聖女との1日
「どうだ?腕は痛くねえか?」
「はい、もう全然ですね」
絶対安静期間が終わり、いつも通りの生活に戻れるようになった慎也は救護室でハーツにギプスを外してもらい、腕を振って状態確認をしていた。
「そうか、ならもういつも通りに戻っても大丈夫そうだな」
「やっとですか。もうここ数日暇すぎて死にそうでしたよ!」
「まあたしかにここ最近のお前って常に暇そうにしてたからな。今日からは自由にしてくれ」
「もちろんそうさせてもらいます」
「あ、あとこれ持ってけ」
そう言うとハーツは懐から何かが入った袋を取り出して慎也に差し出す。
「なんですかこれ?」
「ギルドからの問題解決に助力してくれたことへの報酬だ」
「問題解決?俺なんかしましたっけ?」
「まあお前自体、自分の仲間を助けただけかもしれんが、オークキングを拠点である洞窟から炙り出してくれたからな。そのおかげでエリシアがオークキングを倒しやすくなったんだわ。それと、俺を助けてくれたお礼も上乗せしてこれな、遠慮なく受け取れ」
「わかりました・・」
慎也はハーツから袋を受け取り、中身を確認すると身を見開いて驚いた。
「ハーツさん、これ・・」
「問題解決の報酬で金貨20枚、俺のお礼で金貨10枚、もしかして足りなかったか?」
「いや、足りすぎて使い道に困るというかなんというか・・」
(まあ一応これで武器やら道具が揃えれるからいいけど、残ったやつはどうしよう・・・あ、ちょっと待てそういえば)
「そういえばハーツさん、俺冒険者カード失くしちゃったんですけど、再発行って出来ます?」
「ああ別にいいが、一応オークどもの洞窟で古い方のカードも見つけたんだがどうする?」
「そうなんですか」
(あ、でもたしか『スラッシュストーム』でリュックも傷ついてた気がするし、その時にカードも一緒に傷ついてるか)
「古い方は処分してもらっていいですよ。新しく作ります」
「わかった、そんじゃ1階に行くか」
「了解でーす」
2人は救護室を出て、1階の受付に向かう。そして受付に着いたところで、ハーツが職員を呼び出し水晶を持って来させる。
「ほら、手を出せ」
「はい」
慎也は冒険者登録をした時と同じように手の平を水晶に近づける。すると水晶から今の慎也のステータスが文字となって浮かび出てくる。
むらかみ しんや
レベル28
筋力 86
魔力 75
防御 61
俊敏性 68
パッシブスキル ???
「結構レベルあるじゃねえか。これならすぐにC、いやBランクにも行けそうだな」
「ただやっぱチャントスキルが使えない状態でパッシブスキルがないってのが結構つらいところですね」
「ほんとだな、パッシブスキルがないっていう事例がないから対処法もないし、そこら辺は慎也の技術でカバーといったところか。あ、このステータスでカードの発行頼む」
「わかりました」
「技術でなんとかって、俺にそんなのあるわけないじゃないですか」
「そこは気合いと根性で頑張れ。そんじゃ俺は仕事があるからこれで」
(気合いと根性か、どっちもねえな俺には)
慎也は受付で冒険者カードを受け取ると、物資調達のためにギルドを出て行った。
(ポーションはこれぐらいでいいか。新しいリュックも買ったし、あとは服も買わねえとな。あとは剣を今回は予備も合わせて2つだな。1からだとやることいっぱいあんな、はぁめんど)
準備の大変さを思い知った慎也は、内心最初からいろいろと用意してくれていた神たちに感謝しながら、服を求めて街を歩き回る。
(あー、地図をリュックの中に置いてきたのが少し痛いな。地図あったらこうやって店を探すために歩き回らなくて済むのに)
慎也はため息をつきつつ、それらしい店を探す。
「あら?慎也さんじゃないですか」
すると後ろから聞き覚えのある声で自分の名前を呼ばれ、慎也は後ろに振り返る。そこには慎也と同じく安静にしていろと言われていたエリシアがいた。
「エリシアさんじゃないですか。たしか自宅で安静にしてもらってるってハーツさんが言ってましたけど」
「慎也さんほどの怪我ではないので早めに外出の許可が下りたんですよ」
「なるほど」
「それで慎也さんは何をしてるんですか?」
「今後の生活に必要な道具と武器を揃えてるところです。そう言うエリシアさんは?」
「私はただの散歩ですよ、特にやることもないので」
「そうなんですか」
(やることがないのか。それなら・・)
「エリシアさん、少し俺の買い物に付き合ってくれませんか?まだこの街の店の場所とか分からなくて」
「いいですよそれくらい。それで今は何を探してるんですか?」
