謎の男
(え、あ、なになに?)
急に話しかけられて少々驚きながらも慎也は声のした後ろの方に向く。そこには軽く180は超えた高身長のガタイのいい、黒色のローブを身につけた灰色の髪の男が立っていた。
「今俺に話しかけたんですよね?」
「お前以外いないだろう」
「ですよねー。で、俺に何の用ですか?」
「実は今人を探していてな。"村上"慎也って奴なんだが・・」
(俺じゃん。まあ最近、紅青の救世主って名前で有名だからな。もしかしてファンか何かかな?)
「村上慎也は俺ですね」
(・・・あれ、てかこの人なんで俺の苗字知ってんだ?誰にも教えた覚えないんだが)
「そうか。お前が村上慎也か・・」
目の前にいる男が慎也だと分かった瞬間、謎の男の右に魔法陣が現れ、そこから剣のグリップが出てくる。男はそれを掴んで引き抜く。
「え、何・・」
「お前が村上慎也なら・・・ここで死んでもらう!」
そう言い放ち、男は慎也に斬りかかった。
(速っ!?)
慎也は咄嗟に剣を抜きガードする。間一髪でガードは間に合ったが、衝撃に耐え切れず慎也は後ろに木を数本突き破るほどの勢いでぶっ飛ばされる。
「ぐはっ!」
(なんて威力だよ!?俺より絶対レベル高えじゃねえか!)
「おいおい、もしかして1発で終わるなんてことねえよな?」
「当たり前だろ!俺はあの四天王にだって勝ったんだ!あの程度で死ぬか!」
「ほう、四天王を。今の四天王がどれほど強いのか知らんが、魔王が40年前と変わってないならそれはすごいな」
「40年前?何の話をして・・」
「まあそんなことはどうでもいい!今はこの戦いに集中しようぜ!」
そう言うと男は再び慎也に斬りかかる。
(やるしかねえか!)
そう思い慎也は足と剣に魔力を込めて男に斬りかかり、お互いの剣がぶつかり合う。
「弱い!」
「!?」
しかし力は男の方が上のようで、慎也は力負けして後ろにぶっ飛ばされる。
「まだまだいくぞ!」
飛ばされる慎也、それを男は高速で移動して追いかけて剣で連続で追撃する。慎也は辛うじてガードし続けるが、男の攻撃の衝撃を受け続ける腕と木に激突し続ける体はすでにボロボロである。
(こいつ強すぎるだろ!)
「おらでかいの1発いくぜ!『ハードスラッシュ』!」
武技によって強化された剣を男は振り、慎也をさらにぶっ飛ばす。そしてとうとう慎也は森を抜けて草原まで飛ばされてしまい、2人の戦場は森から草原になった。
「おいおい!その程度か村上慎也!」
「ぐっ!」
(これ『ブーストアイ』使えたとして勝てるのか?今の俺がこの様ってことはこいつの実力エリシアさんやレイルさんと同等ってくらいだぞ)
「・・・どうやらお前のお仲間のご登場だ」
「え?」
その瞬間、男の後ろから火の球が飛んでくる。それを男は容易く剣で真っ二つにし、魔法の発動者を見る。
「今のは『ファイヤーボール』か」
「魔力で気づかれないようにレベル1にしたんですけど、無駄でしたね」
「リア!?」
2人の視線の先にはリアがいた。
数分前。
「やっと終わったな」
「この魔物素早くて面倒だったなぁ」
ポイズンドッグを仕留めた2人はその場で休みつつ、慎也の帰りを待っていた。
「・・・?リア、なんか今でかい音しなかったか?」
「そう?私は聞こえなかったけど」
「そうか。気のせいか」
しかし少しするとその音は再び鳴り、それどころか徐々に2人に近づいてきていた。
「いややばいだろこれ」
「何か2つの魔力が近づいてきて・・・ライルあっち!」
そうリアが指を指した瞬間、その方向に突然慎也が飛び出してくる。それと同時に謎の男が現れ、慎也をさらにぶっ飛ばしていく。
「あれは慎也さんと・・・誰だろ?」
「なんか今戦ってなかったか?俺たちも行ったほうがいんじゃね?」
