強き者と弱き者
(今のライルだよな?何やってんだあいつ?)
慎也はライルたちがいるであろうEとDランクの冒険者が集まっている机に目を向ける。するとライルと誰かが言い合っているのが見える。
(今の声量的に結構やばそうだな。ちょっと様子見に行くか)
ため息をつきつつ、慎也は状況を把握するためにライルたちのもとに向かう。
「おいリア。なんでライルあんなに怒ってんだ?」
「あ、慎也さん。実はですね・・」
・・・リア視点・・・
それは数分前に遡る・・・
『自己紹介はこんなところか。そんじゃギルドマスターの指示通りリーダーを決めよう』
(みんな私たちと同じくらいのレベルなんだ。よかった他の人と差が開いてなくて)
互いの自己紹介を終えた後、今度はリーダーを決めるための話し合いが始まる。するとある冒険者がこう言った。
『1番強い奴がリーダーでよくね?』
(まあそれが妥当よね)
この一言が後の言い合いへと発展するとはその時は誰も予想していなかった。皆それに賛同するように首を縦に振ると、ある1人の冒険者がこう言い出した。
『そうなると1番レベルが高い俺がリーダーになんのか。それじゃあてめえら、これからは俺の命令通りに動けよ?』
(・・・は?)
彼の言葉を要約すると、"俺はリーダーだから、お前らは俺の言う通りに動けよ"とのこと。しかしさすがに周りの人はその言葉に納得していない。
『何か勘違いしてるようだけど、今回のリーダーは別にそう言ったのじゃないから、命令とかそういうのは出来ないよ』
そう、今回でいうリーダーというのはハーツからの伝言を仲間に伝えるだけの人なのだ。しかしその言葉が気に食わなかったのか、彼は反発する。
『あ?てめえこそ勘違いしてんじゃねえのか?俺無しにてめえらがまともに動けんのか?てめえらより実戦経験のある俺の言うことを聞いとけば死なずに済むんだよ』
『いやだからそう言う問題じゃ・・』
『そもそもな、世界ってのは強者が上、弱者が下の立場って決まってんだよ。つまり俺より弱者であるお前らは俺の駒になってればいいんだよ!わかったか?」
(何この人!?この人をリーダーにするとか絶対に嫌なんだけど!)
『こ、駒って何よ!」
『そうだそうだ!てめえ俺たちの舐めてんのか!」
『実際こん中では俺が1番強いんだから舐められるのは当然だろ!』
『ちょ、ちょっと!これから一緒に戦う仲間に対してそんな言い方しなくても!』
『仲間ぁ?俺にとってお前らは格下なんだよ!仲間なんて微塵も思ってねえよ!』
(待って、そんなこと言ったら!)
『お前ふざけんなよ!!』
「・・とまあ、そんなわけで今に至るわけです」
「なるほどな。それで今ライルと言い合ってるやつがその勘違い自己中野郎ってわけか」
「間違ってはいませんね」
「そんじゃまあ、これ以上騒がれても面倒だし、止めに行ってやるか」
「・・・え?」
「ん?どしたリア?」
「いえ、まさか慎也さんが自分からそういうことをするとは思わなくて」
「まあ他人が騒ぎを立てても俺には関係ないことだし何もやんねえが、知ってるやつが騒いでるんだったら普通に止めに入るぞ。そんじゃ行ってくる」
そう言うと慎也は2人のもとに向かう。
「てめえ何回言えばわか・・」
「はいはいライル一旦落ち着け」
「慎也・・・でもこいつ!」
「怒りたい気持ちはわかるが場所を考えろ」
「じゃあどうしろと!」
「まあ見とけ。俺がスパッと解決してやるよ」
慎也は自信満々にそう言い、男の前に立つ。
「誰だお前?俺は今そのバカと話してて・・」
「バカはお前だろ」
「ああ!?」
「すまんつい本音が・・」
「てめえ・・・俺のこと舐めてんのか!!」
慎也の舐めた態度に男は激怒し、慎也に勢いよく殴りかかる。
(そういうところもバカなんだよな。仕方ない、力の差を見せてやりますか)
男は慎也の顔めがけて拳を振るが、慎也は頭を傾けて躱し、男の顔を掴み床に勢いよく打ちつけ・・
(っとさすがに怪我させたらやばいか)
ようとしたところ、床に当たる寸前で反対側の手で後頭部を掴み感じる痛みをできる限り軽減させる。
「ふぅ・・」
(あぶねえあぶねえ。もう少しでこっちが悪者になるところだったぜ)
「よいしょっと・・・さーて、今のでどっちが上なのかわかったかな?」
「今のはなんかの間違えだ!もう一回やれば・・」
「いいや何の間違いでもない。何度やっても同じ結果になる。その証拠に今お前は俺にやられて惨めにそこに倒れてんだろ」
「くっ!このクソ野郎が!」
「別に認めるも認めないもお前の勝手だ。ただ一言言うとしたら・・」
慎也は男の真横に膝をつき、声のトーンを下げてこう言う。
「舐めてんのはお前だろ」
「・・・あ?」
「お前聞いたぞ。強いやつが上だとか弱いやつが下だとか頭悪いこと言ってたらしいな」
「実際そうだろ!冒険者は高ランクに行けば行くほど強い奴らがいっぱいいる!つまり強くなきゃ上には行けねえんだ!」
「・・あるEランク冒険者の話をしよう。そいつはレベルが高くもなければ、強いスキルを持ってるわけでもない弱いやつだった。しかしそんなある日、なんと数十体のゴブリンたちがそいつの前に現れたんだ。そいつは驚いたさ。さらに逃げ道は完全に塞がれてしまい、戦うしかない状況になった。仕方なく、そいつはゴブリンたちと戦ったんだ。その結果、どうなったと思う?」
「そんなの死んだに決まって・・」
「いいや、勝てたんだ。何十体ものゴブリンを相手にして勝てたんだ。なぜだと思う?」
「・・まぐれだろ」
「まぐれでそんなことできんならそいつは相当運が良いんだな、だがまぐれじゃない。そいつはな、頭を使ったんだ。今自分にできる最善の行動をして、次々とゴブリンたちを倒して行き、気づけばゴブリンを全員倒してたんだ」
「・・・結局お前は何が言いてぇんだ?」
「たとえどんなに強い奴でも、考える脳が無ければただのサンドバッグってことだ。別にお前の考えを否定するつもりはない。ただ個人的にはな、弱い奴でも頭を使えば上にいける。逆にどんなに強い奴でも上には行けず、下で止まり続けるって思ってる。弱い奴を舐めてるといつかやり返されるかもしんねえぞ。断言は出来ないけどな」
そう言うと慎也は立ち上がり、男に背を向ける。
「お前も上にいきたかったら頭を使え。俺からは以上、そんじゃ戻るわ」
慎也はそう言い軽く手を振ると、自身のいた机へと戻る。するとこちらにアイクが駆け寄ってくる。
「なんですか?今の方法に文句があるなら言ってください。今後は気をつけるんで」
「いや、文句はないよ。ただ・・・君って結構しっかりしてるんだね。ちょっとビックリしちゃったよ」
「そうですか。まあ俺への印象が良い方向にいったんならよかったです」
「バレてたか」
「そりゃああんなにあからさまに声のトーン下がったらいやでもわかりますよ」
「それはすまなかったね。初対面だから出来るだけ礼儀良く接しようと思ったんだけど。それで、もう見てなくていいの?」
「あいつが相当のバカじゃなければもう問題は起こりませんよ」
このあとは慎也の言う通り、何事もなくリーダーは決まり、次のステップへと移行した。




