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掌編集1 幻の都市とスーツ人  作者: 阿久沢牟礼
4/10

開始前

 もう始まると言われて、何が始まるのかがわからなかった。


 通りに出てみると交通規制されているらしく、人が溢れている。

 その様子だけ見ればどこかしら祭りのようでもあるが、出店など出ているわけでもない。


 老若男女さまざまな人がいるが、特別なにをするでもなくうろついている。友人や家族と集まって談笑している様子もない。特定の方向を向いている様子もなく、特定の方向へ向かっている様子もない。

 なんとはなしに空を見上げてみても、別に流れ星が流れたり、彗星が尾を引いていたり、虹が掛かっていたりするわけでもない。


 どうにも所在なく立ち尽くしているよりほかないのだが、人々の様子を見ればどうも当たり前のようにそこでそうしてうろついているように見受けられる。改めて見ても、やはり誰もが特別なにをしているというのでもないのに、しかし反面、きょろきょろとあたりを見回したり、そわそわしたりする様子もない。


 なぜだか、そうするのが当たり前であるかのように、そこでそうしている。


 もしかして、これから何が始まるのか、みな知っているのだろうか。


 そう思い、手近の者に素直に聞いてみようかとも思ったが、それだけはできなかった。というよりも、誰も質問に明確な答えを寄越さないであろうことが、何となくわかっていたのだった。


 わかっていたのになお、何がこれから始まるのかについては、まったくわからなかった。

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