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アパタイト  作者: 弐鈴
はじまり
4/10

ぼやかした事実


 ドアがパタンと閉じる音がして、気まずい空気が流れた。少なくともハルにとっては重すぎる空気だった。


「あの」

「ハイ」


 サニーの言葉に対してハルは食い気味に反応してしまう。


「あの」

「ハイ」


「えっと」

「エッ」


 サニーはそれを見てハルの緊張を察したのか、少し考える素振りを見せた。その後、傍の机を二回叩いてから喋りだした。ハルはその音に反応してサニーがようやく口を開くタイミングになった。


「薬、飲んでしまったんですね」


 サニーがぽつりと言った。ハルにとってそれはとても冷たい言葉に感じられた。実際にはそうではないのだが。


「は、はい」


「飲まないでって言ったのにーー。あーあ。これでもう人生の終わり! 狂ったままの変人になってしまいますよ~~」


 ハルの体はこわばり、嫌な汗が流れていた。


「ははっ、なんちゃって。今のはなんちゃってって奴です。今のあなたは正気じゃないですか。ジョークですよ。私もあの薬が何か詳しく知らないですし」


「え?」


 その言葉を聞いて、全身の緊張がほぐれた感じがした。


「今とっても良い顔してますよ~! 雨に打たれているときの顔より断然良い顔です!」


 サニーは包帯の巻かれていない方の手の親指を立てた。換気していないのに空気が暖かいものに変わったことが分かる、にこやかな笑顔だった。


「でも、何か理由があって飲んだんだろうなって。そう感じた。っていうより見ちゃったんです。薬の箱を真剣に見つめる君を」


「それは……」


 ハルは目線をそらした。


「なんとなーく察しているんです。腕が変化したことに驚いてましたし……。これは他の人には言わない方がいいと思います。私の中で確信に変える気はないですけど」


「だから、確信していたことだけ言います。多分生き残ったらこう言うべきだと思っていたので」

「助けてくれてありがとう」


「……ああ、なら、良かった……?」


 未だ不安がある中、サニーの明るい表情を見ているとハルも何とかなりそうだと思えた。


「よかったよかった! これからは一緒に働くわけだし、よろしくお願いしますね!」

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