戦争の終・・結?
・・・慎也視点・・・
『うおおおおおおお!!!』
拠点から戦いの様子を見ていた者たちは皆で声を上げて喜びを表す。もちろん慎也たちもエリシアの勝利を喜び、リアに至っては涙を流していた。
「やった!やったなエリシアさん!」
「よかった・・・勝って」
「おい慎也!お前もっと喜べよ!俺たちの勝ちなんだぜ!」
「んなことわかってるよ!てか暑苦しいから離れろ!」
「今日はもうパーっとやりましょう!」
「全くお前らはしゃぎ過ぎだろ」
喜んでいる2人を横目に、慎也は映像を見ながら神妙な面持ちをしていた。
(たしかにエリシアさんは勝った。さすがのグラドスでもあれを喰らえば死ぬだろう。たとえ生きていたとしても瀕死だろうし、何も心配することはない・・・・ないのに、なんだこのモヤモヤは?男の勘ってやつか?)
謎のモヤモヤを感じている慎也。そのモヤモヤの正体はこのあとに最悪な形でわかるのであった。
・・・ハーツ視点・・・
(やった・・・のか?)
「はぁ・・はぁ・・・うっ!」
「!・・エリシア大丈夫か!」
倒れそうになるエリシアをハーツは慌てて駆け寄り体を支える。
「え、ええ。なんとか大丈夫ですよ」
「そうか、それならよかった・・」
「せ、聖女様!グラドスはやったんですか!?」
「・・・いいえ。まだ気配があります」
「っ!・・・マジかよ、あれ喰らってもまだ生きてんのか」
「でももう瀕死のはずです。ハーツさん、魔力を分けていただけますか?」
「あ、ああ!」
そう返事するとハーツは自身の手を通じてエリシアの体に魔力を流し込む。ある程度魔力が戻ったエリシアは立ち上がって爆煙の方へと歩いて行く。
(・・・たしかにあの煙の中から気配があんな。やっぱ四天王は化け物だな。しかもあんなのがあと3体いるってことだろ?エリシアでもギリギリなやつを一般の冒険者が勝てるはずねえし、やっぱり慎也の成長を催促させるのが優先か)
今回の戦いで四天王の実力がわかったハーツは今後のことを考えていた。そして爆煙が晴れてきたところで、中からボロボロの体で座り込んでいるグラドスが出てくる。
「さっきぶりですね」
『・・さすが聖女だな。あれ喰らったせいでほとんど動けねえ』
「そう言うあなたもあれを耐えるとは、さすが四天王といったところですね」
『今回で俺たち魔王軍四天王の恐ろしさがわかっただろ?」
「ええ、しっかりと痛感しました。だからこそ、あなたはここで仕留めます」
そう言うとエリシアは杖に魔力を込めてグラドスに向ける。
「最後に言い残すことはありますか?」
『・・・少し待っててくれないか?』
「え?」
『実はさっきの爆発で大事なもん落としたらしくてな。死ぬならせめてそいつを持った状態で死にてぇんだわ』
「・・・いいでしょう。ですが少しでも変な動きをしたらすぐさま魔法を撃ちますから」
『わかった』
(魔物相手とはいえ、それくらいのことは許すのかエリシアは)
エリシアの了承を得たグラドスは辺りを見渡す。すると目的の物を見つけたのか、立ち上がりその場所まで歩くと、箱のような物を拾い上げる。
「もう済みましたか?それではさっそく・・」
『・・なあ聖女よ。貴様は"呪いの檻"という魔道具の話を聞いたことはあるか?』
「一応。たしかその檻に閉じ込められた人は再び檻を開けられない限り永遠に死ぬことなくそこから出れないと聞いたことがあります」
(なぜ今になってそんな話を・・・まさか!)
「それがどうかしましたか?」
『ああ、実はな・・』
「エリシア!早くそいつを殺せ!」
「え?」
『呪いの檻ってのは・・・こいつのことだ!!!』
そう言うとグラドスは持っていた箱の蓋を開けてエリシアに向ける。すると箱から闇の渦巻きが出てきて周りの物を吸い込んでいく。エリシアは杖を地面に突き刺し、なんとか耐えているが、杖が今にも地面から抜けそうであった。
『大人しく入りやがれ!聖女!』
「くっ!」
(あの箱を破壊できれば!)
