10 卒業検定
小春さんは効果測定に合格してから「はっ」と気が付いんだ。
「そうだ!まだ肝心の実技の卒業検定があったのだ!」
と、言うことにね。
どこか抜けてる感じの小春さん。
本当に卒業検定に合格するのかな?って僕も心配しちゃったくらいだもん。
そして、いよいよ実技の卒業検定の日…。
小春さんは原簿を渡されて数人の女性と共に試験を受けるべく順番を待ってたんだ。
隣の女性と話をする小春さん。
その女性は見るところ30歳くらいの若い人だったんだ。
「今日初めてなんですか?」
「はい、初めてです」と、小春さん。
「私、もう3回目なんですよ…」
「え?3回目なんですか?」
「ええ、なかなか受からなくて…」
「そんなに難しいんですか?」
「私にはとても難しいです」
そうその女性は小春さんに言ったんだ。
小春さんもこんな話を聞くと段々と不安になってきたみたいだった。
その女性は小春さんが見ていた原簿を横から見てこう言ってきたんだ。
「え?毎回一回でハンコもらえたんですか?」
「はい、一回でもらえました」
「いいですね~。私なんて何回乗ったかわかりませんよ~」
そう言うとその女性はため息をついていたんだ。
「私は効果測定がなかなか受からなくて苦労しましたよ~」
「そうなんですか?私は効果測定は直ぐに受かったんです」
まるで小春さんとは正反対だったんだ。
小春さんは学科が苦手だったのだと言える…と僕は思ったんだ。
で、小春さんの試験の順番が回ってきた。
二人ずつ一台の教習車で試験を受けるみたいだった。
小春さんはさっきまで話をしていた女性と一緒になった。
試験官と3人になった小春さん。
試験官は地図を見せてくれた。
走る道順をひとりひとり決めていくんだ。
小春さん達はEコースを走ることになった。
このコースは試験当日にならないと分からなかったんだ。
だから、小春さんは講習でいつも試験コースを走っていたんだ。
試験コースの道順を教えられる小春さん。
でも、小春さんは地図を読むのが苦手だったんだ。
「福山さんは、この交差点を右に曲がって、そこから少し走って左に曲がってそこで停車してください」
「は、はい。分かりました」
と、答えた小春さんだったけど、実は道順は覚えられなかったんだ。
もう一人の女性も今度は小春さんとは少し違う道順を指定されていた。
始めに運転するのは小春さんだった。
「じゃ、始めます」
と、試験官の人が言った。
小春さんはドキドキしながら運転していった。
でも、地図を覚えられなかったので道に迷ってしまった。
試験官から「そこの道の通りを右です」と言われた小春さん。
ドキドキしながら運転していく。
そして、小春さんの運転は終了して、もう一人の女性が運転することになった。
その女性は間違えることなく、指定された道を確実に走っていったんだ。
小春さんは「今回も本当に合格はダメかもしれない」と感じていた。
試験が終わってから試験官の人からこんな話がされたんだ。
「福山さんは本番に弱いね…」
これを聞いて小春さんは今回の試験結果を諦めたんだ。
僕もここまでの話を聞いて本当に結果は無理じゃないかと思ったんだ。
試験結果は仮免試験の結果と同じで電光掲示板に表示されるようになってた。
小春さんの番号は16番だった。
小春さんはかなり諦めてその電光掲示板を見ていたんだ。
暫くするとアナウンスがあって、合格した人だけの番号が表示されたんだ。
すると…。
どうだろう!
小春さんの16番の番号がピカって光って表示されたんだ。
はとても驚いていた小春さんだった。
「やった~!!」
小春さんから歓喜の声が上がったんだ。
一緒に受けていた女性も同じく合格したみたいだった。
二人は一緒に喜んだんだ。
僕もその結果を聞いた時、驚いたし嬉しかった。
こうして小春さんは卒業検定に合格したんだ。
でもね、試験場での最後の学科試験があることを小春さんはまたしても忘れていたんだ。