斗のレガシィの運転席に座ってみた。
でも、やっぱり座席が低いしハンドルも遠かった。
それを見た優斗は座席を少し前にずらして座布団を1枚敷いてくれたんだ。
そしたら前が見えるようになった小春さんだった。
小春さんはエンジンをかけてみた。
「ブルン」って音がしてそれがとても小気味よかったんだ。
レガシィは少し重たい車のように小春さんは感じていた。
アクセルも少し重たいな?って感じてたんだ。
でも、アクセルを踏むと軽々とスピードが出たんだ。
「じゃ、走ってみよ~」
優斗はすごくご機嫌だった。
小春さんは優斗に聞いてみた。
「怖くないの?」
「うん、別に怖くないよ」
って、言ってる割にはしっかりと窓の上にある取っ手を強く握りしめてた優斗だったんだけどね。
優斗は本当に怖くなかったのかな?って僕は思ってたんだ。
小春さんの運転する車は滑るように一般道を走っていった。
「小春さん、なかなかうまいじゃん?」
「そーかなー?」
そう言われるも、小春さんはとても緊張しながら運転してたんだ。
「どこに行こうか?」
「どこに行けばいいの?」
小春さんは優斗にそう言ったんだ。
「じゃ、K公園の方に行こうよ~」
「K公園ね。わかった」
そう小春さんは言うとK公園へと車を走らせたんだ。
暫く走るとK公園についた。
K公園は山の中にある大きな公園だったんだ。
とても大きな山みたいなのがあって、そこの池にはカメやカモが泳いでるんだ。
そこで、僕は下ろされて、小春さん二人と公園の散歩をしたんだ。
お天気も良くてとても気持ちよかったんだよ。
僕はこの小春さんの路上練習をとても楽しんだんだ。
僕も小春さんの運転は別に怖くなかった。
そうこうしているうちに辺りが暗くなり始めてきた。
「そろそろ帰ろうか?小春さん?」
「そうだね、帰ろう~」
そう二人は話すと車に乗り込んだんだ。
その帰り道、夕方だったので道が少し混んでいた。
信号待ちをしていた時、一台のパトカーがサイレンを鳴らしながら走ってきたんだ。
小春さんと優斗は何事かと思っていた。
そのパトカーは小春さんの運転する車の横を通り過ぎたんだ。
そして、渋滞している先の交差点で止まったみたいだった。
「何だか事故みたいだね?」
「そうみたいだね」
二人はそう話していたんだ。
確かに1台の車が事故ってたみたい。
小春さんはそれを見て「自分も事故には気を付けよう…」って思ってたらしい。
ちょっと暗くなってからの運転は初めての小春さんだった。
小春さんは少し怖かったけど運転して自宅に帰ったんだ。
段々と車の運転に慣れてきた小春さんだった。
小春さんはこの練習で車の運転に自信が付いたのは言うまでもなかった。