2:村に降臨しました。
「あのポプラちゃん、マニュアルが一緒についてきちゃったんだけどコレどうすればいいー……?」
「ひあぁぁっ!? 鈴白さん!? それっ、それですっ!! お兄様が『無い!!マニュアル無い!!』って大慌てだったんですよぉっ!!」
転生した時ぼくの横に一緒に落ちてきた『天界転生マニュアル』。
ごめんねポプラちゃん、こっそり少し読んじゃった。
「ねぇこれどうやって返せばいい……?」
天高くかざされるマニュアル。
女神さんが降りてきて持ってってくれるわけでもなさそうで、どうにもなりっこないかなぁ。
「すみません、お兄様を呼んできますっ!!」
「──貴様ァァァァ!!! 分かって持ち出したなあああぁぁぁぁ!!!?!?」
「いやわかんないっす、お兄様。これホント。ていうかお兄様どっから見てる? カメラどこ?」
ぴーす。
「そっちじゃなあぁぁいっ!!! 逆だ!! 逆!!」
おもろこの眼鏡。
「おい貴様、それをこの場で焼け。それが一番面倒が無くて済む」
「あのちょっと読んじゃったんだけど大丈夫ですかねー?」
「……その程度なら不問とする。こちらの不手際でもあるからな。だから今すぐ焼け!!」
「いいんすかそれで……まぁ、それでいいなら。ファイヤ」
ボォッ。
「本当に焼いちゃっていいんですか?」
「良い。焼き尽くせ」
……ねぇ。ぼくもう魔法が使えるんだけど。
褒めてくれない? 褒めてくれないのー?
異世界きてもういきなり魔法がボワッて使えるんだけど。
……ねぇ。 褒めてよ。
「あ、ねぇ見てお兄様!! 鈴白さん、もう魔法が使えますよ!! すごいですーっ!! すごいっ!!」
「へへ、でしょ?」
「まぁ能力値ボーナスのついでに各種魔法は初級の物なら最初から使えるようになっているからな」
「………あそ。」
「ハハハ、お前褒めてほしいのか!! 可愛いところあるじゃないかー鈴白ぉ!!」
「黙れ馬鹿眼鏡」
「あぁ!? 誰が馬鹿だ貴様!! 忘れてるみたいだが一応僕たちは神様──」
「はい、終わったよ。ポプラちゃんならともかく眼鏡の顔は見たくないからもうカメラ切っていいよー」
「……ハッ! 僕だって見たくないね大体これは貴様が実際にマニュアルを焼いたかどうか──」
「し、失礼しましたー鈴白様ぁ~……あの、焼いてくれてありがとうございます」
「──あ、ちょっと待って!? ねぇこれってカメラいつでも付けられるの!? ぼくのプライバシーダダ漏れ!?」
「大丈夫です大丈夫ですっ、鈴白さんの対話能力を使わない限りはこちらもカメラオンにはできないようになってますのでっ!! 鈴白さんが能力を解除すればこちらのカメラも強制的に切れますので、そっちにしましょうか!! 練習です鈴白さん、能力切ってみてください!」
「おぉそっかぁよかったぁ~……はーい、ありがとねポプラちゃん!」
「えへへ、どういたしましてっ!!」
「──ちょーっと魔法が使えるくらいじゃ驚かんのだわ! 僕の担当した転生者にはなぁ─ 」
おお、本当にキレた。
眼鏡が最後まで何か言ってたみたいでウケる。
「……さーて。」
「マニュアル他には何書いてるのかな~」
上級魔法・イミテーション。
触れた物の模造品を作る魔法。
これでもう一冊用意したんだけど。まさかあんな杜撰な確認でいいだなんて。
しかも燃やしたのがイミテーションで作成した模造品……つまりこれは原典!!!
フフフ。ちょろいちょろいっ。
どうやらぼくは魔法の才に少し長けているみたいだ。
いくつか上位の魔法、それも少し変わったような魔法が使えるみたい。
気になる? 見る? ステータス。
ふっふ。誰に話しかけてるのかってきみだよ、きみ。
読んでるんだろ……? ぼくの思考!!
誰かは知らないけどきみのために見せてあげるよ、ふふ、ふふふ……。
……読んでるんだろ!?
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「鈴白 ろき」 [変更:1度まで]
(ヘルプを開く)
LV:8
ジョブ: 無職
生命力 104/104
マナ 398/398
力 28
防御力 20
魔力 83
魔法防御力 40
素早さ 33
運 152
[装備]
:パーカー(黒) 防御力+1
:スカート(赤) 防御力+1
[スキル・魔法]
(詳細を開く)
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……気になるなぁ、無職。無職て。
このように、ぼくはなぜだか魔法に関する能力値がとても高い。無職の状態でこれだ。
運なんて特にずば抜けてて、状態異常がかなり通るって感じ。
もしかして、これが能力値ボーナスとかいうやつなのかなぁ。
──あ、イミテーションで使ったマナがもう回復してる。ぼく代謝最高かぁ?
