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リサの作品集

蒼い星の真実

作者: リサ

 皆様少し遅くなりましたが、あけましておめでとうございます!!


 今回は久しぶりに短編小説を書かせていただきました。

 ぜひ読んでいただけたら嬉しいです!!


 

♪お星さまが降った時願い事をしよう

1番最初に願いごとをして願いを叶えてもらおう


誰よりも最初に届いた願いのみ

お星さまは叶えてくれる

でもね

お星さまはとっても小さなお願いしか叶えられない


だけど

10年に1回蒼いお星さまが降ってくる

そのお星さまはどんな願いでも叶えてくれる


この世の理を崩さない願いだったら何でも叶えてくれる

だからみんな夜は空を見上げよう


願いを叶えてもらえるように♪




 隣の家から母親が誰かに流れ星の子守歌が聞こえた。

 もう夜なのか、外からはフクロウの鳴く声が聞こえる。だからきっとこの歌は子守歌なのだろう。

 フクロウの声と隣の家の歌を聞きながら眠る。これが少女の1日の終わりであり、なによりの楽しみでもあった。

 

 暗闇お腹から聞こえてくる歌に少女は耳を傾けた。

 星とはどういう物だろう。降るとはどんな感じだろう。アオとは何だろう。星の名前かな? それとももっと違う何か?



 少女は目が見えなかった。少女がもっと幼いころは、見えていたという記憶をうっすら覚えている。大人2人と一緒にいたような、すごくあいまいな記憶だった。

 少女の視界が暗闇に覆われてから、しばらく女の人の泣き声がした気がする。しばらくして低い怒鳴り声が聞こえてきた。それからドスドスと音が近づいてきて唐突に体のどこかに痛みが走った。このころは、ずっと体のどこかが痛かったという記憶しかあまり残っていない。

 それからまたしばらくして、扉の開く音が聞こえて家の中から音が消えた。


 それから毎日、違う人が家にいい匂いのするものを置いていくようになった。それは口に入れてみると、とてもおいしかった。これが、お母さんが何時も作ってくれていたご飯だということはすぐに理解できた。

 いつもご飯を持ってきてくれる誰かに、少女はお礼がしたいと思った。

 少女は目が見えないので、言葉で伝えるのが1番だと思っていた。けれど、少女は最近声を出せなくなっていた。何故出せないのか少女にもわからない。だからせめて精一杯感謝を伝えるために、扉が開いていい匂いがしたら笑ってお辞儀をする。口の端が上がているからおそらくちゃんと笑えているんだろう。

 けれど少女はもっと形に残るお礼をしたかった。自分には何を渡せるだろうか。少女は考えた。



 ご飯を持ってきてくれる人は5人くらいだ。渡すものも、変なものはなんとなく渡したらダメだと思ったし、渡すからには喜んでもらいたかった。


 そういえば、記憶の中の女の人は頭に引き出しから出した綺麗なものを付けていた。どういう物だったか、もうぼんやりとして思い出せないが、あれだったら喜んでもらえそう。

 少女はそう思った。そして、それが入っている引き出しを探すために家にある引き出しを1つ1つ開けて中を確かめた。


 何も入っていない引き出しの奥を手探りで探していると、奥の方で指先が何かにコツッとあたった。それをつかんで出して両手で触ってみる。片方には何かツルツルしたものがついていて、もう片方は細くなっているものが幾つもがあった。きっとこれだと少女は確信めいたものを感じた。


 それを5つ取り出すと、それを大事そうに抱えて、外に通じる扉の前で薄い毛布にくるまった。

 これは家から音が無くなってしばらくしてから身に付いた習慣だった。ここであれば、誰が家に来るのかわかる。もしかしたら、一緒に暮らしていたあの2人が戻ってくるかもしれないと思った。そうなったら、1番最初に出迎えたかった。ずっと2人の足音を待っているのだ。




 外から聞こえてくる足音で目が覚めた。今日の人は編み物を教えてくれる人だ。

 いつも来る人は、ご飯を食べた後何かを教えてくれる。ちょっとしたお話をしてくれる。今日は1本の棒でまるを作ることを教えてくれた。練習をしながら、花畑というところに出かけたことを話してくれた。

 花畑とは、たくさんの色の花というものが咲いていてとてもきれいなところだそうだ。

 色とは何だろう。少女の記憶は暗闇がほとんどだ。だから色がどんなものかわからない。けれど、声はきれいだなと思うことがあるので、それと似たようなものなのかと1人で納得する。けれど、その光景を見られるこの人を、すごく羨ましいと思った。


 女の人が帰るとき、昨夜見つけ出したものを渡した。喜んでくれるか少しドキドキした。少女からそれを受け取った人はしばらく黙り込んでしまった。しばらくして、鼻をすする音が聞こえた。


 少女は慌てた。もしかして泣くほど嫌なものを渡してしまっただろうか。それだったらものすごく申し訳ない。


 あたふたしていると、頭に何かが触れた。それは少女の頭を優しく撫でる。

これはこの人の手だ。

 女の人はすごくかすれた声で、ありがとうと言った。喜んでくれたのだろうか? 女の人の表情がわからない少女は不安になるが、頭をなでる手はとても優しかったからこれでよかったんだと安心した。

