お見舞い
(・・・また来たなこの暇な時間)
あれから慎也はハーツと少し話した後救護室に直行して今は自身のベッドで横になっている。
(2度寝を決め込みたいんだけど全然寝れねえし、なにかしようにもやることねえしな、どしよ)
慎也がどうしようか悩んでいると、救護室の扉が開き男女2人が入ってくる。
「あ、慎也さん起きてたんですね!」
「やあ慎也君、あの戦い以来だね」
「あ、ミリユさん。それにアイクさんま・・・っ!」
入ってきたのはミリユとアイクだったが、アイクの腕を見た瞬間慎也の顔が険しくなる。慎也の表情で気付いたのか、アイクは今は無き右腕に目線を向けて乾いた笑みをこぼす。
「アイクさん、それ・・」
「やっぱり気になっちゃうか。あの時グラドスにやられたものだよ」
「改めてあの光景を思い出すと少し気分が悪くなりますよ」
「冒険者は引退するんですか?」
「いや、片手でも槍は振れるからね、まだ引退はしないよ。ただ片手に慣れるためにしばらくはCランクの魔物相手に練習かな」
「たまに私も手伝いますよ。もう少しでAランクに昇格ですから、レベルを上げておかないと」
「それは助かるよ。万が一ってのもあるしね」
「ちなみに他の人たちはどうなんですか?やっぱ引退する人がほとんどですか?」
「そうだね。僕は運が良くて右腕だけで済んだけど、両足をやられた人や腕と足が1本ずつやられた人、最悪の場合は腕1本しか残らなかった人もいるよ」
「うわぁ・・」
「私もいろんな人を見てきましたが、かなり痛々しかったですよ」
「そりゃあそうでしょうね」
(てかとなるAランク冒険者は実質ハーツさんだけか)
「あ、そういえばアイクさん。さっき言ってた物ってなんですか?」
「すっかり忘れてたよ。ちょっと待ってね」
そう言うとアイクはベッド横の机の上に左手に持っていた袋を置き、中から緑色に輝くなにかを取り出す。
(袋持ってたんだ。右腕に気を取られて全然気付かなかったわ)
「あ、まさかアイクさん、それは!」
「ああ。エメラルドフルーツだよ」
「エメラルドフルーツ?」
「慎也さん知らないんですか!?世界で一二を争うほどの美味しさを誇る果物ですよ!」
「そんなに凄いんですか。というかそんなのどうやって手に入れたんですか?」
「実家から送られてきたんだよ。なんか親戚の人がくれたから毎日頑張ってる僕にって」
「中々いいご家族をお持ちで」
「ほんとに僕は恵まれてるよ。さてと、じゃあさっそく3つに切ろうかな」
「え!?私にもくれるんですか!?」
「さすがに目の前でこれを食べるなんてこと出来ないよ。少し待っててね」
そう言うとアイクは持参してきた包丁とまな板を袋から出してエメラルドフルーツを切り始める。
(3等分とか出来んのか。かなり難しいと思うけど・・)
「そういえば慎也さん」
「はい?」
「冒険者の中で慎也さんを尊敬し出す人が出てきてることって知ってます?」
「俺を?」
「それなら僕も知ってるよ。たしか慎也君の友達がやられて慎也君が怒ってグラドスに立ち向かう姿を見た冒険者たちが慎也君を尊敬し始めたんでしょ?」
「へぇそうなんですか」
(俺の知らんうちになんか変なことになってたのか)
「まああの時の慎也さん、少しかっこよかったですから」
「それはどうも」
「はい、切り終わったよー」
アイクは持参していた皿を出して3つに分けたエメラルドフルーツを乗せて2人の前に出す。
(まるでメロンだな)
「それじゃあいただきます!」
そう言うとミリユは実の部分に勢いよくかぶりつく。するとなぜかミリユの目から涙が出てきた。
「え、ミリユさん?」
「どうしたんだい?もしかして口に合わなかったとか・・」
「いえ、むしろ合いすぎて泣けてきました!こんな美味しい物を食べれる日が来るとは思ってなかったので!」
(逆に今まで何食ってきたんだよ)
「そうですか。それじゃあ僕もいただきます」
慎也もミリユと同じようにエメラルドフルーツにかぶりつくと、その瞬間目を見開いて驚く。
(なんだこれうま!?)
「お味はどうだい?」
「美味しいです!正直食後のデザート全部これで良いくらいですよ!」
「そこまで言われると持ってきた甲斐があったよ」
(こんなに美味しいのがあるんだ。世界は広いなぁ・・・・いや異世界だから知らなくて当然か)
「じゃ、僕もいただこうかな」
その後は3人で軽く談笑しながらエメラルドフルーツを食した。
「あー美味しかったです!」
(やっぱり甘いは正義だな)
「それじゃあ僕はそろそろ行くよ」
「あ、わざわざお見舞いに来てくれてありがとうございました」
「気にしなくていいよ。共に街を守った仲間じゃないか」
「じゃあ私もそろそろ行きますか」
「ミリユさんもありがとうございました」
「いえいえ、礼なんていいですよ。それじゃあまた来ますね慎也さん!」
そう言うとミリユは扉を開けて救護室を出て行き、それを追いかける形でアイクも救護室を出て行った。
(2人のおかげで結構時間潰せたな。そんじゃ寝ますか)
そう思い慎也はベッドに横になり眠りについた。
「・・そういえばミリユさん」
「はい?」
「たしか慎也君に聞きたいことがあるって言ってなかったっけ」
「あ、そういえばそうでした」
「ちなみに何を聞く予定だったの?」
「"黒いオーラ"のことです」
「黒いオーラ?」
「ハーツさんと拠点で見てた人たち以外は知らないと思いますが、慎也さんがグラドスと戦う時に使っていたんですよ」
「へぇ〜、それは気になるね」
「けどまあ、またこんどお見舞いしに行った時にでも聞こうと思います」
「そうだね」




