異世界戦争.2
(何だ急に魔物たちが!?誰かのスキルか?)
「ライルあれ!」
リアが指さした先には、自身の身長より少し小さいくらいの斧を持ったディードがいた。
「あれってたしかAランク冒険者のディードって人じゃねえか!なんでここに・・」
「そんなの決まってるよ!この状況を見て助けに来てくれたんだよ!」
(それにしても雑くない?下手したら仲間殺すところだったぞ)
「おいEDグループの雑魚ども!!」
ディード周囲に響き渡るほどの大きな声でEDグループを呼びかける。
「こんなピンチな状況こそ!雑魚なら雑魚なりに頭を使いやがれ!」
(んなこと言われてもなぁ・・)
「・・・・はぁ」
(なんかため息つかれたな)
「・・・一か所に集まってお互いを守りながら戦え!そうすれば死ぬ確率も少しは減るだろ!」
「ほらライル!言われたとおりにしよ!」
「大丈夫なんかなぁ・・」
「ちんたらしてないでさっさと動け!」
ディードの言うとおりに冒険者たちは内心「何様だよこの野郎」とキレつつ、リーダーのところに集まった。
「とりあえずあの人のおかげで魔物たちのヘイトが僕たちから逸れたから、今のうちに怪我の手当をしとこうか」
リーダーの提案に皆賛同し、回復魔法を使える人は前衛の人を優先に怪我を治していく。
「よし、これでまだ戦えそうだね」
(一応死者はまだ出てないようだな)
「!・・・おい!魔物たちがまた来たぞ!」
魔物たちは再度侵攻を始め、冒険者たちは武器を構える。先程のディードの攻撃を見た魔物たちはどうやっても勝てないと考え、ディードの方には行かず、EDグループたちの方へと向かって行く。
「おいおいこの俺大人しく行かせると思うか!」
しかしそれを何もせず見てるだけなはずもなく、ディードは素早い動きで魔物たちを2つに分断する。
「半分はテメェらに任せたからな!」
「わ、わかりました!」
(あの人1人であれだけの数を相手にするのか。さすがAランク冒険者)
「ライルよそ見してる場合じゃないよ!」
「ああわかってる!」
向かって来るゴブリンたちを、EDグループは入れ替わりながら戦っていき少しペースは遅いが、それでも安全に着々と倒していく。そしてそれがしばらく続いて、EDグループの冒険者の体力がキツくなってきた頃。
「!おい!あれって入れ替わりの合図じゃねえか!?」
『!』
その言葉を聞き、皆の視線が拠点上空に向けられる。するとそこにはエリシアが放ったらしき魔法が空高く飛んでいた。
「やっと交代だ!」
「疲れたー!」
(やっと、終わったのか・・)
「ライル、まだ安心するのは早いよ。魔物たちが完全にいなくなったわけじゃないんだから気をつけながら帰らないと」
「わかってるよ。でも少しくらい達成感に浸ってもバチは当たらんだろ?」
「・・・それもそうね!それじゃ早く戻りましょ!」
そう言うとリアは拠点の方へと走って行った。それに続こうとライルも行こうとしたが、そこであることに気付く。
(あれ?ディードさんは行かねえのか?)
交代の合図が出たのにも関わらず、ディードはその場を離れようとせず、未だに魔物たちと戦っている。
(もしかして出来るだけCBチームの負担を減らそうとしてんのか?でもそれにしてもさっきまでの豪快さがないし、何かを気にしながら攻撃してる?)
先程までは周りを気にせず豪快に斧を振っていたディードが、今では何かを気にかけながら慎重に攻撃してるように見え、何事かと目を凝らすライル。
(・・・!あれは!)
見えたものは、ディードの足元に足を怪我してその場に倒れている魔法使いやしき女性の冒険者がいた。
(もしかして守りながら戦ってんのか!?それならあの慎重さも納得できる・・・って違う!手伝いに行かねえと!)
すぐさまライルは2人の方へと走って行く。
・・・ディード視点・・・
「チッ!鬱陶しいんだよ!」
向かってくるゴブリンたちをディードは斧が女性に当たらないように仕留めていく。
(くっそ人守りながらだとやりづれえな。あと1人いればそいつにこいつ任せて俺が一瞬で魔物たちを倒すのに)
『グギャギャア!』
「!次から次へと来やがって!」
ディードは斧を横に振り、向かってくるゴブリンの首を斬り飛ばす。
(っ!しまった!)
しかし振りが小さかったせいか、ゴブリンを1体女性の方に行かせてしまう。
(今ならまだ間に合う!)
「グギャア!」
「邪魔すんな!」
すぐに助けに向かおうとしたディードだが、ゴブリンたちに通せんぼされてしまう。出来るだけ素早く仕留めるが、仕留めてもその後すぐに次のゴブリンが現れ、ディードはその場から動けないでいる。
「どきやがれカスども!!」
「きゃあああ!!」
(っ!まずい!)
そしてとうとうゴブリンが女性に持っている剣を振り下ろそうとした。
「『スラッシュカッター』!!」
その時、ライルの放った斬撃が間一髪でゴブリンの首を斬り飛ばす。
「大丈夫ですか!」
「は、はい!ありがとうございます、助かりました!」
(あいつはEDグループのやつか?まあどっちにしろ礼は言っておくか)
「お前が来てくれなかったらその女はやられていた。俺からも一応礼を言おう」
「ど、どういたしまして」
(・・・こいつにも手伝ってもらうか)
「おいガキ。わざわざここまで来たんだ、お前にも手伝ってもらうぞ」
「もちろんです。むしろ手伝うために来たんですから」
「それじゃあ俺は向かってくるゴブリン共をやるから、お前はさっきみたいに俺が取りこぼした奴を頼んだぞ」
「了解です」
「ふぅ・・・そんじゃいっちょ暴れるか!」
そう意気込むとディードはライルに女性を任せたおかげで、斧を思うがままに振れるようになり、ゴブリンたちをわずか数分で殲滅した。そしてその後・・
(ゴブリンどもは全部やったか)
「!オークたちが来ましたよ!」
(オークか・・・このまま戦ってもいいが、それだとCBの奴らの仕事が無くなるしな。ここは素直に撤退するか。問題はあの女は俺が担ぐとして、ガキがオークどもに追いつかれないか心配だな・・)
「?・・どうしたんですか?早く撤退しましょ!」
「・・・・仕方ねえ」
そう言い、ため息をつくとディードは斧を捨て女性とライルを両肩に担ぐ。
「え、ちょ!」
「きゃああ!」
「てめえらしっかり掴まっとけよ!」
「え!?それってどういう・・」
「おら行くぞ!」
ライルの言葉を遮り、ディードはものすごいスピードで拠点に向かって走り出す。
「斧おいてってますけどいいんですか!?」
「あれは予備の斧だ。いつも使ってるのは拠点に置いてある」
(それにあれ大して高くないしな)
こうして3人は拠点への帰還を果たした。




