別れは突然に
「さて!ちょっとした騒ぎがあったものの、無事リーダーは決まったから次に行くぞ!」
各グループのリーダーが決まり、次のステップへと移行するハーツ。冒険者たちの視線は再度ハーツに向けられる。
「次なんだが、当日に野良の魔物に邪魔をされたらこちら不利になってしまうだろう?だから各グループで周囲の魔物を狩ってほしい!それじゃあさっそく場所を言っていく!EとDは・・」
その後は順番に担当をする場所が決まり、慎也たちCBグループの担当はゴブリンの森になった。
「それじゃあ各自動いてくれ!そんじゃASグループ行くぞー」
そう言うとハーツの後を数人の冒険者がついていき、ギルドを出て行く。それにつられるようにEDグループもギルドを出て行く。
「そ、それじゃあ私たちも行きましょうか!」
ミリユの言葉で、慎也たちのグループもギルドを出発し、ゴブリンの森へと向かった。
ゴブリンの森の前についた慎也たちは、効率よくゴブリンを狩るためにいくつかのグループに分かれた。
(さーてと、さっさとゴブリン倒して帰るか。一応周りは俺より強いしすぐ終わるだろ)
「そ、それじゃあゴブリンを探しに行きましょう」
(・・・このミリユって人が心配だが)
グループの人数は計5人で、ミリユと慎也、それと男性冒険者が3人の構成となっている。他のグループが出発したのを見て、慎也たち5人もミリユを先頭に奥へと進んでいく。するとさっそく剣と棍棒を持ったゴブリンが5体茂みから現れる。
(さっそく来たな。ここはメンバーの強さを把握するために俺は見とこ)
慎也はあえて何もせず、メンバーの実力を把握しようとメンバーの行動を待つ。
「ゴブリン程度俺1人で十分だ!」
そう言うと1人の男性冒険者が剣を抜き、ゴブリンたちに斬りかかる。そのスピードは慎也を軽く超えており、慎也自身もかなり驚いている。実力もかなりあったようで、ゴブリンたちが男性に気づいた瞬間に頭部を切り飛ばされていた。
「まあざっとこんなもんだ!」
(あれがBランクの実力・・・俺もあの動きが出来たらオークキングの時もなんとかなったのかな)
「おいおい俺の獲物取った上に何ドヤ顔かましてんだよ!」
「いいじゃねえか別に。ほら次探そうぜ!」
(あの2人は知り合いなのか?結構仲良さそうだな)
「そうですね、それじゃあ行きましょうか」
慎也たちは再びゴブリンたちを探しに歩き出す。その後、何度かゴブリンと遭遇したものの、先程の冒険者とその仲間らしき冒険者がほぼ全部仕留め、残りの3人はただその光景を見ることしかできなかった。
「・・・そろそろ時間ですし、集合場所に戻りましょうか」
「お、もうそんな時間か」
「ゴブリンウォーリアーとかいないかなって少し期待してたんだけどなぁ」
(そんな期待すんな!それでほんとに来たらどうすんだよ)
辺りが暗くなり始めた頃、慎也たちはあらかじめ決めていた集合場所に向かう。
(それにしても、ギルドでの騒ぎ以外では今日は特に何もなかったな。まあそれはそれで面倒なことが起きてない証拠だからいいんだけど)
完全に安心しきっている慎也。
「ん?おいなんかあっちのほうが騒がしいぞ?」
しかしそれも束の間、1人の冒険者が草原の方を見ながらそう言う。
「あれはEとDの奴らじゃねえか」
その先には草原の魔物討伐を担当していたEDグループたちが何やら言い合っていた。
(あーもう今日は何事もなく終わりそうだったのに!誰だよ騒いでんの・・・ってあれは!)
その中にはライルとリアもいて、どうやら2人と数人が言い合っているようだ。
「おいあれってギルドで騒いでた奴じゃねえか。まーたなんかやってんのか」
(・・・めんどくせぇ)
「おいガキ!てめえの知り合いだろ?ギルドの時みたいにさっさと止めてこい!」
(はいくるとわかってましたよ!行けば良いんでしょ行けば!)
「わかりましたよ、行ってきます。皆さんは俺が来なくても普通に帰っていいんで」
そう言い残し、慎也は駆け足で草原へと向かった。
(ったく、あいつら今度は何やったんだ!こちとらさっさと宿とって今日という日を終えたかったのに!)
慎也は内心キレながらも今見える状況から騒ぎの原因を考える。そしてもうすぐ到着するというところで、ライルとリアの足元に何かがあるのに気付く。目を凝らして見ると、それは水色の丸い何かだった。
(水色の丸い・・・なんだあれ?この世界ってほんといろんな物あんな。それに水色のあれなんか地味に動いてるし・・・ん?動いてる?)
慎也は今までの記憶と特徴を頼りに、水色の物体の正体を考える。そして出た答えは・・
(・・スライム?しかもあいつらの後ろにいて何もしないっていうことは・・・・マジか)
水色の物体の正体がスライムと分かったのと同時に、騒ぎの原因を察した慎也は先程まで感じていた苛立ちは消え、焦り始める。そして慎也は言い合っている声が聞こえる距離まで来る。
「もうその言葉は聞き飽きた!いいからさっさとそこをどけ!」
「どいたらこいつ殺す気だろ!絶対どかねえぞ!」
「チッ!仕方ねえ、力ずくでやってる!お前らこいつら押さえておけ!」
「ちょっと離して!」
「やめろ!」
(やばい!)