さてさて、天界の神どもがどんなマニュアルでお仕事しているのか続けて覗き見してみますか。
あんまり分厚くはないけど、そこそこ量がある。
読み終えるのには時間がかかりそうだ……。
おや、『人間が天界に転生したいと申し出てきた場合…』
天界に存在していると人間の魂は徐々に消滅してしまうため、天界への転生は不可能であると説明するのが良いでしょう。
(※実際に魂が消滅する事はありません。これは適切に転生処理を行うための仮の状況説明です。)
……ぼくこれであしらわれてたんだ。
「おや、ロキ。こんな所にいたの──ハハハ、やっぱりそいつは大事な本なのかい」
「んー、おばあちゃんも読む?」
「ハハ、私も読めればいいんだけどねえ。あいにく字が読めなくってさ」
ぼくはハルマドと言う村の近くに降りたった。
のどかな平原が広がる中に、ぽつんとある村。
後ろには緩やかな山がのびているけど、それ以外はもうまっさら。
平原を降りた先のもーっと向こうには町があるのかな。少し影が見える。まぁそれくらい。
転生には丁度良さそうな場所だ。
ぼくは空から降ってきたみたいで、私を真っ先に見に来たおばあちゃんは神の子だって言った。
村の皆はぼくの一切を疑わずわっしょいしてくれる。このマニュアルは神の本だとか言ってさ、神の子に違いないって。
それにしても、なんとも都合の良い所に降ろしてくれたもんだね。原住民との和解というステップがオールクリアだ。
ありがとうポプラちゃん。
…………。
うーん。
住居の心配無し。家畜、畑良し。下手をすると本当にこのままこの村でぐーたらして一生を過ごすこともできてしまいそうだ。
本当にスローライフにはおあっつらえむきだなぁ。
……これじゃ前と何も変わんないよね。
じゃあ何で西に降りたかって? 冒険の楽しめそうな東や北に降りなかった理由?
…………。
「もしもーし、ポプラー?」
「あっ、はーい!! 鈴白さんどうしましたかっ?」
「あーん、ロキでいいよロキで。もうぼく達友達じゃないかっ」
「フフフ。それもそうですねっ。ロキさん何か御用ですかっ?」
「用が無いと話しかけちゃいけないのかーい?」
「あっ、別にそういうわけではありませんけどっ……!」
「何ていうかさ、もう暇になっちゃったんだけど」
「ハルマド村付近の西方面はスローライフ向けの転生地ですからね。お気に召さなかったのでしたら、お兄様に聞いて転生地の変更を致しましょうか?」
「んや、それはしなくていいよ。ねぇポプラ、ずっと繋げたままで大丈夫?」
「ええ、もちろんです! というよりもですよ、私の仕事それだけになったんです!」
「──へ?」
「ボーナスがボーナスという事もあって、常にロキさんとお話できるようにというお兄様の計らいです!!」
「へーあの眼鏡が」
「ええ、なのでロキさんの事ずっとサポート致しますよ!! フフ、ロキさんっ。神様をずっと側におけるボーナスだなんて得しちゃいましたねっ」
「──フフフ。そうだねぇ。これからポプラとずっと一緒かぁ」
「はいっ! あ、ご迷惑な時はいつでも能力OFFにしていただいてよろしいですからねっ──」
切った。
…………付け直した。
「ロキさぁんっ……!!」
うわぁっ、泣いてるっ。
「アハハハッ。やっぱからかいがいがあるねぇ、ポプラは」
「ひどいですよぉ……!!」
「さて、と……このまま日を暮らすのは性分じゃあない。ゆっくり情報でも集めよっかねぇ」
「困ったら何でも私に聞いてくださいっ!」
「それじゃあ成長しないよっ」
「アハハ、確かにそうですねっ」
……さて、パーカーのポケットに隠してるマニュアルはバレないようにしないと。
ぼくは色んな村人と話して回った。
ハルマド村。ここはただのスローライフ地域として片付けるには少しもったいない話が埋まっていた。
まず、この村は現在旅立っている勇者の故郷だという。
勇者の名前はフローリア。北の魔王城に向かうために旅立ってからだいぶ経つらしい。これに関しては日にちを数えていたおじいちゃんがいたから詳細を知れた。半年ほど経つらしいね。
……まぁ別にそれを知ったところで、っていう話ではあるんだけど。
そして次に、北の山々の合間には森があると。そこには危険な動物が少しばかり生息しているらしい。それがたまに村を襲いに来るそうだよ。
そしてそして、なんと……フフ!!
