竜との遭遇
「さっそく竜のお出ましか!」
3人の前に現れた竜は二足歩行の7mほどの高さの体をして、そこからは長く太い腕と脚、強靭な爪が生えている手足、そしてその体は隅々まで白い鱗を纏っていた。
「なんでお前そんなにテンション上がってんだ」
「だってあの四天王に次ぐと言われるほどの実力がある竜が今目の前にいるんだよ!?そりゃあ上がるでしょ!」
(え、四天王に次ぐ?そんなの初めて聞いたんだけど)
「・・なんか慎也が「は?四天王に次ぐ?初めて聞いたわ」みたいな顔してるぞ」
(どんな顔だよ)
「あれ?言ってなかったっけ慎也君?」
「そんな話1度もされてませんよ」
「あれれ〜?」
竜を前にして3人は呑気に話していると・・
『おい人間よ』
竜が3人に話しかけた。突然のことで3人はその場で固まっているが、気にせず竜が続ける。
『貴様らはなにゆえこの神殿に来た』
「・・・え、あ、そ、そうだな。わ、私たちは覚輪花という花を求めてここに来たのだ」
(竜って喋るんだ!?)
『なるほど。覚輪花というと、これのことか?』
そう言うと竜は体を横にずらして尻尾で後ろの壁のある一点を指す。そこには白い花が数本咲いていた。
「おお!私たちはそれから取れる花粉が必要なんだ!」
『そうか。だがただではやれんな』
(お願いします!戦闘は無しで・・)
『この俺を倒してみせろ!それがこいつをやる条件だ!』
「やっぱりそうくるか!くぅ〜!腕が鳴るよ!」
「なんでこの人嬉しそうなんですか?」
「レイルはとにかく戦いが好きでな、無駄な戦闘を避けるエリシアとは真反対の性格なんだ」
「やだなその性格」
「だが実力は本物だ。正直こいつがいれば竜にも勝てると思ってる」
(そんなに強いのか。いやまあSランクに1人でいけるくらいだし当然か)
『ではいくぞ!』
「来い!」
こうして3人と竜の戦いが始まった。
戦闘開始。先制を取ったのは竜で、口から炎のブレスを3人に向けて一直線に放つ。
(やべ!)
ハーツと慎也の2人はブレスをそれぞれ左右に躱す。一方レイルは左の壁に飛び、足でさらに壁を蹴り竜との距離を一気に詰める。
「お返しだ!」
レイルは剣に魔力を込め、それによって剣に雷を纏わせる。そしてそのまま剣を振り攻撃するが、竜に腕でガードされる。
「なに!?」
鱗に守られ、攻撃を受けたところには傷はついていなかった。
『その程度の攻撃が俺の鱗に通用すると思うなよ!』
「嘘と言ってくれよぉ・・」
(いやこの人一応エリシアさんと肩を並べるほどの実力なんでしょ?やばいなこの竜)
レイルの着地と同時に竜はレイルに炎を吐き攻撃する。レイルは瞬時に反応し、横に飛んで躱す。
(俺も行くか)
意識がレイルに向いているうちに慎也も竜に近づいていく。それに気づいた竜は炎を吐くのを止め、尻尾で地面を薙ぎ払う。
「やべ!」
慎也とレイルは咄嗟に上に飛んで尻尾を躱す。しかしそれを狙っていたかのように竜は2人を左右の壁に殴り飛ばす。レイルは間一髪で剣でガードしたが、慎也は反応できずにもろに喰らってしまう。
「ぐはっ!」
(いって!なんだよこの威力!頭おかしいんじゃねえの!?)
「慎也君!大丈夫かい!?」
「帰りたいって気持ちが増しました!」
「大丈夫そうだね!」
(いやどういう捉え方?)
