4 坂道発進
何回か教習車で運転にしてみたころの小春さん。
「こう毎回教官が変わるとマジで頭混乱する~」
と、考えていたみたいなんだ。
教官によって微妙に教え方が違うんだって。
混乱して当たり前だった。
そんな時、今日担当する教官に会った小春さん。
その教官は年齢で言うと50代くらいに見えた。
ちょっとその人は怖そうに小春さんは感じたんだ。
その日の教習のメニューは坂道発進だった。
坂道を上るのはもちろん、坂道の途中で一旦止まってまた発進するというものだったんだ。
小春さんは頑張って坂道に挑んだ。
坂道を上るだけならクリアできた小春さん。
でも、途中で一旦止まって発進するとなると、アクセルを踏んでも教習車はお尻から坂道を下って行ってしまうんだ。
小春さんはすごい困っていた。
何度やってもやはり教習車は坂道をバックして下ってしまう。
「違う違う!言ってることがわからないのか?」
「はい、その通りにやってるんですけど?」
「じゃ、もう一度やってみて!」
「は、はい…」
そうは言ったものの、やはり坂道発進はできなかったんだ。
そんなこんなで、小春さんは今回ハンコがもらえずに申し送りになっちゃった。
小春さんはとても落ち込んでしまった。
何とかしなくては…。
小春さんは思っていた。
そんな、坂道発進ができなかった次回の講習の時の出来事だった。
今回の教習をしてくれる教官の人は年齢で言うと30代半ばくらいに見えた。
その教官の人はとても感じの良い印象を小春さんは受けたんだ。
「前回、坂道発進ができなかったんだね?」
そうその教官の人は言ってきたんだ。
「は、はい。何回やってもバックして坂道を下がってしまうんです」
「コツがあるんだよ。それを教えてあげるから」
そうその教官は言ってきたんだ。
「え?この先生優しいな…」
なんて小春さんは思っていた。
前回教えてくれた先生に比べたら雲泥の差だったんだ。
小春さんは、坂道発進のコツを教えてもらった。
そして、坂道発進を難なくクリアできた。
小春さんはやっと今回はハンコがもらえたんだ。
小春さんは、この教官がとても気に入ってしまった。
でも、次回はまた違う先生になるんだろうな?と思っていた。
翌日…。
やっぱり次回の講習の時は違う教官だった小春さん。
ガッカリしてしまったのは言うまでもなかったんだ。
小春さんは坂道発進を教えてくれた優しい先生にまた出会えないだろうか?と心ひそかに思っていた。
そして、そのチャンスはそう遠くない日にやってくることを小春さんは知らなかった。