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超回復の実験

「ベル様、シャーリーの頭にハートが3つ現れたですわ」

「黒星3つからハート3つか……。思ったよりもちょろかったな」

 屋敷についたベルは、自室に戻ってクロコからの報告を受けた。

 クロコからシャーリーズがベルに対して殺意を抱いていると聞いてから、ベルはそれを一挙に変える手段に出た。

 黒星3つの殺意とは相当なものである。普通は怨恨。殺したいほどの恨みがある場合である。しかし、ベルはシャーリーズとは初体面。

 恨みを買うようなことはしていない。

(となると、どこかの組織か人に殺害を命じられたということが考えられる。それで星3つの状態ということは、ほぼ洗脳されているとみて間違いがない)

 洗脳されている人間を改心させるには、洗脳を解かないといけない。それには強烈な心への刺激が必要だ。

「強烈な幸福感、恋心などのプラスの感情がよいが、それだと時間がかかる。それで僕が選んだのは……」

「羞恥心って奴ですわね」

 クロコが代弁した。そうだ。強烈な羞恥心は心に多大な影響を与える。バケツに排泄させ、さらに勝負に負ける。

 戦士として、女子としてこれ以上はない強烈な羞恥心は、洗脳を解いた。

 あとは簡単である。

「僕は彼女に恥ずかしい格好や語尾の強制で羞恥心を持続させるとともに、時折、ご褒美を与えた」

「高価な武器のプレゼント。快適に眠れるベッド。そして暴力からの救出……。これだけ揺さぶられれば、変化は起こるのは必然ですわね」

「そうだな。すべて僕の作戦通りだな」

 ベルはそう自画自賛した。

 しかしクロコは思う。(これも洗脳ですわ)

 確かにとことん落とされても、少しだけ優しくされると人間はその優しさが際立ち、優しくしてくれた人間を慕うようになる。

 毎日暴力を振るう男が時折優しくするところりと落ちる女みたいなものだ。ある種の洗脳状態である。

「だけど、クロコは思うですわ。シャーリーという少女。絶対に変態の気がありますわ。完全なマゾ体質ですわね」

 そうでないとこうも短期で殺意が強烈な愛情には変わらない。

 そしてクロコは思う。

 作戦とか言っているベル自身が、シャーリーズとの絡みを楽しみにしている節がある。どうやら面白がってちょっかいを出していたが、出すうちにほっとけなくなってしまったようだ。

(ベル様も無自覚なようだけど……。この脳筋女に惹かれているようですわね)

「おい、クロコ……頭の中で声がする」

 不意にベルが頭を抱えた。

 これは既に経験がある。タレントの顕現である。

 あの女神の声が聞こえてくる。


 新しいタレントが解放されました。

『超回復』が解放されます。

 超回復は手のひらをかざすだけで、ケガや病に襲われた体を健康体にします。

 健康体に対して使うと強烈な幸福感を与えることができます。


(クロコ、すげえタレントをもらったよ)

(クロコにも聞こえましたですわ。相変わらず、ベル様はチートですわね)

 確かにチートだ。回復の力があるだけで無双をする話もあるくらいだから、12個のうちの1つというだけでも恵まれ過ぎというものだ。

(ケガを治せるというのは重宝だ。すでに健康体に使うと強烈な幸福感というのも気になるが……)

(まずは試しに使ってみるとよいですわ。そう言えばケガでしたら、シャーリーは膝をケガしていましたわね)

 シャーリーズはウィリアムに突き飛ばされた時に軽いけがをしていた。

「よし、シャーリーで実験しよう」

 ベルはシャーリーズを呼びつけた。

 屋敷についたばかりで、シャーリーズは傷の手当てをしていなかった。ウィリアムに蹴られて転倒した時に右膝を地面でこすりつかたのだ。わずかであるが血が滲んでいる。

 戦場で視線を潜ったシャーリーズには、ケガというほどのものでもない。ほっといても治ると思っていたのだろう。ベルとしては都合がよい。

「シャーリー、右膝の傷を治してやる。あと蹴られた時の打撲もあるだろう」

「……いいです、遠慮しますにゃん」

 シャーリーズは何だか嫌な予感がした。身も心もベルに捧げるとは思っていたが、ベルに何かされると思うと少し怖い。

「大丈夫だ。そのベッドに座って」

 ベルは無視する。シャーリーズに対しては遠慮というものがない。そしてシャーリーズは、ベルに命令されるともう拒否できない。

シャーリーズは、恐る恐るベッドに座る。

「シャーリー、右ひざを出して」

「は、はい……ベル様」

 やむなくシャーリーズは右ひざを出す。短いスカートと太ももまである黒の靴下なので、靴下を膝まで下げる。靴下の膝に当たる部分が破れかかっていたので、やはり皮膚に少し傷がある。