「・・・待ってライル」
「どした?早く行かねえと慎也が危ねえぞ」
「今の人、慎也さんを一方的に攻撃できるほどの人だよ?私たちが行っても意味ないんじゃ」
「じゃあどうすんだよ?」
「足はライルの方が速いから、ライルが街に戻って誰か呼んできて。私は慎也さんを助けに行く」
「わかった。それじゃあ頼むぞ!」
そう言ってライルは街に向けて走り出した。
「私も早く行かなくちゃ!慎也さん待っててください!」
「慎也さん大丈夫ですか!?」
「なんでお前がここに!?」
「さっき慎也さんがこの人に攻撃されてるのを見て急いで来たんですよ!」
(わーおめっちゃ恥ずかし!俺フルボッコだったんだよなぁ)
「2体1になったんだ、少しはマシになれよ?」
「当たり前だ!むしろお前ぶっ飛ばしてやる!」
「援護は任せてください!」
「りょーかい!」
返事を返して慎也は男に向かって走り出す。それと同時にリアは氷の刃を放ち、挟み撃ちの形になる。
「甘えよ」
男は自身の体を1回転させてそれと同時に勢いよく剣を振り、氷の刃と慎也に衝撃波の斬撃を放つ。それを慎也はしゃがんで躱すが、リアの放った氷の刃は横に真っ二つに切断される。
「『ツインスラッシュ』!」
「俺相手にレベル1は舐めすぎじゃねえのか?」
慎也の放った強化された2連撃を男は一切表情を変えずに受け切り、剣に魔力を込めて横に振る。
(これぐらいなら!)
慎也はそれを飛んで躱してそのまま落下の勢いに任せて剣を男に振る。しかし男は腕で、しかも魔力を込めていないで受け止めて慎也の剣を弾く。
「そんな攻撃力で俺に傷をつけれると思ったか?」
(あ、オワタ)
「魔法は防御力関係無しですよ!『フレイムボム』!」
リアの放った魔法が男に命中し爆発する。それを見て慎也は距離を取り、すかさず自分と同じ魔法を放ち攻撃する。しかし男はそれらを物ともせず、爆煙を斬り払う。
「たしかに魔法は防御力貫通だが、魔力を込めればどうと言うことはない」
(マジか!)
「それじゃあ今度は俺のターンだ!」
「気を付けろよリア!」
「はい!」
(こいつの攻撃は俺らよりも強い。一撃も喰らっちゃ・・)
「おせーよ」
「え・・」
男は2人が肉眼で把握できないほどのスピードで、移動し、気づけば慎也の目の前に来ていた。そして男は慎也の腹部を剣で斬り、真上に斬り飛ばす。
「ぐはっ!?」
「痛みに苦しんでる暇なんてねえぞ!『岩壊斬』!」
「っ!?」
吐血する慎也だったが、すぐに今度は男が慎也の少し上まで飛び、強烈な一撃をお見舞いする。咄嗟に慎也は体を回転させて剣で攻撃をガードするが、攻撃に耐えきれず剣は刃が切断されて慎也は胴体に大きな傷を負いながらリアの元までぶっ飛ばされる。
「慎也さん!」
「リア、あいつから目を離すな!」
「『衝弾撃』!」
リアに向かって男が球状の衝撃波を放つ。それに気づかなかったリアは衝撃波を直に喰らい、後ろの木までぶっ飛ばされる。
「リア!」
「戦闘中によそ見は厳禁だぜ?嬢ちゃん」
「てめえ・・」
「さて、それじゃあそろそろお前には死んでもらうぜ」
(こんなところでやられてたまるか!俺は結界を壊して世界に入ってきた奴を倒さねえといけねえ・・・ちょっと待てよ。もしかして・・)
「お前なのか?結界を壊してこの世界に入ってきたのは?」
「お、やっと気づいたのか」
自分の標的が目の前の男だったことに驚く慎也。しかしそれと同時に慎也の「ここで死ねない」という気持ちが膨れ上がる。
「お前がそうなら尚更死ねないな」
(出し惜しみは無しだ!ここで本気を出す!)
慎也は目を閉じ、心の中で懇願する。
(力を貸してくれ、イム!)
慎也の左目が青に染まり、『青き絆』が発動した。




