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リボルバー

 今日は授業後のクラブ活動で重要な実験をする予定がある。それは雷管の実験。ベルのタレント『武器の創造主』の力でリボルバー型の拳銃を再現している。まだ、本体が完成しただけで銃弾がない。だから射撃実験ができていない。

 しかし、やっと硝酸が手に入り、それと黒色火薬を用いて銃弾の製造に成功したのだ。銃弾は飛んで行く弾頭部分とそれを飛ばす火薬の入った薬莢部分。そしてお尻の雷管という構造がある。

 この雷管を撃鉄で撃ち付けると火薬に引火し、弾頭が飛んで行くのだ。銃弾を飛ばす肝の部分である。

 午後の授業は自由課題演習だったので、昼ご飯もそこそこにベルは現代造形部の部室を訪れた。同じ1年生のルーベンスとベノンは既に来ている。

 2人ともベルが制作している銃に興味津々である。特にベノンはのめり込んでおり、ベルも彼の手先の器用さに助けられ、製造が予定より早く進めることができた。

「早く、発射実験をするだす……」

 相変わらずの訛りでベノンがベルを急かす。ベルはリボルバーの弾倉に1発だけ銃弾を装填した。そして銃を万力に固定する。

 もし火薬量の計算が狂い、暴発したら大けがをしてしまう恐れがある。まず遠隔操作で発射するのだ。

 引き金を紐で引く。パーンという乾いた音がした。

 30m先に置いた的に銃弾が命中する。

「やっただす!」

「計算通り!」

「すごい、完成じゃん!」

 3人とも実験成功に思わずガッツポーズした。

 見事に銃弾は発射された。そして30m先の分厚い板で作った的を撃ちぬいた。かなりの殺傷力がある。

「もう一度試そう」

 ベルはまた弾倉に弾を装填する。今度は2発発射するのだ。今回作った銃はダブルアクションである。1発発射した後、もう一度引き金を引くと撃鉄が起きて、再び撃つことができる。その機構が作動するか、また連続射撃に耐えられるかを試すのだ。

 パン、パン……。

 2発の弾丸は見事に発射された。

「今度は手に持って撃つ」

 今は万力でがっちり固定されている。発射時の衝撃は実際に撃ってみないと分からない。これが大きいと実用にならない。

 ただ、これは勇気がいる。ここまでの実験は成功とはいえ、銃の耐久力が未知数だ。何発も撃つと銃身が破裂する危険もある。

 ベルは恐れない。自分で作った銃だから、自分自身で試すしかない。

 そしてベルにはタレント『銃神の力』がある。銃ならば百発百中するチートなタレントである。

「行くよ!」

 ベルは6度引き金を引いた。装填された弾は6発とも今度は50m先にまで伸ばした的を撃ちぬいた。本当はすべてを撃ち抜いたベルの腕が神業なのだが、見ている2人の学生はそれも銃の力だと思っている。

「すごいダス……大成功ダス」

 ベノンは実験を終えた銃を観察する。ルーベンスは撃ちぬかれた木の板の的を確かめる。裏側に鉄板を張った特別なものだが、それも問題なく撃ちぬいている。これは戦争を変える発明になる。

 戦争の主力である重装歩兵の分厚い鎧の装甲を問題なく撃ちぬけるのである。

「しかし……これは耐久力に課題があるダス」

 撃ち終わった銃を見ていたベノンの表情が曇った。ベルも実験を終えた銃を見る。銃身にわずかなヒビがあるのだ。爆発の衝撃に耐えられなかったのであろう。

「耐久力はあるけど、あと5,6発も撃てば破裂するだろうね」

「金属の耐久力を上げないと無理ダスな」

 20発ほどの射撃に耐えられても、それ以上撃てないのなら戦争では使えない。

 まだ改良の余地があるということだ。ベルは銃に残った銃弾を詰めた。全部で6発だ。銃の素材は炭素鋼であるが、混ぜる炭素の量で強度が変わってくる。ただ単に固いのも衝撃で銃身に亀裂が入る原因になるから、強度は保ちつつも粘度もあるように調整しないといけない。

 これはまた鍛冶屋と相談であろう。いくつか試作品を作っているので、試射実験を繰り返すしかない。

 ベルは一丁目の銃の改良点を上げて次の銃の制作を命ずると共に、さらに原理を利用して大砲の制作にも着手することにした。

 銃も世界を変える発明であるが、大砲はもっと影響がある。それは戦争の形態を大きく変えることになるからだ。


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