「よし、超回復」

 ベルは手のひらを膝にかざす。光がぽわっと起きた。

 みるみるうちに滲んだ血が消えた。

「な、治ったようです……にゃん。ベル様、すごいにゃん」

 シャーリーズも驚いた。

 てっきり、自分の体を触ろうとするベルの悪戯だと思ったのだ。

「次は腰だ。シャーリー、ベッドでうつ伏せになれ」

「……こ、こうですか……にゃん」

 シャーリーズはベルのベッドにうつ伏せになる。大きな胸が少々邪魔であったが、足を延ばしてお尻を突き出す。

「よし、いいぞ。超回復!」

 シャーリーズはお尻に解放感を感じた。ベルがスカートをめくったのではないかと疑ったが、そうではないらしい。先ほどまで臀部と腰に感じていた鈍痛が完全に消えた。

「どうだシャーリー。痛みは消えたか?」

「すごいです……ベル様。完全に消えました」

 うつ伏せのまま、シャーリーズは感激の言葉を口にした。しかし、これで終わるわけがない。

(ベル様、このタレントはすごいですわ)

 クロコがそう囁く。超回復が使えれば、この先、ベルやその周辺の人間が危機に陥った時に命を救うことができるのである。

(クロコ、まだこの能力の全容は掴めていない。健康体に使うとどうなるかという実験はまだだ)

(……クロコはベル様がそう言うと思いましたですわ)

 クロコは実験台にされるシャーリーズが気の毒と少しだけ思ったが、そこは邪妖精。どうなるかという好奇心が勝った。そしてどうなるかもある程度予想していた。

「シャーリー、じっとしていろよ」

「な、何をするにゃん……ベル様、怖い!」

 うつ伏せのまま枕に顔を埋めるシャーリーズ。お尻を突き出したままの状態。ミニスカートだから、年頃男子にはたまらない、いけないものが見える。

 ベルは両手を突き出して超回復の力を解放する。

「超回復!」

「はううううううううううっ~」

 シャーリーズの口から快感に喘ぐ声が出る。

「ダメ、ダメです……ベル様、体が熱いにゃん……」

「う~む。1回だけじゃ、効果は薄いか」

 ベルは首を傾げる。シャーリーズはぐったりとして顔がピンク色になっている。そして体が小刻みに震えている。

「もう1回かけよう、超回復!」

「ふええええええええええっ~」

 びくびくと体が痙攣するシャーリーズ。特に足と下半身の痙攣が止まらない。口が半開きで目の焦点が合わない。

「うむ。どれだけ耐えられるか、試してみよう」

(ベル様、クロコはさすがに鬼畜だと思うですわ)

(何を言うか。人間の限界を知るのは重要だ)

「はう~。ベル様、これ以上はもう耐えられないにゃん……」

 苦しい息遣いから、そうシャーリーズが懇願する。ただ、その言葉には期待のする感じもありそうだ。怖いけど気持ちよさを味わいたいという葛藤である。

 ベルはますます調子に乗る。

「くくく……。シャーリー、痛くはないだろう。快感とやらを味わうのを恐れる必要はないんじゃないのか?」

「ダメです……にゃん。これ以上は変になっちゃうにゃん」

「超回復!」

 容赦ないベルの言葉。両手が光る。

「あうううううううっ……気持ちいい……良すぎて変になっちゃううう~……」

 激しく体が痙攣させてシャーリーズは気を失ってしまった。

「なるほど。こうなるわけか」

(ベル様はやっぱり鬼畜ですわね)

 やれやれと言った感じでクロコが悪口を言う。ベルは全く気にしない。気を失ったとはいえ、シャーリーズの体がどうかなったわけではない。

 今も体のあちらこちらがピクピクと痙攣し、目を閉じているシャーリーズ。口は半開きでだらしなくよだれも垂らしている。相当腕の良いマッサージ師に施術してもらったとしても、これだけの快感は味わえないだろう。

「超回復の力が分かったんだ。それにシャーリーズも幸せそうな寝顔じゃないか。鬼畜と言うのは心外だな」

 ベルはそう言ったが、超回復の効果で得られる快楽は尋常ではない。この行為によってシャーリーズの心の中でベルの存在が大きくなってしまったことをベルはまだ知らない。


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