何も考えずに
今回はかなり短いです!
「はぁ・・・」
イムと別れてから慎也はギルドへと戻ってきた。ハーツ曰く魔物たちが来るまでの数日間は冒険者たちのためにギルドの食堂の食事を半額にしているため、各グループの冒険者たちがパーティーのようなことをしている。もちろんそれに慎也も呼ばれ、渋々パーティーに参加していた。
(なんか今日は食欲わかねえな。やっぱあれの後はキツいのか?)
イムとの別れがかなり精神にきてしまったのか、あまり食欲がわかない慎也は端っこの席で飲み物と軽食を頼んでゆっくりと食事をしていた。
(明日こんな調子で大丈夫かねぇ。一応明日も周辺の魔物の駆除だからな、ヘマかまして足引っ張らなきゃいいけど)
「はぁ・・・」
「慎也くん、隣いいかな?」
「いいですよ」
完全に元気をなくしている慎也の隣の席にアイクが飲み物を持って座る。
「あんまり食事は頼んでないんだね。もしかして少食かい?」
「違いますよ。ただ食欲がわかないだけです」
「・・・君がそんなに元気がないのは、あのスライムが原因?」
「!・・見てたんですね」
「うん、ギルドに帰る途中にスライムを抱えたまま走っていく君を見てね、少し心配で後をつけちゃった」
「そうですか・・」
「あれは君なりの優しさかい?」
「どうでしょうね」
(優しさか・・・あれくらいのことをしてまで俺はあいつを死なせたくなかったのか?あいつとはそこまで仲良いってわけじゃない気がするんだがな)
「・・慎也くん、これ飲むかい?」
そう言ってアイクは自身の飲み物を慎也の前に出す。
「普通に嫌です。間接キスするなら女性がいいんで」
「女性とか、慎也くんも男だね〜」
「てかなんですか急に?自分も飲み物俺に渡そうとしてくるとか」
「なんか慎也くんが無駄に考え込んでたからね」
「無駄にって・・」
「考えても答えが出ないならもういっそのこと考えるのはやめて、あんな風にぱあっと楽しもうよ」
「・・・あんな風にですか」
2人の目線の先には酒を飲みながら楽しそうに騒いでいる冒険者たちいた。
「あんな風に何も考えずただ今を楽しむのも時には大切だよ」
「それはわかりましたけど、それでなんで俺にそれを飲ませようとしたんですか」
「いやぁ慎也くんが酔ったらどんな風になるのか少し気になってね」
「言っときますが俺はまだ酒を飲める年齢じゃ・・」
「お2人とも飲んでいますかー?」
「うおっ!?」
慎也の言葉を遮るように完全に酔ったミリユがアイクと慎也の間に割り込んでくる。
「あっれー?慎也さん全然飲んでないじゃないですかー!」
「ええまあ・・」
「ダメですよ!もしかしたら明日死んじゃうかもしれないんですよ!なら今のうちに飲みまくらなきゃ!」
「いやそんな大袈裟な」
(てかこの人酒飲んだらキャラ変わるタイプか。まだあの人見知りって感じのほうが俺は好きだな)
「ちょっと聞いてますー?」
「鬱陶しいなもう。ちょっとアイクさんこの人なんとかしてくださいよ」
「そう言われてもねえ・・」
「ほらほら〜!これを飲んで何も考えずに今を楽しみましょうよ!ね?」
(何も考えずに・・・か)
先程までイムのことで頭がいっぱいだった慎也だが、2人の「何も考えずに今を楽しもう」という言葉が頭の中を駆け巡る。
(たしかに、今のまま明日を迎えても他の人の足手まといになりそうだし、今思いっきり楽しんで明日、俺は何をやってたんだろうってなるくらいがちょうどいいか)
「なーに考え込んでるんですか?もういいですよ、私が飲まさしてあげます!」
「え?ちょ!?」
「ミリユさん!?」
ミリユが自分が持っていた木製のジョッキを慎也の口につけ、中の酒を無理やり飲ませる。
(待ってこれ酒じゃね?俺年齢的にダメ・・・・なんか頭ぼーっとしてきた)
「ふっふっふ、どうですか慎也さん?」
「なんか頭がぼーっとしてきました」
「え?そんなに早く酔うってもしかして慎也くん酒弱い?」
「弱いも何も俺まだ未成年ですよ・・」
「え!?それってまずいんじゃ!」
「そうですよー!なのにミリユさんったら人の話聞かずに無理やり酒飲ませるなんて、バカなんですか!」
「えへへ〜ごめんなさーい!」
「もういいですよ!こうなったらやけです!2人の言う通り今日は何も考えずに楽しんであげますよ!」
「たしかにそうは言ったけど・・」
「その調子ですよ慎也さん!さあ私とパーっと飲みましょう!」
「どうせなら他の人のところをまわりながら飲みましょう!楽しむならみんなでの方が絶対いいです!」
「そうですね!それじゃあアイクさん、私たちは他のところに行ってくるんで!」
「あ、ちょっと!」
そう言うと2人はジョッキを片手にその場を離れて行った。そして1人取り残されアイクは一言。
「明日が心配だ」
この後未成年に酒を飲ませたミリユと、逆に未成年なのに酒を飲んだ慎也がハーツにこっぴどく怒られたのはまた別のお話。




