40年前の伝説
「・・・なんだ、今の」
(これが、4割?)
今対峙している男の実力をその身を持って感じた3人はその場に立ち尽くし絶句することしか出来なかった。
「・・驚きのあまり言葉を失ったか」
(こんなの勝てるわけない。いや勝てたとして、俺はこれからこんな奴を何人も倒さねえといけねえのかよ)
「・・・エリシアさん、勝てますか?」
「正直言って無理です。レイルさんと2人がかりでも勝てるかどうか・・」
「マジかよ」
(俺とライルじゃレイルさんの足元にも及ばない。ここで終わんのかよくそ!)
「それじゃあ最後の瞬間まで足掻けよ、お前ら」
そう言うと男は剣に魔力を込め始める。すると何かを決意したような顔をしてエリシアが2人より少し前に前進する。
「エリシアさん?」
「お2人とも、リアさんを連れて街に戻ってください」
「!・・エリシアさんは?」
「もちろん時間稼ぎですよ。この中で唯一彼とまともにやり合えるのは私だけですから」
「・・・それしかないか。慎也、ここはエリシアさんに任せようぜ」
(本当は俺がこいつと戦わないとしかけないんだけどな、この状況じゃそれが最良か)
「わかりました。エリシアさん、ピンチになったらすぐに逃げてくださいね」
「わかりました」
エリシアの答えを聞いた慎也とライルは男の後ろで倒れているリアの確保をするため、距離を取りながら旋回する。
「それを俺が許すと思ったか?」
しかしそれを大人しく見てるはずもなく、男は慎也に斬撃を飛ばす。すると横から入ってきた炎の球が斬撃に触れて爆発して相殺される。
「ほう・・」
「戦いの最中、よそ見はいけませんよ」
「・・・ふ、たしかにそうだな。それに、あんな雑魚どもを相手にしてるよりお前と戦った方が有意義そうだしな」
「それはこちらとしても好都合です」
リアを連れて離れて行く2人を横目に確認したエリシアは杖に魔力を込め始める。
「見せてみろ!お前の本気を!」
「ええ、お望み通り。『マジックグロウ』!」
「はぁ・・はぁ・・!」
「慎也!大丈夫か!?」
エリシアの言う通りにあの場を離れ、街に向かう2人。しかし慎也は男に負わされた怪我やダメージが重なり限界を迎え、その足取りは不安定なものとなっていた。
「悪りぃ、さっき行っててくれ。怪我治してから追うわ」
「あ、ああわかった!早めに治せよ!」
そう言ってライルはリアを背負ってその場を離れて行った。
「『ヒール』」
(エリシアさん、大丈夫かな)
2人の戦闘音は少し離れた場所にいる慎也にまで届いており、慎也がその轟音だけでどれだけ激しい戦いが繰り広げられているか想像するのは容易だった。
(あの人のことを少しは信用してるけど、それ以上にあの男の強さが頭おかしいんだよな)
男の強さをその身を持って味わった慎也、だからこそエリシアのことが心配になってしまう。それからエリシアのことを気にかけながらも傷を順調に治していく慎也。そんな慎也に突然"謎の声"が語りかける。
『ひどくやられたみたいだな』
(お前か。なんか久しぶりに感じるわ)
その声はピンチな時にいつも慎也に『ブーストアイ』を貸し、なんやかんや慎也を助けている者のものだった。
(で、なんだ?また『ブーストアイ』を貸してくれんのか?)
『違う。今回は奴のことについて話しておこうと思ってな』
(・・・・なんか知ってんのか?あいつについて)
謎の声の言う"奴"、それが先程の男のことと慎也がわかるのはすぐだった。
『ああ。あいつと戦う上でいろいろと話しておかないといけないからな』
(悪いが手短に頼む。ライルに心配はかけられないからな)
『わかった』
一瞬間を開けてから謎の声は話し始めた。
『お前は40年前の伝説を知っているか?』
(また40年前か。知らんけど)
『なら大まかに1から話そう。40年前、"バルシム"という冒険者がいた。その冒険者は『世界を救う』という強い意志を持った青年で、その性格は正義を具現化したようなもので、常に悪を憎んでいた。さらに、そのバルシムは実力もかなりあり、今もかなり希少なSランクスキルを持っていた。そして奴は同じ意志を持つ3人の仲間を引き連れて、次々と魔物たちを倒していき、さらにはあの四天王を全員倒してしまった』
(四天王をか、強いなそのバルシムって奴)
『ああ、おそらく歴史史上最強の男だろう。そしてバルシムはついに魔王城まで辿り着いた。しかしそこで問題が発生した。なんと仲間の3人が魔王の呪いで体が動かなくなってしまったのだ』
(へぇ〜、結構やばいな)
「そしてバルシムは仲間を連れて街に戻って呪いを解く方法を探すか、魔王を討つために進むか、心の中でそう葛藤が続いていた。そして結果、バルシムは仲間を近くの宿に預け、1人で魔王に挑む道を選んだ』
(ほーん。それで?)
『魔王城に潜入し、数時間でようやく魔王のところまで来ることができたバルシム。そしてバルシムは魔王と半日にもわたる死闘の末、惜しくもバルシムが倒れ、殺されてしまった』
(うわぁ・・)
『その知らせは瞬く間に世界に広がり、それを聞いた者たちは悲しみの涙を流し、しかしそれと同時にその功績を讃えてバルシムは伝説になったのだ』
(なるほど、それが40年前の伝説なのか)
『さて、これを聞いてお前はどう思った?』
(バッドエンドっちゃあバッドエンドだけど、最後はいろんな人にちゃんと悲しんでもらえたんだろ?それならちょっと良い話だなって思った)
『まあ誰もがそう思うだろうな。一見何の変哲もない勇敢な男の物語。しかし・・・
この話に"最悪な続き"があるとしたらどうだろうな?