「2人とも一旦戻ってこい!『トラストレイン』!」
ハーツは数十本の矢の雨を竜に放つ。その間に2人はハーツの元に戻る。ハーツの放った矢たちは竜の体に当たっても全て弾かれてしまう。
「かってえなあいつの体」
「私の攻撃でも傷がつかないとはな」
(俺は攻撃すらしてないけどね)
「もういっそのことレイルがスキルを使えば良くないか?」
「チャントスキルをかい?私としてはまだ様子見をしたいところなんだが・・」
「でもこのままだとやられるのも時間の問題ですよ?」
「んー・・」
『いつまで話してるつもりだ!来ないならこっちからいくぞ!』
痺れを切らして竜は3人に炎を放つ。3人はそれぞれ別の方向に飛んで、竜を囲む。
「・・・仕方ない、使わずに負けるよりはマシか」
そう言うとレイルは剣を地面に突き刺し、スキルを唱える。
「『ソードプリンセス』!」
・・・しかしレイルの体に変化は起きなかった。
「あ、あれ?」
「レイルさん?もしかしてスキルの名前間違えたんですか?」
「長年共に生きてきたスキルを間違えるわけがないだろう!もう一度、『ソードプリンセス』!」
しかしスキルは発動せず、レイルは困惑していた。
「・・まさか!?『アロードール』!」
何かに気づき、ハーツもチャントスキルを唱えるが、ハーツの腕に変化はなかった。
「くっそマジかよ!」
「どうしたんですかハーツさん?」
「この部屋、チャントスキルが使えねえ!」
「・・・嘘でしょ?」
「それは困ったねぇ」
『ふっふっふ、その通り!この神殿の中ではあらゆるチャントスキルが無効化される!それでも使いたいと言うなら、この神殿を破壊するんだな!』
「ならそうさせてもらう!『グランドブレイク』!」
レイルは剣を振り、雷を纏った白色の光線を壁に向かって放った。しかし壁には小さなひびが1つ入っただけだった。
「硬っ!?」
『貴様ではここは壊せないというわけだ!残念だったな!』
(レイルさんで無理ならダメだな)
「チッ、仕方ねえ!チャントスキル無しでこいつを倒そう!」
『俺を倒すだと?寝言は寝て言うんだな!』
(普通に寝言になりそうだから怖いんだよな)
『まずは1番弱そうなてめえからだ!』
そう言うと竜は慎也に連続で火の球を放つ。次々と来る攻撃を慎也はなんとか躱していく。
(・・・ここだ!)
火の球を躱すのと同時に慎也は上に飛び、左手に魔力を込め始める。
(魔力たっぷりのこいつを喰らいやがれ!)
「『フレイムボム』!」
慎也は竜の顔面目掛けてオレンジ色の球を放つ。それは見事に命中し、竜の顔に触れた瞬間魔法は爆発する。
(よし!これでいくらかダメージは・・)
『効かんわ!』
「なに!?」
魔法が直撃したにも関わらず竜は怯まず空中にいる慎也を壁に殴り飛ばす。ガードしようとした慎也だが間に合わず、慎也は竜の攻撃と壁に打ち付けられたのが重なりかなりのダメージを負う。
「ぐはっ!」
(やべぇ、そろそろキツ・・)
『これで1人目だ!』
そう言うと竜は火の球を放ち、慎也に追い打ちをかける。
「くそ!『ウィングウォール』!」
慎也は咄嗟に風の壁を貼り防ごうとするが、壁は火の球に突破され、火の球は慎也に直撃し、爆発を起こした。
「慎也君!!」
「大丈夫だレイル!死んではない!まだ魔力の反応がある!」
「そうか。なら早くこいつを倒して助けないとね!」
レイルは剣に魔力を込め雷を纏わせ、竜に突撃する。
『次は貴様か!』
竜は再び複数の火の球をレイルに放つ。しかしレイルはそれを全て躱し、竜の腹部に飛ぶ。
「『神速剣』!」
レイルは物凄いスピードで竜の腹部を斬りつけるが、竜の体には一切傷はつかない。
「くっ!やはり無理か!」
『攻撃力が足りねえぜ!』
「っ!」
竜は回転してレイルを尻尾で薙ぎ払い、壁に飛ばす。
「ぐっ!」
