2 入学
小春さんが初めての教習所通いの日。
小春さんはバッグに重たい教科書を沢山入れていた。
そして、優斗はこう話すんだ。
「小春さん、頑張っていってきてね」
「うん、でも優斗くん何だか不安だな…」
「大丈夫だよ」
「そうかな~?」
僕は小春さんの足元で「頑張ってにゃ~」と鳴いた。
すると、小春さんは僕にこう言った。
「黒猫ちゃん、ちゃんとお留守番しててね」
小春さんは僕のことを黒猫ちゃんと呼んでいた。
優斗は小春さんよりも4歳も年下だった。
だから小春さんは優斗のことを「優斗くん」と呼んでいたんだ。
小春さんはとても不安そうだった。
「じゃ、いってきま~す」
「行ってらっしゃい~」
小春さんはそう優斗から言われるとマンションの扉をパタンと閉めた。
小春さんの自宅は横浜市のKニュータウンにあった。
とても緑が多くて住みやすいところなんだ。
僕もハーネスを付けて良く小春さんとお散歩したりしてた。
小春さんのマンションは横浜市T区にあった。
5階建てのマンションで1階は車のディーラーさんになってた。
小春さんはそのマンションの2階に僕と優斗と3人で住んでたんだ。
駅までの緩やかな坂道を歩いて駅まで行った小春さん。
E駅に着くとT行きの電車に乗り二駅先のF駅で降りた。
F駅から線路伝いにI駅に向かって住宅街を歩いてく小春さん。
約10分くらい歩いただろうか?
B自動車学校の看板が見えてきた。
小春さんは「随分と歩くんだな~?」って感じたらしい。
確かに初めて歩いてみるととても遠くに感じたんだ。
教習所の入り口にはたくさんの人たちが吸い込まれるように入っていった。
教習所の扉を恐る恐る押して入っていく小春さん。
中に入ると沢山の若い人たちがいたんだ。
小春さんはこんな若い人達の中でやっていけるんだろうか?と不安に感じていたみたい。
でも、小春さんは40歳になるけど、外見は全然40歳に見えなかったんだ。
30歳そこそこに見られていたみたいだったよ。
精神年齢も本当に30歳そこそこだった。
小春さんはとても子供っぽかったんだ。
小春さんは学科講習の時間割を見てみた。
一番先に学科の授業を受けないといけないと思っていた小春さん。
小春さんは、今日1日で第一段階の学科の全ての授業を受けてハンコをもらうことに決めたんだ。
小春さんは何時間もかけて学科を受けていった。
教室の窓の外を見ると電車の高架があってそこを電車が走っていたんだ。
授業を受けていても春先の暖かさと電車の心地よいガタンコトンという音で危うく小春さんは眠りそうになった。
でも、眠らずに頑張ったんだ。
そして、1日で第一段階の全学科を取り終えて、ハンコをもらった。
それから、実技の研修を受けるために予約を取ろうとしたんだけど、端末の使い方が良く分からなくて困っていた。
すると、そこに受付の女性がやってきたんだ。
「どうしました?」
「予約がうまく取れないんですけど…」
「じゃ、私がやりますね」
そう言いうとその優しい女性は予約を入れてくれたんだ。
「ありがとうございます」
「いえいえ。大丈夫ですよ」
こうして、小春さんは次から教習所内の路上講習を受けることになったんだ。
でもね、学科を1日で全部取ってしまったことが、後に厄介なことになるとは小春さんはまだ知らなかったんだ。