第8話 魔物と共闘
武具屋を出て数分後。慎也はギルドの中にある掲示板を見て、考え込んでいた。
(薬草採取にスライム討伐、それにゴブリン討伐か。まぁEランクだしこのぐらいが普通だよな。よし!せっかく剣持ってんだし討伐系にするか!)
慎也は掲示板からクエストの紙を一枚取る。その紙には、スライム5匹の討伐と書いてあった。慎也はその紙を持ち、受付へ向かった。
「すみません、クエストを受けたいんですけど」
「では冒険者カードとクエストの紙をお見せください」
「わかりました」
慎也は受付の男性にカードとクエストの紙を渡す。
「お名前は村上慎也、ランクはEでクエストはスライム5体の討伐っと」
男性は慎也からカードと紙をもらうと、リストのようなものに慎也の名前やランク、クエスト内容を書き始めた。
「記載が終わりましたのであなたはこのクエストを受けたことになります。キャンセルしたい場合は、いつでも言ってください。では次にこれを」
男性は慎也に理科の実験でよく使う、試験管と同じ大きさのふた付きの瓶を5つ、渡した。
「これは?」
「それはスライムの討伐の証明に必要な、倒した時にスライムから出てくる液体を入れるものです」
「なるほど」
「スライムは基本、街の門を出て北に少し歩いたところで、数匹のグループを作って行動しているので、すぐに見つかると思います」
「わかりました。わざわざありがとうございます」
「いえいえ、これも仕事ですから」
慎也は男性に一礼し、言われた通りの場所へ向かった。
(なんかこれ、昨日も見た気がする)
慎也は受付で言われた通りに移動してスライムを探していると、6匹のスライムを見つける。慎也はさっそく倒そうと剣を抜き、斬りかかろうとしたときスライムたちの様子が少し変だと思い、慎也は足を止めてどうしようかと考えた結果、様子を見ることにした。そして観察を始めて4分になったところで慎也はあることに気づく。それはこのスライムたち、6匹ではなく正確に言うと"5匹と1匹"なのだ。その時、慎也の頭の中に昨日の光景がよみがえる。
(いや、まさかな)
慎也はそう思いながら観察を続けた。そしてさらに2分が経った時だった。1匹のスライムが5匹の前でぴょこぴょこと跳ね始める。するとそれを見ていた1匹が、跳ねているスライムに頭突きをする。すると頭突きをされたスライムが慎也の足元に飛んでくる。
「だ、大丈夫か?」
「!」
スライムは慎也の声を聞くと慌てて身体を起こし、慎也の顔を見ると足に身体を擦り寄せてきた。そのスライムの行動から、慎也は昨日会ったスライムだと理解し、声をかける。
「昨日ぶりだな・・・ん?」
スライムが人間である慎也と親しくしていたのを悪く思ったのか、近くで見ていた5匹のスライムが慎也たちを五角形を作るように囲んだ。
「そっちから来るなら好都合だ・・・お前はどうする?」
「?」
慎也は足元にいるスライムに問いかけるとスライムは不思議そうに慎也を見ている。すると慎也の後ろにいる1匹のスライムが慎也めがけて頭突きをしてくる。足下にいるスライムがそれを見るなり慎也を守るかのようにそのスライムと激突する。
「それは一緒に戦うってことでいいんだな?」
「!」
スライムは慎也の問いに答えるように跳ねる。そして慎也は剣を抜いて構える。
「いくぞ!」
「!」
こうして慎也とスライムの初めての戦いが始まった。先手をとったのは敵のスライムだ。慎也の右斜め前にいたスライムが慎也めがけて飛んできた。
「あめーよっ!」
慎也はその動きに反応して剣を上から下へと振り下げスライムを斬る。スライムの体は真っ二つになり地面に落ちる。すると真っ二つになったスライムの体から青い液体が出てくる。
(これがあの受付の人が言っていた液体か)
慎也が身体から出てくる液体を見ていると、それを隙ありと言わんばかりに慎也の後ろにいた敵のスライムが慎也の背中に頭突きをする。
(痛っ!くそっ油断した!)
頭突きをしたスライムが跳ね返り、地面に着地しようとすると味方のスライムがその着地に合わせて頭突きをする。頭突きをされたスライムは5mほど遠くに飛んでいった。
「ナイスだ!そのスライムはお前に任せる!」
「!」
その言葉聞き、味方のスライムは飛ばしたスライムの方へ向かった。その様子を見た慎也は残りの3匹に目線を移す。
「さてと、お前らの相手は俺がしてやる。どっからでもかかってこい!」
「「!」」
慎也の言葉を聞いた3匹のスライムのうち2匹が慎也に襲いかかる。
「動きが単純なんだよ!」
慎也は剣を持つ手を両手から右手に変え、右から飛んでくるスライムに突き刺し、空いた手で飛んでくるもう1匹を殴る飛ばす。慎也は刺した剣を抜き、残った1匹に向ける。
「あとはお前だけだけど、どうする?」
「!」
スライムはまだ諦めてないらしく、慎也に向かって飛び込む。慎也は体を横に傾けて攻撃を躱し、剣を横からスライムに突き刺す。
(こっちは終わったな・・・あいつは大丈夫か?)
慎也は周りを見渡すと、数メートル先でスライム同士が戦っているのを見つける。慎也はそれに気づくと、駆け足で近づく。
「助けに来たんだけど・・・どっちが敵?」
全く同じの体をしている2匹のスライム。そのせいで慎也は、どちらが敵か味方かわからなくしまっている。
(これどう見分ければいいんだよ。何かあいつだってわかる方法はないか・・・そうだ!)
何かを思いついたのか、慎也は背負っているリュックを下ろし、中からサンドウィッチを取り出した。
「おーいスライムー!今俺のところに来たら昨日あげた食べ物、もう一回あげるぞー!」
慎也がそう言った瞬間、戦っているスライムのうちの1匹が動きを止め、慎也のところへ行った。
「てことはあいつが敵だな」
慎也は近づいてきたスライムにサンドウィッチを投げて、残ったスライムめがけて走り出し、あと数十cmというところで慎也はスライムを剣で斬る。斬られたスライムの身体からは青い液体が出てきた。
「さて、それじゃあ回収始めますか」
慎也はギルドでもらった小瓶を取り出し、液体の回収を始めた。