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アパタイト  作者: 弐鈴
はじまり
3/10

再会


「じゃあ、案内してくから、まず着替えるか」

「でも、僕は働くって決めたわけじゃ……」


「ごめんだけど断ることはできないんだ。断ると君は地下施設送りになる。外部からこの都市、ハーズに侵入してきたサンプルは貴重だとかなんだとか技術班の連中が騒いでいるらしい。デミスさんもそれを見越して保護してくれてんだよ」

「そんなこと……僕は頼んでない……です」

 ハルは目を泳がせて言った。


「若いねぇ。そこは同意できるとこでもあるけど。ただ、わざわざハーズまで来てこの後どうするんだ? 何か目的があって来たんじゃないのか。例えどんな目的でも、生きて無きゃ果たせないだろ? だったら、ここで働きながら目的に近づけばいいんじゃないか」

「……」

 無言のハルにベックは笑って言った。

「ちょっと強がりなんだな。俺からのお願いだ。一緒に働こうぜ!」

 ベックは両手を合わせて軽く頭を下げた。ハルは穏便に済ませたいという感じを読み取ってゆっくり頷いた。


* * *


 ハルは研究所という組織の制服に着替えた。黒を基調としたスーツとジャケット。研究所のロゴがあしらわれている。


「おーぴったりだな。じゃ、先に住居に案内するよ」


 研究所の内部は名前の印象とは違って企業のようだった。何か研究しているという風には見えず、制服を着た職員が歩き回っている。


「まず疑問に思ってるであろうことから説明しようか。研究所って名前だけど、創業時はアパタイト研究所って名前で、開発が主な業務だったそうだ。今となっちゃその名前だけが残ってる。年月が経つうちに超巨大企業になって、研究所という言葉はほぼ固有名詞になってるな。業務の幅が広がりに広がって防腐事業を中心としたあらゆる所に手が伸びてる。技術開発部門、警備部門、調査部門、戦闘部門、回収部門、販売部門……。まあいろいろあるよ」

「んで研究所の職員には等級ってのがある。一から十二まであって、数字が低いほど偉くなると思ってもらっていい。例えばデミスさんは第三等級で、俺は第八等級だ」


 そんなことを話しているうちにハルに与えられた住居に着いた。


「着いたぜ。ここだ! 個室と共同部分がセットになった一般職員の住居!」


 ベッドが二つ。個室と言われた部屋の中には既に誰かがいた。ハルが既に知っている誰かだった。


「あ、」


 ベッドの上でライターを持ったサニーと目が合った。絶対飲まないでと言われた薬を飲んでしまったハルの心には若干の後ろめたさが残っていて、ああどうも、という感じには挨拶が出来なかった。

 一方サニーは傍の机にライターを置いてハルをじっと見つめていた。


「おいおい! ここがハルの部屋だって! なんで下がるんだよ!」


 ベックが後ろ歩きするハルの肩を持ち、逃げるように下がるのを止めた。ハルはおかしくなった機械みたいな離散的な動きでサニーの方を見た。


 サニーは口元を軽く緩ませて優しく言った。


「よろしく、ハル」

「ヨ、ヨロシク」


 心臓の音が大きくなると同時に、薬の飲んだことと薬を飲んだことで例の男のようになるのではないかという不安が強くなり、外まで聞こえそうだった。


「あれー!? 顔が真っ赤になっていますよ! 新人職員さん?」


「君ら知り合いだったの? なんか反応が」


「まあ、そうですね! たぶん会って三日も経ってないくらいの知り合いです」


「……ん? じゃあ報告書にあったWEB使用者の少年ってハル少年のことだった?」


「はい! 彼は天然のWEB使用者で、私は助けてもらったんです!」


 ハルは口を真一文字に結びながら置物になっていた。


「ハルと知り合いだってんなら良かった。ハルは何故か気まずそうだけど、はやく馴染めるんじゃないか?」


「そうだ! ベックさん、問題なければ私が研究所の紹介をしてもいいですか? 折角なので、もっとハルと仲良くなりたいんです」


「うーん。じゃあ少しだけ任せようかな。そろそろハルの職員証が発行される頃だから、俺はそれを取りに行ってくるよ。その間はお願いするよ」

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