「服ですよ。元々持ってた着替えとかはオークの洞窟にリュックごと置いてきてしまったので」
「服屋ならこっちですね、ついてきてください」
「わかりました」
それからしばらく2人は行動を共にしていた。服屋では・・・
「こんな感じの服とかどうですか?」
「んー・・・それもいいですけど、慎也さんならこういう服もいいと思いますよ」
「ちょっと着てみます」
数分後。
「どうですかね?」
「いいじゃないですか、似合ってますよ」
「それじゃあこれとさっきのを買うか。あと2着くらい欲しいな」
「それならこんなのも・・」
時間が進み、お腹が減った2人は手頃なレストランに入り・・
(結構美味しそう)
「それじゃあさっそく・・」
「あ!慎也さんそれは熱いので気をつけて召し上がって・・」
「熱っ!」
「・・・ふふ」
「ちょ、笑わないでくださいよ!」
(次は気をつけよ)
食事を終えた2人は次にバルグのいる武具屋へ・・
「バルグさーん!久しぶりに慎也が来ましたよー!」
「マジで久しぶりだな・・・って今回は彼女連れかよお前」
「私の彼氏になれましたよ慎也さん」
「ワー、チョーウレシイー」
「ん?あんたよく見たら聖女じゃねえか!?Sランク冒険者であるあんたがなんでこんな店に・・」
「慎也さんの買い物の付き添いですよ」
「そんじゃ俺は剣選んでるんで、エリシアさんは好きにしてていいですよ」
「そうですね。こういうお店はあまり来ないので、どういう商品があるのか少し見ましょうか」
「なんか欲しいものがあったら言ってくれ。聖女なら半額にしてやる」
「俺は?」
「慎也は普通な」
「扱いの差おかしくない?普通多く来てる俺のほうがいいはずなんだけどな」
「多くって、お前大して来てねえだろ」
「あ、そうだった。てへっ!」
「早く剣選んで持ってこい」
「はいはいわかりましたよ」
そのあとは慎也だけ武器を購入して、3人で他愛もない話をした後、武具屋を後にした。そしてその後は、街に出ている店の食べ物を2人で食べ歩きしながら慎也はエリシアに街を案内してもらった。
「ふぅ・・疲れましたね」
「ですね」
辺りはすっかり暗くなり、帰宅する人たちやクエストから帰ってきた冒険者が行き交う中、2人は街の中心にある噴水近くのベンチに座り、休憩していた。
「エリシアさん、今日は付き合ってもらってありがとうございます」
「いえいえ、私もやることがなくて暇でしたので、いい感じに暇が潰せてよかったです」
「そうですか」
「この後は慎也さんは宿を探す感じですか?」
「そうですね、今日はとにかく歩きましたし、早くベットに寝っ転がりたいです」
「それでは私もそうしますか。それでは慎也さん、また」
そう言うとエリシアは立ち上がり、自身が泊まっている宿へと向かった。
(今日はエリシアさんのおかげでいろんなとこ行けたな。今度なんかお礼しないと・・・ってそういえば助けてもらったお礼してなかったわ。てか結局プレゼントは俺でいいのか?ハーツさんに結果聞きそびれたから分からん)
「っと、そろそろ俺も宿探さねえと、野宿になっちまう」
慎也も立ち上がり、宿を探しに歩き出した。
(これからもこういう平穏な日常が続けばいいんだけどな)
「ふぅ、今日の仕事やっと終わったー!」
同時刻。今日の仕事を終えたハーツは大きくため息をついた後、お茶を淹れて一息つく。
(ほんと仕事嫌い。今更だけどなんで俺ギルドマスターになったんだろ、まだ冒険者をしてた頃のほうが楽しかったな・・・って、自分からこの職業を選んだんだけどな)
少し虚ろな表情をしたあと、ハーツはお茶を一気に飲み干し、帰宅の準備をする。
(よし、忘れ物はないな)
準備を終えたハーツは部屋を出て扉に鍵をかけて、廊下を歩き出した。
「うおっ!?」
するとその瞬間、ハーツは何かに躓き転倒する。
(いったー・・・なんだよ一体)
ハーツは躓いたところを見ると、そこには一面ごとに9つに分けられた水色の立方体の物があった。
(なんだこれ?なんかの魔道具か?)
ハーツはそれを手に取り、どういう物なのか手で触って確認する。すると、偶然指に触れたある一面の9つに分けられた1つの面がスイッチのように押し込まれる。その瞬間、その立方体から音声が流れてくる。
『ーーーー』
「っ!?やばいことになったな、明日急いでエリシアに教えねえと!」
(まずは今残ってる職員だけにでも!)
その音声を聞いたハーツは焦り始め、すぐさまギルド1階に全速力で向かった。
たまにはこういう1日もいいよな!そしてハーツが聞いた音声は一体なんだったのか!?それは次回までのお楽しみで!