数人の冒険者が2人を押さえつけて、1人の男の冒険者が剣でスライムを刺そうとする。それが見えた慎也は走るスピードを出来る限り上げる。
「死ね!」
「させるかぁ!」
「ぐはっ!」
男が剣を振り下ろそうした瞬間に慎也はその男に自信の体をぶつけて阻止する。
「慎也!」
「来るならもっと早く来てくださいよ!」
「これでもバチくそ急いだんだが・・」
「いってぇ・・・!お前はギルドで自己中野郎をやった!」
「てめえも魔王側か!」
(やっぱりそういうことか・・・ん?てめえ"も"?)
「俺もってどういうことだ?」
「こいつらもそのスライム守ろうとしたんだ!てことは魔王側ってことだろ!」
「だから違うって言ってるだろ!」
「そうだよ!」
「お前らは黙ってろ!」
(なるほどな、ライルたちもイムを守ったから魔王側って勘違いされてんのか。イムを守ったせいでこうなってんだし、ここは責任を持って俺がなんとかしないとな)
状況を理解した慎也は誤解を解こうと話し出す。
「あのなぁ、お前ら今回の戦争が起こる原因忘れたのか?」
「忘れるわけねえだろ。聖女を殺してこっちの戦力を落としたいからだろ?」
「それともう1つあっただろ?」
「もう1つ・・・あ!あれじゃねえか?なんか慎也ってやつのスキルがあれだからって」
「そういえばそんなこと言ってたな」
「それだ。そしてその慎也ってのは俺のこと」
「何!?てことは今回の戦争の原因はお前なのか!」
「まあそれは置いといて、お前らよく考えてみろ?もし俺が魔王側だった場合、なんで魔王は俺を理由に戦争なんて起こそうとしてんだ?」
「た、たしかに」
「自分の味方なら何も問題ないのにな」
「だがお前がスライムを守ったのは事実だろ!」
「ああそれか。それはな・・」
(先に謝っとく。イムすまんな)
「俺のペットだからだ」
「「「は?」」」
慎也の言葉に、一同揃って?マークを浮かべる冒険者たち。
「ペットって、そいつ魔物だろ?」
「魔物は魔物でもスライムってほぼ無害じゃん。お前らスライムに人が殺されたとか聞いたことあるか?」
「・・・ないな」
「だろ?それにスライムって饅頭みたいな体してるから結構可愛く見えるんだよ。だから日々の疲れをこいつでとってるってわけ」
「な、なるほど」
「はい!てことでもうこの話は終わり!その2人は魔王側じゃないし、俺も人類側!それでいい?」
「あ、ああ」
「まあ一応納得はした」
「それならよかった」
「すげーな慎也」
「こんな丸く収まるなんて」
「いやぁそれほどでもねえよ。それじゃあちょっと俺イムとそこら辺散歩してくるわ」
「え?あ、ああ分かった」
「気をつけてくださいね」
「おう。それじゃあイム行くか」
そう言うと慎也はイムを抱き上げ、どこかへと走って行った。
「どうしたんだ慎也?急に散歩だなんて」
「さあ?」
(・・・ここくらいでいいか)
先程までいた草原からかなり離れた場所で慎也はイムを下ろし、周りに人がいないことを確認する。
(・・・誰もいないな)
「イム、結構久しぶりだな。元気にしてたか?」
「!!」
「そうか、それならよかった。最近全然お前に会えてなかったから結構心配だったんだ・・・・なあイム、1つ聞いていいか?」
「?」
「お前はさ、死にたくないか?」
「!」
「だろうな。でもな、もしさっきみたいなことが起こったらお前は殺されるかもしれない。今回は2人がいたから俺が駆けつけれたからいいものの、次はおそらく俺も2人もいないと思う。それに近々あそこは戦場になるんだ。だからお前のような弱っちぃやつは巻き添いくらって死んじまうかもしれない」
「?・・!」
「悪い悪い、さっさと言いたいこと言えって言ってんだろ?それじゃあ言わせてもらう・・・・人がいないような、どこか遠くの草原に行け」
慎也のその言葉はイムのこれからを考えた言葉なのだろう。もちろんイムもそのことはわかっている。しかしそれとは同時にイムの中で"慎也ともう会えない"ということも理解してしまう。
「・・!・・!」
「・・・お前なら拒否すると思ってたよ」
(この手は使いたくなかったが、少し強引なことをしてでもお前をこっから離れさせてやる)
慎也は動こうとしないイムを見て剣を抜き、イムの前に突き立てる。
「イム、もしお前が行かないって言うんだったら俺が今ここでお前を殺す!それが嫌ってんならさっさとここから離れろ!」
「!?」
「さあどうすんだ!俺に殺されるか、俺の言う通りどっか行くか!」
「・・・」
慎也に問われ、イムはゆっくりだが慎也から離れていく。そしてそのまま止まらずに一直線にその場から離れて行った。
(そうだ、それでいい。新しい場所では人間じゃなくてスライムの友達とか作れよ・・・それじゃあな)
イムが離れていくのを見た慎也は少し悲しげな表情をしながら背を向け、イムとは逆の方向へと歩いて行った。