「『ホーミングアロー』!」
『させねえよ!』
箱を狙って3本の矢を放つがグラドスの鎖によって防がれてしまう。
「もう・・だめ・・」
堪えるのに限界を迎えたエリシアは思わず、杖から手を離してしまった。
「きゃあああああああ!!」
「エリシアぁぁぁぉぁぁぁ!」
エリシアは闇の渦の中に吸い込まれていき、その場には地面に突き刺さった杖だけが残ってしまった。
『ふっふっふ・・・ふはははははは!!!バカな奴だ!さっさと仕留めてしまえばいいものを!』
「くそ!」
「おいハーツ、どうすんだ?」
「決まってるだろディード。あいつを倒してエリシアを助ける」
「まあ今のやつなら俺でも倒せるしな・・・おいてめえら!なに絶望してやがる!今のあいつは瀕死だ!全員で一斉にかかれば倒せる!」
「そ、そうだよな!」
「私たちで聖女様を助けましょう!」
複数人の冒険者たちがエリシアを助けようと走り出す。それを見たグラドスは自身の体に手を当てる。そして・・
「『オールヒール』」
「っ!?」
グラドスは魔法を自身の体にかけると、体は黒い光に包まれる。
(あれは最上級回復魔法!まずい!)
「お前ら!一旦引け・・」
『無駄だ!』
光から出てきたグラドスの体には傷1つ無く、エリシアの戦ってなかったかのように元通りになっていた。そしてグラドスは斬りかかってきた冒険者たちの・・
「ぐあああああ!!」
「う、腕が!腕がぁぁ!」
腕や脚をものすごいスピードで切断して行った。その光景を見たハーツを含む冒険者たちの頭の中には絶望という文字しかなかった。
(うそ・・・だろ)
「てめえ!さっきので魔力を全て使い切ったんじゃなかったのか!」
『あ?お前バカか?聖女殺した後もお前らと戦わないといけねえのに、聖女との戦いで使い切ったら負けるに決まってるじゃねえか』
(くそ!このままじゃここにいる奴全員殺される!)
『さあてめえら!血祭りの始まりだ!!』
・・・慎也視点・・・
(おいおい嘘だろおい・・)
「おい俺らどうなるんだ!」
「先輩の皆さんが負けたら次は俺たちが・・」
「やだやだ死にたくないよ!」
状況を見ていた冒険者たちも皆口々に弱音を吐いていき、ある者は今の状況に絶望して恐怖のあまり涙を流していた。
「み、皆さん落ち着いてください!」
(そりゃあ冷静になれるわけねえか。ミリユさんも見た感じ大丈夫そうだけど内心かなり慌ててる。こいつらも・・)
「ど、どうしようライル!このままじゃ私たち・・」
「そんなこと考えるなリア!きっとハーツさんたちがなんとかするはずだ!」
(・・・エリシアさんが戦線離脱した今、剣姫の到着を待った方がいいんだが、それまでにハーツさんたちが生きてるかどうか・・)
「ど、どうしましょう慎也さん・・!」
リアの問いかけに、慎也はその場で考え込む。そして少しするとある1つのことを思いつく。
(・・・賭けるしかないか)
「ん?どうした慎也?」
「お前ら、今から俺がすることを許してくれよ」
「え?」
「お前何を・・!」
「ミリユさん!ここは任せました!」
「え!?慎也さんどこに・・」
「・・・!待ってください慎也さん!まさか戦いに行くんじゃ・・」
(悪いな2人とも。だが今はこうするしかねえんだ!)
「おい慎也!」
2人の呼び止める声を無視して慎也はハーツたちの元へ全速力で向かった。
「はぁ・・はぁ・・」
慎也は魔物たちの死体の間を走り抜けながらハーツたちの元へと向かう。
(俺が!俺が時間を稼がねえと!)
慎也が思いついたのは、今四天王と対抗できるSランクのチャントスキルを持つ自分が、エリシアと並ぶほどの実力を持つ剣姫の到着までの時間を稼ぐというものだった。
(こんな都合よく『ブーストアイ』が発動出来るとは思っていない!だが今はそれに賭けるしかねえ!)
しばらく走っていると、奥の方に切断された冒険者たちの腕や脚が見えてきた。
(マジかよ・・・こんなことを容赦なくやんのかあいつは)
すると今度は切断された部位を押さえてその場にうずくまっている冒険者たちが見えて来る。
(みんな痛そうだな。俺もこんな風に・・・いやいや!ここまで来たらもう後には引けねえ!)
そしてとうとう慎也は小さくだがハーツの背中が見えて、思わず心配の声をあげる。
「ハーツさん!!」
「!?慎也どうしてここに!?」
「どうしてってハーツさんたちを助けに・・・っ!」
慎也が着いた頃には残っているのは満身創痍のハーツとディード、そしてほぼ無傷のグラドスであった。




