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世界渡りの少年  作者: 憧れる妄想
第一世界 第四章 大切なもの
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村上慎也の最後の準備




それはEDグループの戦いが始まって少しした後まで遡る。EDグループが魔物たちとぶつかったのを見届けた慎也は、リュックから先日ハーツに新しく渡されたスキルの載った本を取り出す。


(今のうちに新しくスキル習得しとくか。せっかく魔力の操作とかリアに教わったんだから)


慎也は今まで使えなかった武技の載っているページを開く。


(まずはこの『ツインスラッシュ』かな?えーっと、発動した後に放った最初の2回の攻撃を強化するのか。ゲームはこういうスキルって2回攻撃になるだけだけど現実だとこんな効果になるのか。あとは・・)


その後も慎也は『スラッシュカッター』、『ハードスラッシュ』という武技を習得し、今度は魔法のページに移る。


(魔法は・・・うわ、どうしよう結構あるな。あんまり多く習得しても何を使えるのか忘れても困るし、最低限必要な魔法だけ習得しようかな)


そう思い慎也は、今使える魔法の上位互換であるレベル3の魔法が載ったページを開く。


(『フレイムボム』?なんか聞き覚えあんな・・・・あー思い出した。たしかオークキングが使ってた魔法だっけ。爆発するんだっけこれ?でも火力的には『スラッシュストーム』と変わらなかったし、習得しといていいかな。あとは・・・『アースブロック』?かたまりでも飛ばすのか?まあ土属性の魔法ってあんま使ったことなかったし習得しとくか。他にはなんかないかなぁ・・・)


何かないかと探す慎也だったが、とくにめぼしいものがなかったため、レベル4の魔法が載ったページへと進む。するとそのページを見た瞬間、慎也は自身の目を疑った。


(・・・いやいやいやいや!さすがに習得に必要な魔力多すぎねえか!?)


先程まで見ていたレベル3の魔法の習得に必要な魔力が60程度だったのに比べ、レベル4の習得に必要な魔力は100と大幅に上昇している。そしてもちろんそんな魔力は持ち合わせていない慎也はその場で落胆した。


(これだとしばらく俺の最大火力は『スラッシュストーム』か。でもあれ自分にもダメージ入るから使いたくないんだよな。そうなると武技の方に賭けるか)


慎也はレベル3のスキルが載ったページに戻る。


(・・・なんでここに『斬連波』があるんだよ。正直このスキルにはいやな思い出しかないんだけど・・・結構最近だけど)


先日戦ったオークキングが使用していたスキル、『斬連波』を見つけ気が滅入るが、実際に自身の目でどういうスキルかを見ていたため、その強さも重々承知である。それゆえに慎也は渋々『斬連波』を習得した。


(まあ強いスキルは何個あっても困らないよな。でもこれだけじゃまだ火力不足だな。他にはなんかねえかな・・)


自身の火力不足をなんとかしようと他のスキルを探すが、ピンとくるものが無く、慎也はどうしようか悩んでしまう。


(・・・いや、待てよ?)


悩んだまま数分経ったところで慎也はあることを思い出す。


(そういや俺には『トルネードトラスト』があるじゃん!いっそこれでよくね?どんなスキルか知らないけど)


それは先日、慎也がハーツからもらった本に挟まっていた紙に載っていた『スラッシュストーム』同様、習得条件が"Sランクのチャントスキルを持っていること"という不思議なスキルだ。


(これの火力次第では俺の必殺技にしてもいいけどな、やっぱ1回使ってみねえとわかんねえな。CBグループの出番がきたら試しに使ってみるか?いやでももしこのスキルが広範囲系のスキルで他の人を巻き込むことになったら困るし、やめとくか・・・あれ?これ使える場面そんな無くね?)


