消えぬ絆
「・・・とまあこんな感じ」
「まさか40年、最強の男と呼ばれていた男が相手とはね」
ライルとリアはもちろん、レイルでさえこの事実に驚きを隠せなかった。
「俺らじゃ歯が立たないわけだ」
「でもどうするんですか慎也さん?またそのバルシムって人が襲ってきたら?」
「その時にはやるしかねえだろ。今回みたいに大人しく逃してくれるってわけねえだろうし」
「私とエリシアがいれば・・・って言いたいところだけど、エリシアがあんな状態で帰ってきたら、そうとも言えないね」
「ですよね。バルシムを前にエリシアさんも「レイルさんと一緒でも勝てるかどうか」って言ってましたし」
「私がなんですか?」
「うわびっくりした」
いつのまにか後ろに来ていたエリシアに慎也は少々驚きつつ、体の調子を聞く。
「大丈夫なんですか?リアが怪我だらけで帰ってきたって言ってましたけど」
「そんなもの自力で治しましたよ」
「さすがエリシアだね」
「それじゃあエリシアさんにも話して・・」
「あ、通信魔法で聞いていたので大丈夫ですよ」
「え、通信って誰と?」
「ライルさんの肩、ほら」
エリシアの指したところに小さな魔法陣があり、そこを通してエリシアは慎也の話を聞いていたらしい。
「うわ全然気づかなかった」
「まあそれなら話す必要はないですね」
「それじゃあ私の質問に戻っていいかな?」
「あ、なんでしたっけ?」
「君が狙われた理由だよ。話してくれるんだろう?」
(・・・やっぱ話さないとダメなんかぁ)
あわよくば、と思い一度すっとぼけたが諦めて慎也は意を決して話し出す。
「話す前に、一言言っておかないといけません」
「お、おおどうしたんだい急に?そんな改まって・・」
「実は今から話すことは俺の秘密みたいなものなんです」
「慎也の秘密か」
「なんかちょっと気になります」
「話たまえ」
「はい。実は俺・・・
別の世界から来たんです!」
この場にしばらくの静寂が訪れる。おそらく4人は慎也の言っていることが飲み込めてないのだろう。
「・・・」
(お願い誰か喋って!なんかこれくっそ気まずい!)
「あのー・・」
「・・・!い、いやぁすまない!急に慎也が変な冗談言うもんだから言葉が詰まって・・」
「冗談じゃないですよ」
「・・・」
「んー」
(誰かこの雰囲気をぶち壊してくれる人はいないのだろうか)
「あれ、皆さん揃って何をしてるんですか?」
慎也の期待に応えるかのようにお昼休憩に入ったエテラが5人の元にやってくる。
「あ、エテラさん」
(この人ならワンチャン壊してくれるかな)
「実は今僕が別の世界から来たって話をしてましてね」
「へぇ〜、慎也さんが・・・・って、ええええええ!?」
(ナイスエテラさん)
慎也の期待通りのリアクションをエテラがとってくれたおかげで、周りの視線が6人に集まる。
「ここじゃ人が多いんで、別の部屋に移動しましょうよ」
慎也の提案に乗り、5人はその場から移動し・・
「・・・なんで俺の部屋なんだ?」
普段ハーツが仕事をしているギルドマスター専用の部屋へとやってきた。
「エテラさんが今日のハーツさんは暇だって言ってたんで」
「まあたしかに昨日で仕事片づいちまったしな。だが来るなら事前に言ってくれねえかな」
「いやぁすみません」
「それで?なんかさっきからそこの4人が黙ってるが、なんかあったのか?」
「この際ハーツさんにも話しておきましょうか」
慎也はハーツにもバルシムのこと、そして自分が別の世界から来たことを話した。
「・・・なるほど。その襲ってきた男がバルシムってならさっき感じた魔力も納得がいく」
「ここまで来てたんですか?」
「ああ。魔力を感じ取った瞬間ギルド内だけじゃなく外もちょっとした騒ぎになってたな」
(わーおバルシムすご)
「そして次は別の世界の住人か。今日1日でいろいろありすぎだろ」
「・・・驚かないんですか?」
「驚くより納得かな。お前時々この世界では常識のことを知らなかったりするから、世間知らずか馬鹿だと思ってたんだが、別世界の住人って言われると驚きより納得が勝っちまった」
(そんなことある?そんなに知らないって場面あったっけ?)
「・・・さて、聞きたいことはまだまだあるが、そこの黙ってる4人が今1番聞きたいであろうことを聞いてやるか」
「4人が?」
「てことで慎也、なんでお前は別世界の住人ってことを今まで隠してたんだ?」
「!・・やっぱり気になりますよね」
いつかはくるとわかっていた質問。5人の視線が集まる中、慎也は口ごもってしまう。
(・・・いやこんなこと恥ずかしくて言えねえわ。言ったら恥ずかしさのあまり死んじゃう)
「・・・なんとなくわかったわ」
「え?」
「お前あれだろ?
怖かったんだろ?異世界人だからって気味悪がられて仲間が離れてくのが?」
「っ!?」
「「「「ええええ!?」」」」
「・・図星だな」
まさかの理由に先程から黙っていた4人も驚きの声をあげる。
「・・よく分かりましたね」
「まあ顔に出てたからな」
(俺顔に出ない方だと思ってたんだけどな)
「・・・いいか慎也?」
「え、はい」
「お前は今までいろんな魔物と戦ってきた。ゴブリンウォーリアー、オークキング、ドラゴン、さらにはあの四天王グラドスまで」
(思えばこの世界に来ていろんなことがあったな)
「その時、お前は1人だったか?」
「・・!」
「違うよな?ゴブリンウォーリアーは知らんが、たしかにその時お前の周りにはいたじゃねえか。"信じ合える仲間"が」
(・・たしかにそうだ。俺は1人で戦ってたわけじゃない。俺には仲間がいる)
「エテラ、ライル、リア、俺、エリシア、アイク、ミリユ、ディードは・・・正直わからんが、そしてレイル、みんなお前のことを信頼してる。慎也、お前はどうなんだ?」
「そんなの信頼してるに決まってるじゃないですか」
「・・・ふ、それが聞ければ充分だ」
そう言うとハーツ口角をあげて立ち上がり、部屋を出ようとする。
「ハーツさん?どこに行くんですか?」
「決まってんだろ。あと3人、いねえ奴を連れてくる。そんでもって慎也はみんなに謝れ」
(あと3人って、アイクさんたちか)
「はい・・」
「そして謝罪が終わった後は、みんなで会議だ」
「会議?てことは・・」
「ああ、バルシムが世界を壊すと言うならこっちも抵抗するまでだ」
「いいんですか?死ぬかもしれないんですよ?」
「いいに決まってんだろ?この世界は俺たちのもんだ。過去の人間に壊させるつもりはねえ。それに、俺らは慎也の"仲間"だぜ?お前の敵は俺らの敵でもあんだよ」
そう言うとハーツは部屋を出て行った。
(・・・慎也はほんとに馬鹿だな。あんな理由で秘密にしてるとか。でも・・)
ハーツは今まで自分が見てきた慎也を思い返す。
「人のために馬鹿なことを出来る奴は好きだな」