 他の4人もご飯持ってきてくれた時に渡したけど、同じ反応を返された。皆頭を撫でてかすれた声でありがとうと言ってくれた。

 本当は自分の声で『ありがとう』と伝えたかった。いつか声を出せるようになったら絶対に言いたい。少女はひそかに誓った。




 ある時、少女は聞き慣れない足音に目を覚ました。フクロウが鳴いているから多分まだ夜だ。

 夜はフクロウと風の音以外全くしない。だからこそ、この複数の足音が不気味でならなかった。


 何かよくない物が近づいてきている。直感的にそう感じ、少女は皆に知らせるために外に行く扉に手をかけた。

 けれど、その扉を開くことはなかなかできなかった。少女は外に出たことがなかった。少女にとって外は、どこに何があるかもまったくわからないまったくの未知の世界だった。


 少女が悩んでいる間に足音はどんどん近づいてきている。



(大丈夫・・・・声とか足音聞いてるからきっと場所は分かるはず・・・・・・)



 少女は意を決して外に出た。

 昼間聞いた音の記憶を頼りに、少女はなるべく急ぎ足でまずは隣の家に向かった。


 その途中で、ぱちぱちというにおいと焦げ臭い匂いがした。それがいいものではないと少女は感じた。急いで知らせようと足を速めるけれど、何かにつまずいて転んでしまった。その拍子に、自分がどっちに行けばいいのかわからなくなってしまった。



 声が出れば、このことを大声で知らせることが出来るのに・・・・・・!

 目が見えれば、何が起こっているのか確認できるのに・・・・・!

 優しくしてくれたみんなに何もできない!?



 少女は自分の不甲斐なさに唇を噛み締めた。ぱちぱちという音と焦げ臭い匂いは少しずつ近寄ってきている。



 お願いお星さま! 私に声と目を返して!! おねがい! 蒼いお星さま!! 皆私に優しくしてくれたの! 何にも返せない私においしいご飯くれたの! いろんなこと話してくれたし教えてくれたの! だから・・・・・だから!



 少女は心の中で叫びながら立ち上がってまた歩き出した。どこに向かっているのは分からないけれど、兎に角動かなくてはと思った。この異変に気付いているのはこの少女だけだから・・・・・・。


 その時、上空ではあの、蒼い流れ星が流れた。目の見えない少女はそのことに気づかなかった。例え見えたとしても少女は気にも留めなかっただろう。少女は何もできない自分に優しくしてくれた人たちを助けるのだという、使命感に燃えていたのだから。



 みんな逃げて! お願い聞こえて! お願い今どうなってるのか見せて! 蒼いお星さまおねがい! みんなを助けるために声と目を直して! お星さま!!!

 みんなにげて! 危ないよ! 逃げて! 逃げて!


「逃げて! みんな危ないよ!!」



 誰かの叫ぶ声が聞こえた。最初はだれの声なのか分からなかった。ただ、喉が焼け付くように痛んでその声が自分のだということに気づいた。視界も、暗闇の中に薄っすら何かの形が見えた。

 いきなり開けた視界にめまいを覚えたものの、何とかぱちぱちと音がする方を見た。


 そこには赤くてゆらゆらと揺れる赤いものが木の棒にどんどん移っていっていた。それが通ったところは黒くなっている。


 少女は近くにあった扉であろう所に駆け寄って思いっきり叩いた。



「起きて! ここにいると危ないよ! 変な人たちが近くにいて、赤いものが近づいてきてるの! お願い早く逃げて!?!?」



 ドンドン扉をたたくと、しばらくして中から人が出てきた。その人は少女を見て驚いたように目を見開いたが、その先に見える火を見てさらに目を見開いた。

 その人は慌てて中に戻り、家族と一緒に出てきた。そして、家族と少女に他の人も起こすように言い置いて、隣の家に走った。



 少女は周りの家に行って住人を起こして避難させた。住人は最初少女に驚いていたけど、火を見て周りに声をかけながら安全なところに避難した。



 少女は皆が見えた避難したのを確認すると、皆が逃げた方に避難し始めた。皆は少し離れたところにある森に避難したようだった。

 少女もそっちに向かおうと足を向けた。森に入って少し経った時、少女は初めて夜空に流れ星が流れていることに気が付いた。


 次から次へと、星が軌跡を描いて流れていた。歌の通り、本当に星が降っているような、とても綺麗だと少女は初めて思った。この時初めて、世界はこんなにも美しいのだと知った。

 少女は避難することも忘れて、しばらくの間その光景に見とれていた。が、突然視界がグニャリと歪んだ。


 少女は立っていられなくなり、その場に崩れ落ちた。少女は自分の身に何が起こっているのかわからなかった。ただ、体がすごく重く、視界がぼやけてきた。助けを呼ぼうにも、声すら出すのが億劫に感じた。


カサッ サクッ パキッ


 目の前の暗闇から落ち葉と枝を踏む音が聞こえた。重い体を何とか動かして顔を上げると、暗闇の中からスッと男が現れた。



「蒼き星の掟に従い、対価をもらい受ける。」



 男は倒れ伏す少女を見下ろして、あの暗闇に包まれていた時の夜のような静かな声で告げた。

 少女はそれ以上意識を保っていることが出来なかった。最後に見た男の星のように輝く蒼いきれいな瞳が、とても美しいとかったのがとても印象的だった。


 最後まで読んでいただきありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[一言] 最後の男のセリフが意味深ですね。 少女が捧げなければならなかったものは何だったんでしょう?
2022/01/20 21:18 退会済み
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