山の麓にはどこかに洞窟があって、その奥にはお宝があるんだと!!!
「──で、少年はそれが欲しいんだ」
「うんっ!! フローリアお姉ちゃんが強くなったら挑戦しに行けって!!!」
「キミ強くなれたの~? 大丈夫かな~?」
「お、お姉ちゃんには負けるけど、俺すっごく頑張ってきたんだから!!!」
勇者に憧れて、麺棒みたいなのをこの子はずっとブンブン振り回していたらしい。
名前はライアン。くぅ~、かっこいい名前だよねぇ。成長したらサマになるぞ、こいつは。
「よし、お姉ちゃんも着いていくぞっ。 少年一人だけじゃ心配だ」
「嫌だ! 一人で行く!!」
「気持ちは分かるよ~? 一人で挑戦しないと意味ないもんね~?」
「そうだよっ! だからお姉ちゃん、俺は一人で行く!!」
「でもさ、少年。もしまずっちゃったらどうするのぉ? 森の中は危ない動物がいるっていうじゃないか。キミがどこか怪我でもして血を出したらその血の匂いにつられて危ない動物達が群がってきて……」
「……っ。」
「……ってなっちゃったらどうする~?」
「……っ、そっ、それはっ」
あちゃ。震えだしちゃった。ちょっと怖がらせすぎたかなっ?
「ぼく何もしないからさ、ついてくだけ。そんでキミが危なくなっちゃったらサポートするよ。それでどお?」
「でもっ、そ、それじゃ意味ない……っ」
「へへ、少年。こんなに足がブルブル震えちゃあ一人は絶対無理だよぉ。今日は練習。危なくなったらぼくが魔法で助けてあげるから」
「……うう」
ありゃりゃ? 尻込み方がすごいなぁ、さっきまであんなに自信満々だったのに。
──フフ。ねぇこの子。もしかしてぼくに対してカッコつけたかったのかなぁ?
ぼくにいいとこ見せたくて、それで行こうだなんて言っちゃったのぉ?
んもぉ~しょうがないなぁ~っ!
「……ね。少年。いつかは必ず、その危ない動物と戦うことになるんだよ。いつまでも怖がって練習しかしないままだったら、戦う力なんて一生つかないまんまだよ!!」
「っ、お姉ちゃんっ……。」
「フフッ、そう。お姉ちゃんがついてるっ。だから少年、一度戦地に飛び込んでみっチャイナっ!!」
「……う、うんっ!! ありがとう、お姉ちゃんっ!!」
うおっ、抱きついてきたっ!
この歳にしてセクハラを覚えたか少年っ……顔まで擦り付けやがってっ、絶対確信犯だコイツッ……。
これ以上すると金を取るぞっ……離れろっ、オイッ……!!
「俺、今の自分の力試してみる!!」
「おぉ~っ、目がカッコよくなったぞ少年~! 性欲発散できてよかったな~え~!? フローリアお姉ちゃんもその目を見たらかっこいい~って思ってくれるかもしれないね~!?」
「エヘヘッ……!」
と、いうことでいざエロガキと一緒に森へ出発だ!!
隙あらばスカートの中を覗いてきそうだから絶対にコイツの前には出ないぞっ。
全くエロガキめっ、油断もスキもありゃしないんだ。
「……そういえばポプラ。放ったらかしっぱだったね、ごめんね」
「フフ。大丈夫ですよ。なんだか見てるだけでもとっても楽しいですもの。」
「楽しいかい……? ぼく、子供にセクハラされたぞ」
「え、セク……あ、愛情表現だと思いますけどねっ」
「まぁ愛情表現といえば愛情表現だろうねぇ、胸に顔擦り付けて深く息吸っちゃってさぁ」
「そ、そうでしたか……?」
「しかも抱きついた手で腰をまさぐりやがって、自分の腰を無意識かは知らないけどヘコヘコ動かしちゃってさっ、ありゃケダモノだったよケダモノっ。怖いねぇ男って言うのはぁ、この歳でオスなんだからさぁ~」
「ええ……そんな事はしてなかったと思いますよ……」
「たはーっ!! ポプラはされてないからそんな事が言えるんだなぁ~っ!! ありゃメスを狙う獣の動きだったよぉ~まさにっ!!」
「お、おねえちゃん誰としゃべってるの……??」
「え?」