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ツンデレ姫は結婚したい

「無礼を働きました。すみません」

「あ、あ、あ、当たり前じゃ。平民の分際でわらわに無理やり迫るとは……」

『なんで止めちゃうのじゃ。このままわらわを押し倒して欲しいのじゃ!』

「すみません。あまりにエデルガルドが可愛いのでつい興奮しちゃいました」

 そういってベルは誤魔化した。あまりに言っていることと本音が乖離しているので、ちょっと試してみたのだ。あのままキスをしたらやばいかった。既成事実にされてあっという間に結婚させられる。

「か、かわいいじゃと……。あ、当たり前じゃ。わらわは社交界でも評判の美人じゃ」

『嬉しい!』

『好き』

『ベル様、大好き』 

(はあ~)

 本音が錯綜してベルは疲れる。しかし、ここで負けていてはエデルガルドに押し切られる。何としてでもこのお見合いは破談にもっていかないとまずい。

「僕のような平民との婚約は、聡明なエデルガルド様にはありえないです。どうか、このお見合いをお断りください」

 伯爵家とのお見合いである。平民のベルの方から断るのはさすがにできない。

「……ダメじゃ。わらわを愚弄した責任をとってもらおう」

『ダメダメ、絶対ダメ』

「は?」

「責任じゃ」

「いや、責任取って伯爵令嬢様を嫁にするなんて聞いたことありません。なぜそういうことになるのです?」

「決まっておる。それはわらわが命じておるからじゃ。黙ってわらわを嫁にするにじゃ!」

『ベル様、エデルをお嫁にもらって!』

 本音と言っていることが初めて一致した。エデルガルドは顔を真っ赤にしている。本人なりに勇気を振り絞ったのであろう。

 実際にしゃっべている口調は、お高くとまった言い方であるが、ベルと結婚したい気持ちは本気のようだ。

 一目惚れでここまで惚れこむというのは信じられないが、本音が分かるタレントによれば、それも本当ということになる。

「急にそんなことを言われても……」

 困る。エデルガルドは確かに美少女であるが、性格には難がありそうだ。それにベルが好きなのはシルヴィだ。エデルガルドと結婚するわけにはいかない。

 ベルが煮え切らないので、エデルガルドはとんでもないことを言いだした。

「ではこうしようではないか。ベル、お主、わらわとしばらく交際するがよい。そうすれば平民のお主でもよいところがあるかもしれないことが分かるじゃろう」

『デート、デート!』

 もはや思考回路がぐちゃぐちゃである。ここまで言われるとベルは断れない。ヴィッツレーベン伯爵家の面子を潰すわけにはいかない。

 それにベルにその気はないと分かれば、ヴィッツレーベン家もごり押しはしないだろうと考えた。やはり伯爵令嬢が積極的に庶民に嫁ぐのは、かなりハードルが高いのだ。

「仕方がありません。エデルガルドが僕に飽きるまでお付き合いはします」

「……そ、そうじゃ。そうするのじゃ。わらわはよい返事を聞けて満足じゃ」

『よっしゃあああああっ……。ベル様とデートできる。次で絶対にわらわの婿にしてみせようぞ!』

「はあ……」

 エデルガルドの心の声の勇ましさにベルは先が思いやられる。しかし、このお姫様、あの神殿でも唯一平民のベルを助けに入ってくれた。根はいい人なのかもしれない。口では偉ぶっているが、本音は差別意識がなく、優しい感じがする。見てくれが悪役令嬢みたいだから、損をしているだけなのかもしれない。

「それはそうと、お主の侍女はなんであのような格好をしておる?」

『なんとセクシーな服なのじゃ。あんな服でベル様を誘惑するでない』

 エデルガルドはそう言って近くに控えているシャーリーズをにらんだ。本音の言葉に嫉妬の炎がめらめら燃えているようだ。

「彼女はシャーリーズと言います。愛称はシャーリー。彼女は僕の専属ボディガードなのです」

 そうベルは説明した、シャーリーズは軽く頭を下げる。

「ボディガードがなぜ、あんなセクシーな格好をしておるのじゃ?」

「それは僕の趣味だから」

 ベルは聞いたら普通女子が引くようなことを口にする。しかし、エデルガルドは引かない。

「ふん。専属ボディガードじゃと。庶民のすることは趣味が悪いことじゃ」

『あれがベル様の好みの格好……今度、わらわも着てみよう』

(まじかよ!)

 本音が聞こえると言うのは、すごい能力のようだが、実際に聞いてみるとあまり気持ちが良いものではない。

「まあよい。そちも未来のベルの妻のわらわに仕えることになる。これからもよろしく頼むぞ」

 そうエデルガルドはシャーリーズに声をかけた。彼女がバルカ人でなくとも差別意識は全くないようだ。貴族令嬢としてはめずらしい。お高く止まった発言の割にこの態度。やはり人柄は優しいのだろう。

 こうしてエデルガルドとのお見合いは終わった。

 終わった時、クロコが教えてくれた。

(あのお姫様、最初からベル様にハート2つでしたわ。話している途中でハートが増えて、最後は4つになりましたですわ)

(おい、4つはおかしいだろ。3つが最高じゃないのかよ)

(クロコもそう思っていましたですわ。ですけど、4つ回っていましたですわ)

 これは困った。エデルガルドのベルに対する恋心は想像以上に高いらしい。

 すぐにヴィッツレーベン家から、次回の約束を求める使者がやってきた。エデルガルド姫はどうしてもベルと結婚したいらしい。


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