まだ使ってないにも関わらず、使い勝手の悪さに頭を悩ませる慎也。するとそこへミリユがやってきた。


「どうしたんですか慎也さん?なにやら悩んでるみたいでしたけど」

「いや実はここで新しくスキルを習得したんですけど、今撃てる最大火力が少し心細いなって思って」

「なるほど。ちなみにその最大火力のスキルはなんなんですか?」

「『フレイムボム』ですよ」

「ああその魔法ですか・・・正直今の慎也さんが挑める魔物のレベルならその魔法で十分な気がしますね」

「え?そうなんですか?」

「はい。私もCランク冒険者の頃はまだレベル2の魔法を使ってましたから」

「マジか・・・てことは今はまだそんなに焦らなくてもいい感じなんですかね?」

「そうですね。実際に戦って苦戦することになってきたら新しくスキルを習得する感じでいいと思いますよ」

「そうですか・・」

(まあ冒険者の先輩であるミリユさんが言うならそうなのかな?)


ミリユを信じて慎也は言う通りにしようと本を閉じ、リュックの中にしまった。するとそれと同時にEDグループとの交替の合図である魔法が空へと打ち上げられた。


「とうとう来ましたね」

「マジかーまだ心の準備が出来てないんですが・・」

「そんなこと言ってる暇なんてありませんよ。他の方々はもう移動を始めてますし、私たちも行きましょ」

「へーい」


慎也はミリユについていき、同じグループの人たちが待機している場所へと向かう。


(うわぁめっちゃ緊張するなぁ・・)

「慎也さん、そんな調子じゃ戦死してしまいますよ」

「わかってますよ。てかミリユさんは緊張とかしないんですか?」

「家族のためと思えばどうってことないですよ」

「そうですか・・」

(俺も誰かのために!って思ったら緊張ほぐれるかな)

「・・・ん?ん!?慎也さん慎也さん!なんか魔物たちの方から何かがものすごいスピードでこっちに向かってきてますよ!」

「何言ってるんですか?魔物が猛スピードでこっちに向かってきてるとでも言うんですか?」

「いえ、あれは・・・人ですね」

「人?」


ミリユの言う通り、魔物たちがいる方向から人が拠点に向かってきている。


(・・・あの人なんか担いでんな。右は女性で左は・・・ライル!?)


慎也は目を凝らしてその人を確認すると、知らない女性とライルが担がれていた。


「これ道開けた方がいいんじゃないですか?」

「そうですね。みなさん!味方がこちらに向かって来ているので道を開けてください!」


ミリユの呼びかけで、周りにいた冒険者たちもこちらに来ている人の存在に気づき、道を開ける。すると向かって来ていた人はその開けられた道を駆け抜けて行った。


(なんか今ライルの叫び声が聞こえた気がするが、きっと気のせいだろう)

「今のはディードさんですね」

「ディード?」

「Aランク冒険者の方ですよ。慎也さん知りませんか?」

「そういえばどっかで聞いた覚えが・・」

(どこだったかなぁ・・・でもまあ俺ってどうでもいいことはすぐ忘れるタイプだからな、一生思い出せねえだろ。それにあの人とそんな接点ないし)

「てかミリユさんよく名前知ってますね」

「あの人冒険者界では結構有名なんですよ?たしか"魔壊まかいの斧"って言う名前でかなりの有名人です」

(いやそれはもう武器の名前でしょ!人につけちゃダメだって!)

「さて、そろそろ私たちの出番ですよ」

「おっとそういえばそうでしたね。なんか今の変な時間過ごしたせいで緊張もなくなりましたよ」

「それはよかったです」

「おーいリーダー!突撃のタイミングはお前に任せる!わかったか!」

「わかりました!了解です!」

「ミリユさん、ここはビシッと決めてください」

「そ、そんなハードル上げないでくださいよ」


と言いつつも、ミリユは魔法使いにも関わらず先頭に立ち、杖を魔物たちへと向ける。


「ふぅ・・・・BCグループ、突撃!目標は目の前の魔物たちの殲滅です!」

『おおおおお!!!』


ミリユの言葉を聞いて、慎也含む冒険者たちは一斉に目の前のオークたちへと走り出して行った。




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