大切なもの
(な、なんだ一体!?何が起こってる!?)
突然の慎也の変化に驚き、困惑するグラドス。しかしここであることに気付く。
(・・・待てよ?今奴はあんなにも苦しそうにしている。殺すなら今しかないんじゃないか?)
そう思いグラドスは再び剣に魔力を込め始める。
『死ね!『ヘルブレ・・』
「『ドラゴントラスト』!」
グラドスが攻撃しようとした瞬間、横から竜となった矢がグラドスを襲う。
『チッ!『デビルトラスト』!』
グラドスはすぐさま使うスキルを切り替え、竜の矢を貫き消滅させる。
『まだ邪魔をすると言うのか!貴様は!』
「ああそうだ!慎也は殺させない!」
グラドスに攻撃したのはもちろんハーツであった。
『・・いいだろう。貴様をさっさと殺して慎也も殺してやるよ!』
「絶対やらせるもんか!」
こうして慎也をかけた2人の戦いが始まった。
・・・慎也視点・・・
「ぐあアアあああアあ!!!」
一方慎也は、頭を押さえて何かに耐えるかのように苦しんでいた。
(あ・・いつ・を・・ころ・・)
必死に耐えながらも、慎也は常にハーツと戦っているグラドスのことを睨んでいた。
(あい・・つ・・は・・・イムを・・!)
「があアアあアあアああ!!」
慎也がグラドスがイムを殺したことを考えるたびに、慎也の中にある"何か"が増幅していき、それに伴って黒いオーラも大きくなっていく。
(あいつ・・を・・・殺す殺す殺す殺す殺す!)
そしてついに、その"何か"は慎也の全てを飲み込もうとしていた。
『慎也、負けちゃダメだよ!』
しかしその瞬間、慎也の頭の中に謎の声が響くと共に黒いオーラの中に微かな光が現れる。
(誰だ・・・お前・・)
『あはは、やっぱわからないか。君の前で喋ったことなかったもんね』
(喋ったことが、ない?)
『うん。だって僕、スライムだったもん』
(スライム・・・まさか!)
『・・そうだよ、君の友達のイムだよ』
(っ!)
謎の声の正体がわかった瞬間、慎也は目を見開いて驚くのと同時に涙が溢れてくる。
(でもお前は、あの時死んだはずじゃ!)
『うん、死んだよ。でもこうして魂だけは残ってたみたい。正直なんで?って思ったけど、たぶん今のためだったんじゃないかと思ってる』
(今のため?)
『慎也、僕を殺したグラドスを恨んでくれるのは僕的にはとっても嬉しい。でもその悪意に負けて暴れる慎也は見たくない!』
(!・・そうか、だからお前さっき負けるなって)
『うん』
(ありがとな。俺もあのままじゃ何かダメだって思ってたんだ。でも俺の中の"何か"が自分でも止められなくって)
『そうなんだ・・・それで、これからどうするの?』
(もちろん、あいつを倒してエリシアさんを助ける。だが今の俺とあいつの実力は天と地ほどの差がある。『ブーストアイ』を使っても勝てるかどうか・・)
『・・勝てるよ』
(え?何を根拠に・・)
『だって戦うのは慎也だけじゃない。僕も戦うんだから!』
(イムも?でもお前には体が!)
『たしかに僕には体がない。でも、慎也の力になることはできる!』
(俺の、力に?)
『僕の力を慎也に貸すの!そしたらグラドスとの実力の差も多少は縮めれるだろうし』
(・・わかった。イム頼りにしてるぜ)
『!・・うん!』
(あとは『ブーストアイ』か。あの謎のやつが呼んで出てきたらいいんだけど・・)
『あ、それなんだけど・・』
(イム?)
『聞いてるんでしょ?早く出てきたら?』
(え?)
イムがそう言うと、2人の前に赤い光の球が現れる。
『やはりバレていたか』
(聞いてたんならさっさと出て来いよ!)
『それで、スライムが俺に何の用だ?』
(無視かよ)
『聞いてたんだからわかるでしょ?慎也に『ブーストアイ』を貸してほしいの』
『・・いいだろう』
(え!?そんな簡単に貸してくれるんだ!?)
『ただし!使わせるには条件がある!』
(『条件?』)
『まあなに、別にステータスとかそういうのではないから安心しろ』
(そうか・・)
『それで条件って何なの?』
『簡単なことだ。今からこいつに、なぜ『ブーストアイ』を使いたいのか聞いて、俺の納得いく回答だったら貸す。逆にダメだったら貸さないって感じだ』
(わーおシンプル)
『だろ?さて、それじゃあ聞くぞ。お前はなぜ『ブーストアイ』を使いたいんだ?』
(んなもん決まってる・・・
エリシアさんを助けるために、仲間を守るために使いたいんだ!)
『・・・』
『今の答えはどうだったの?』
『・・・文句なしの満点だ。『ブーストアイ』を貸してやる』
(ありがとな)
『それでは俺はここで失礼するよ。健闘を祈る』
そう言うと謎の声は消えて、それと同時に赤い光の球が消える。
『それじゃあ行こうか!慎也!』
(ああ。やろう!イム!)
(『俺(僕)たちの力を思い知らせてやろう!』)
「くっ!」
『これで終わりだああ!』
慎也を守るために戦っていたハーツもとうとう追い詰められ、その場に膝をつき、そこにグラドスの剣が放たれた。
「もう、ダメか」
「いいえ!まだダメじゃありませんよ!」
「!・・遅いぜ、慎也!」
黒いオーラがすっかり消えた慎也が、ハーツを守るように前に立ち、飛んできた剣を弾き飛ばす。
『てめえいつの間に・・・ふ、まあいい!そこの男はもう虫の息だ!あとはてめえを殺すだけ!あの妙なオーラを纏っていないてめえなんか俺の敵じゃねえ!』
「はたしてそうかな?」
『なに?』
「見せてやる、俺の全力を!『ブーストアイ』!」
そう唱えると慎也の右目だけが紅く染まる。
『『ブーストアイ』だと!?』
「慎也、お前使えるようになったのか?」
「いえ、まだ借り物ですよ」
『ふ、だがその程度じゃまだ俺には勝てねえよ』
「んなもん俺が1番わかってる。だからこそ!俺はさらに強くなる!」
(力を貸してくれ!イム!)
『うん!』
その瞬間、慎也の左目が青く染まるのであった。