『これでてめえも終わりだ!』
「まずい!」
倒れたレイルに竜は容赦なく何発もの火の球を放つ。レイルもなんとか剣で全て捌こうとするが、流石に火力も数もあるため数発喰らってしまう。
「レイル!」
『最後はてめえだ!』
「くそ!こうなったらやけくそだ!」
ハーツは弓を構え、自身の魔力を全て弓に込め始め、『ドラゴントラスト』の体勢に入る。
『最後の悪あがきかなんかか?』
「最後になるかは今から次第だ!『ドラゴントラスト』!」
ハーツの放った矢は光る竜へと形を変えて竜へと向かって行った。
『中々なものだが俺には無意味だ!』
向かってくる竜の矢を竜は炎のブレスで迎え撃つ。そして竜の矢は虚しく炎に貫かれ消滅してまい、そのまま炎はハーツに直撃して爆発してハーツも壁に叩きつけられる。
「く、そ・・」
『てめえらも結局大したことなかったな。そこの女は少し期待したんだが、結果はこの様だ』
「わりぃディード。てめえを助けられそうにねえわ」
『それじゃあ、あばよ!』
そう言うと竜はトドメにハーツに炎の球を放った。
「させるかぁぁぁぁぁ!!!!」
その声と共に炎とハーツの間に慎也が入ってくる。
「慎也!?」
「ハーツさんは死なせねえ!『トルネードトラスト』!!」
そう唱えて慎也は剣を前に勢いよく突き出し、風を纏う光線を放ち、火の球にぶつける。
『てめえが出たところで無駄なんだよ!』
(なんて威力だよこれ!やべぇ、あいつの攻撃で負ったダメージが・・!)
先程の攻撃が効いたのか、慎也の『トルネードトラスト』が徐々に押されていく。
「負けて、たまるか!」
「慎也諦めろ!お前じゃ無理だ!」
「俺とあいつとでは差がありすぎるって言いたいんですか。だから諦めろって言いたいんですか!」
「そうだよ!お前じゃあいつには勝て・・」
「・・・ハーツさん。自分が諦めた時に、失うものを考えたことはありますか?」
「何言って・・」
「たしかに、時には諦めも肝心です。ですが、それで自分の大切なものを失うことになったらどうするんですか!」
「!・・」
「俺は諦めません!ここで諦めたら仲間を、ハーツさんを失ってしまいます!」
「慎也・・」
「ぐっ!」
竜の炎をほぼ目の前まできており、絶体絶命である。
(・・・頼むイム。もしまだ俺の中にいるんだったら、もう一度力を貸してくれねえか?仲間を守るために!)
そう懇願すると慎也の左目が青く染まる。
「!・・サンキューイム!」
イムの力が上乗せされ、『トルネードトラスト』の威力が上がり、炎を押し返していく。
「俺の勝ちだぁぁ!!」
『なに!?』
慎也の『トルネードトラスト』が竜の火の球を貫き、そのまま竜へと向かっていく。咄嗟に竜は頭を傾けて躱し、『トルネードトラスト』は竜の後ろの壁へと行き、そのまま壁を破壊して外へと飛んでいくのであった。
「あとは任せましたよ、レイルさん」
そう言うと慎也は前のめりに倒れた。するとそれと同時に倒れていたレイルが立ち上がり、剣を持って竜にゆっくりと歩いていく。
「竜よ。1つ教えておこう」
『ああ?』
「この世界にはここだけなくいろいろな神殿がある。そしてもちろん他の神殿たちも中に入るとここと同様いろいろな効果がある。しかしだ、神殿のどこかが少しでも破壊された場合、その神殿の効果は無くなってしまう。この意味がわかるかい?」
『少しでも破壊されたら・・・まさか!くそが!』
レイルの話であることに気づいた竜はすぐさまレイルに火の球を放つ。
「・・・『ソードプリンセス』」
そう唱えた瞬間、目前まで来ていた火の球を浮遊する青く光る剣が縦に真っ二つに切断する。
「さあ、こっから反撃といこうか!」
そう言ったのは光のティアラを頭につけ、光のドレスに身を包んだレイルである。そしてその周りを2本の青く光る剣が飛んでいた。




