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12のタレント

「それでは神よりの啓示です」

 中央に設置された壁。それは「施しの壁」と呼ばれるもの。壁の向こうは神界につながると言われている。壁はくるりと筒状になっているから、壁の向こうはただの空間であろうが、この神殿の神官たちはその空間が神の領域だと説教している。

 どう見てもただの空間であるが、タレント付与という超常現象が起きるのだから、やはりまやかしではなかった。

「うっ……」

 ものすごい光が壁から放たれる。それは壁近くの特等席にいる貴族の子弟から、壁から離れた平民の子弟までまんべんなく注がれる。

(体が……熱い……)

 ベルは戸惑った。その熱は体を焼かれるかのような熱さ。足の先から徐々に焼かれ、古い肉が生まれ変わっていくような感覚に捕らわれる。

 そして閉じた目でもはっきりとわかる光の点滅。無数の点滅が確認できた。

(これがタレント……付与……この点滅はなんだ?)

 不意にベルの頭の中で女性の声がする。どこかで聞いたことがある声だ。

それは『武器の創造主』と話した。

(武器の創造主……なんだこれは?)

 そう思うと同時に女性の声で説明が続く。

 やはりどこかで聞いたことのある声だ。

「武器の創造主……この世にある武器の知識をもつことができます。また、新たな武器を創造することもできます」

(これが僕のタレント……)

 生まれ変わる前は『武器おオタク』であったから、このタレントは縁があるとしか思えない。ただ、この能力が自分の将来にどう影響を与えるのか分からない。

『銃神の力』

 さらに2つ目の力が説明される。

(銃神の力ってなんだ?)

「銃神の力……銃を使うことができます。使えば必ず命中します。但し、この世界に銃はありません」

(意味ねえええ……)

 銃がないなら使えない能力である。しかし、この能力もある意味、前世で銃が好きだった影響を受けている。

『******』

 女性の声は続くが何か理解できない。大陸語であるアーズワールド語ではない。

(おいおい、平民のタレントは1つって聞いたけど、俺には3つもあるじゃないか。但し、意味がわからん)

「この能力は、いずれ解放されます」

 そう女性の声は言った。説明も不明だ。そして驚いたことに、不明な言葉がさらにあと9つあった。

(おいおい、3つどころか……12もタレント付与されたじゃないか!)

「12個……やっぱり、これか!」

 ベルはこのタレント・ジャッジに期待していた。この世界に転生する前に駄女神をだましてチート能力を12個もらったのだ。

生まれて以来、そのようなチート能力は使えなかったので、いつか目覚めるはずだとは思っていた。あの約束はこのタレント・ジャッジに反映されていたわけだ。

(あの駄女神の奴め。やっと約束を果たしたわけだ……)

 どこかで聞いたことがあると思った声は、あの駄女神のものであった。

しかし、ほとんどの力は不明で使えない。ある時期が来たら解放されるのだろうか。そう思った時に声が再び響いた。

「条件が満たされました。1つのタレントを顕現します」

解離奈有ゲリナール

(なんだそりゃ?)

 ベルはその名前に少しだけ記憶があった。何だかもっていた何かの名前。

解離奈有ゲリナール……指名した相手に激しい下痢症状を引き起こします。胃から腸にある物質を強制的に下から排せつします」

 駄女神の声はそう淡々と説明する。

(……どこかで聞いた名前だけど……なんだったけ?)

  転生前の記憶で聞いた覚えがある名称である。しかし思い出せない。

(タレント12個って確かにすごいですよ。チートですよ。でも、武器知識とこの世にない銃の扱いに関する能力で、あと9つは不明で最後のは……使えねえ……)

 ツイているのか、ツイてないのか分からない。というか、あの駄女神、約束は守ったが、中身はいい加減であった。

 能力の数は本人しか分からないので、自分が12も付与されたとは他人には分からないが、すぐに使えそうもない能力にベルはため息をついた。

「ははは……2つの点滅が見える。さすがはマクドウェル伯爵家の長男。2つのタレント付与だ」

 そう豪語するウィリアム。与えられた数は目を閉じた時に光の点滅で分かるのだ。だが、ウィリアムにはベルのように与えられたタレント名が分からない。どういうタレントが付与されたかは、これから成長していくにつれて判明するのだ。

 ベルのように女神が言葉で教えてくれるわけではない。タレント名を知るためには、宮廷魔術師級の魔力の持ち主に鑑定をしてもらわないといけないのだ。それは貴族であっても容易なことではない。そのような人物は滅多にいないからだ。

「さて、庶民のそこのゴミ虫。お前はどんなタレントを得たのだ。おっと、それは聞くのは野暮だな。多くは自分のタレントをはっきり知らないで死んでいくからな」

 得意げに自慢しまくっていたウィリアムは、再び、ベルに絡んで来た。気分が良いところに加えて、どうせタレントは1つでつまらないものであろうと決めつけていた。

 与えられたタレントを知るには、他人のタレントを見破る能力がある鑑定士に頼むことになるが、そういう人物はほとんどいない。アウステリッツ王国では、宮廷魔術師クラスの者だけができると言われているくらいだ。

 そして依頼するのなら莫大な謝礼金がかかる。大貴族や王族以外は自分で把握することは困難なのだ。

 そしてこのことは、ウィリアムのベルへの質問は(どうせ自分のタレントも分からず人生を過ごすのだろう)という蔑みが含まれている。

「もし、分かったとしても君に教える義理はない」

 ベルはそう答えることを拒否した。その態度にウィリアムの目が三角に変わった

「なんだその態度は。どうせお前などに自分のタレントを知る伝手などないことは分かっている。素直にその通りですと言えばよいのだ。それなのにその生意気な態度は無礼だ!」

 ウィリアムが目で合図する。取り巻きの2人が再び、ベルの両腕を抑えようとする。それを見ていた周りが騒然とする。

「そこの男子、この神聖な場所で争うのは止めるのじゃ!」

 ほとんどが傍観する中で勇ましい口調でベルたちの前に出てきた女の子がいた。金髪巻き毛で典型的なバルカ人のお姫様である。

 ベルはいじめの仲裁に出てきた勇気に感謝するが、面倒なことになったと思った。


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― 新着の感想 ―
思ったより能力はマシでしたね。てっきりチートを沢山詰め込んだ代わりに生涯に1度しか使えない、しかも12のうち1つを選ぶ、みたいな強烈な制限がかかるかと思ってました。
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