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大成金の帰還

 コルコタ商会から買い付けた胡椒を満載し、さらに食料やザワークラウト、ベリー等の果物のはちみつ漬けやジュースを入手したハゲタカ丸は、中継地であるドラゴランドへ向かった。

 ドラゴランドにあるアークランド王国の王子マニシッサとの約束である。叔父に王位と婚約者を奪われた王子は、ベルの事を信じて待っていた。

 到着したベルにマニシッサは、選りすぐりの兵士10名を選抜して託した。ベルは彼らを連れて一路、アウステルリッツ王国へと帰国した。

 帰りは追い風もあり、わずか7週間でラプラタ海峡へと到達した。胡椒を満載したハゲタカ丸の帰国は驚きをもって迎えられることになった。

「ベル様、一夜にして億万長者ですわ!」

 クロコは狂喜した。何しろ、船に満載して来た品物は貴重な胡椒である。しかもドインで1級品と言われるコルコタ商会が扱っている胡椒だ。

 胡椒が詰められた樽には焼き印で『コルコタ商会』の商標である黒き牡牛が押されている。品質もそのブランドどおりのものである。

 胡椒は供給が少なくその値段は1粒の胡椒と同じ重さの銀貨で取引されるくらいなのだ。さらにコルコタ商会印ものなら軽く2倍はする。

 さらにベルが持ちこんだ胡椒の量は多く、陸上輸送の5倍の量がある。莫大なお金がベルにもたらされた。これでスコルッツア商会は軌道に乗ることになる。

「ベル、よく帰って来たのじゃ。さすがは我が夫となる男じゃ」

 ハゲタカ丸到着の報を受けて、婚約者のエデルガルドとシルヴィが出迎えた。ベルは2人が変わらず待っていてくれたことに感謝する。

 しかし、やることは多くある。2人といちゃいちゃする時間がない。

「エデル、例の件、どこまで進んでいる?」

 ベルはエデルガルドに銃の開発の進行について監督を依頼していたのだ。

 ベルのタレント『武器の創造主』の力で銃の図面を作成していたので、それを腕の良い鍛冶屋に作らせていた。

 大学の現代造形部の部員、ベノン・ブラームスとルーベンス・ボッシュが興味をもっていたので、この2人も開発研究員として加わわっている。

「試作品はできておる。後は耐久力の確認じゃの」

「とりあえず10丁用意してくれ。僕が連れて来たリザードマン兵に渡して訓練する。それで耐久力も分かるだろう。大砲の方は?」

「それも試作品が2門完成している。できはよいがこれも耐久力じゃの」

「ではエデル、大砲はラプラタ藩国のゲナ女王のところへ持っていく。君は引き続き、銃と大砲の製造の監督を頼む」

「分かったのじゃ。なんだかベルの女房になったみたいで楽しいのう」

 エデルガルドは実に楽しそうだ。エデルガルドの実家であるヴィッツレーベン家の領地内の1つの村に鍛冶屋を集め、そこで製造をしている。

 エデルガルドの進言で父親であるヴィッツレーベン伯爵が力を貸してくれたのだ。賢い伯爵は娘婿になるであろうベルンハルトのやろうとしていることの価値を大いに評価してくれた結果である。

 銃と大砲はベルとヴィッツレーベン家にも莫大な利益をもたらすことは間違いがなかった。

「シャーリーズ、君にも仕事がある」

「はいにゃ」

 ベルはシャーリーズにも使命を与える。銃の使い方をマスターして、リザードマン兵と一緒に訓練することだ。極秘裏に行いたいので、彼女もラプラタ藩国へ連れていくことにする。あの国で軍事演習も行うのだ。

「そして僕の大好きなシルヴィ」

 ベルはシルヴィに向き合う。彼女から渡された香油の瓶をポケットから出す。

「シルヴィ、この香油に使った薬草はシルヴィの領地にある特殊なものだと聞いたけれど?」

「はい。元々、父の領地にしか生えていない貴重な野草です。虫除け効果があるので、農家で細々と作っています」

「それを君の家の管理下において、大々的に輸出品にする。これはドインへもっていけば高値で売れるよ」

「え……あの野草がですか?」

「そう。他の領地にないなら利益は莫大だよ。種を管理して他に売らないようにするんだ。育て方は難しいの?」

「難しくはありません。ただ育てるために特別な方法があります」

 野草の増産は難しくなさそうだ。それを加工する技術も難しくはないが、少々工夫がいる。

 ベルはシルヴィに必要な資金を渡すと領地で薬草の増産の指揮をとってもらうことにした。成功すればシルヴィのダヤン子爵家が治める小さな領地は豊かになるだろう。いつも貧しい生活を強いている領民に心を痛めていたシルヴィは、喜々としてこの仕事に取り組んだ。

 もちろん、ベルは商売の方も手を抜かない。手に入れた資金を元手に船を買い入れる。新たに3隻の船を買い入れた。これにシルヴィの領地で手に入れた虫除け草を乗せて、再度ドインに出航させる。胡椒の買い付けである。

 今度は虫除けの草をドインで売るので、儲けはさらに大きくなる。

 他の商人も真似をしたかったが、長期の航海に耐えるノウハウがまだない。さらに中継地点のドラゴランドとのコネクションもないからしばらくはベルの作ったスコルッツア南洋貿易会社の独占である。


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